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第12話 監視対象[KY]、[KT]行動記録(一部抜粋)

お待たせしました。

 ◯月✕日の本日、調査本部が立ち上げられた。


 何者かが観察対象[KTM]に接触をはかっているとの連絡を受け監視対象に指定された。


 対象となった者は[KY]、[KT]の2名。


 直ちに経歴と背後関係を洗えとの指示が下された。


 2名はフードデリバリーサービス[バクバク・イーツ]に所属し東京都✕✕区内で配達員として活動している。


 [KT]は◯◯県出身の41歳、男で地元の高校の商業科卒業後上京。


 都内の専門学校入学後パソコンを使用した各種ソフトウェアの勉強をし、卒業後システムエンジニアの道に進む。


 仕事は順調に見えたが会社命令で素人の新人とペアを組まされ仕事量が増大し残業の日々を送る。


 この間、新人が勉強を全くしない人間であったため上司に新人をクビにするよう度々訴えているが聞き入れられず、嫌気が差したのか退職。


 再就職を目指したものの生まれた時期が就職氷河期世代だったため、何十回も面接に落ちている。


 採用されても軒並みブラック企業で理不尽な目に遭えば即退職を繰り返していた。


 経済が持ち直して以降も職を転々としていたが、海外からフードデリバリーサービス[バクバク・イーツ]が参入し[KT]はこれ幸いと再就職し、残業をしない無理のない生活を送り始めた。


 最近になって[KT]の自称姪の[KY]が同じ会社に就職し働き始めた。


 [KT]の背後関係だが、交友関係は地元の学生時代の同級生と交流があったものの上京後は途絶えている。


 都内で活動している間、交流は鳴りを潜めひたすら資格取得のための勉学と仕事に打ち込んでいたようだ。


 今現在に至るまで特定の組織と交流する事も無く、仕事が終われば帰宅し自宅でインターネット動画投稿サイトでアニメを視聴する日々を送っている。


 未だ結婚していない事で両親に心配され繰り返し見合いをしたようだが全て徒労に終わったかのように思われた。


 丁度その頃に氷河期世代婚活促進制度なる法案が国会で成立・施行されたのを知った[KT]は即役所に申請し条件をクリアして[KS]と出会い1ヶ月後に結婚し今に至る。


 [KTM]との接触は後述の[KY]が所用で関われない時に頼まれて行われたようだ。


 [KT]の情報は以上、また新しいのがあれば記載に加える。


 続いて[KY]。


 この人物は要監視対象である。


 [KT]の姪という事になっているが、住民票及び戸籍に改ざんされた形跡がある事が発覚。


 電子媒体及び紙媒体記録を洗ったところ、ある日何も無いところにいきなり現れたらしく手口を調査・検証しているが今のところ解明されていない。


 また、改ざんした人物が不明であるため調査に限界がある。


 [KY]の姿は防犯カメラに映っていたのを解析したところ、不審な点が浮上した。


 ある日いきなり日本国東京都内に比喩でも何でもなく『出現』した。


 それまでの姿は日本全国の防犯カメラを隈無くまなく洗っても確認できなかった。


 背後関係も不明でこれまでのところ外国組織に所属していたり、接触した形跡は見られない。


 [KY]の遺伝子を解析するため一部を回収しようと試みたがこれまでのところ毛髪の一本も入手できていない。


 外見や顔立ちからして恐らくは日本人であると推定はできるが確証は無い。


 [KY]は[KT]の姪となって[バクバク・イーツ]に所属した。


 [KT]の両親に捜査員を派遣しかつての同級生を装ってそれとなく尋ねてみたところ、「そのような人物は知らない」という回答を得た。


 2人の間に血縁関係は存在しておらず、どちらかあるいは双方が示し合わせている可能性もある。


 配達員としての仕事については精力的で他の配達員と比べ何倍もの仕事量をこなしている。


 主に低単価で注文する低所得層向けに配達を行っている。


 また、横柄な顧客と遭遇した場合は二度と配達しないようだ。


※配達に問題有り。


 具体的には注文された品を店頭で受け取り店を出た直後、忽然と姿を消す。


 そして数秒後、配達先に忽然と現れ商品の受け渡しが終わると姿を消す。


 この繰り返しである。


 一連の動きを目撃している人間も複数存在しているが、不思議な事に誰も疑問に思っていない。


 監視者もそれが当たり前と考えていたが、後に防犯カメラの映像を見せられて認識を改ざんされていると発覚。


 以降、[KY]の監視は常に複数人で行う事が決定した。


 都内の防犯カメラは全てを網羅しているわけではないので完全な追跡は不可能である。


 早急に防犯カメラ増設の予算化を求める。


 [KY]の配達の特徴として店から注文先に品物を届けたり次の依頼を受けるまでの間、時間はまちまちだが姿を消す。


 短い時は数秒だが長い時は30分。


 これは次の依頼を選択しているか食事をとっていると思われる。


 姿を消している間、所在不明となるが一体どこにいるのかが謎となっている。


 食事をしているとなると[KY]が安全と考えている場所だろうが[KT]の住所を訪れた形跡は無い。


 都内の飲食店をしらみ潰しにあたったが全て空振りに終わっている。


 [KY]の情報は以上。また新しいのがあれば記載に加える。


※追加情報.1


 [KY]及び[KT]が立ち寄る事務所の[所長]及び配達員のサブリーダーとして所属する[D]と交流有り。


 [D]については[KT]と仕事上のやり取りを行うだけだが[所長]はここ最近[KT]との交流が増加している。


 具体的には2人で外食したり[KT]の住所で食事をとっている。


 [D]に[KY]が接触している様子は見られないが[KY]が出現した時期に[所長]が[KT]との接触する回数が増加している事から関連性が疑われる。


※追加情報.2


 ホームセンターなどで買い物をする[KY]が目撃、防犯カメラにも映っているのが確認された。


 購入された品物は幼児服や布団など。


 不思議な事に購入した品物が店外に持ち出されること無く消えている。


※一般人を装い注文し[KY]に接触を図る


 直接会話して人格や言動を分析するため小細工をする事となった。


 安アパートの空部屋を用意し、一人暮らしの独身男性を装って[バクバク・イーツ]に注文する。


 このとき低単価だと来やすいとの情報から相場より安めで行う。


 はたして[KY]は目論見通りにやって来た。


 以下は捜査員との会話記録である。


「こんにちは、バクバク・イーツです。商品をお届けしに来ました」

「ああ、待ってたよ」

「はい、どうぞ」

「ありがとう。こっちが代金ね」

「ご利用、ありがとうございました」


 定型文を交わし、立ち去ろうとする[KY]を捜査員が呼び止めた。


「あの、少しいいかな?」

「はい? 何でしょう?」

「女がバクバク・イーツで働くのは珍しいけど、よくやろうと思ったね?」

「ああ、それ?」


 [KY]が苦笑いしながら理由をあっさりと口にした。


「誰にも指図されず、のびのびと働きたかったから」

「それだけの理由で?」

「皆と力を合わせて頑張るなら良いんだけど、相手に手柄を取らせたくなくて互いの足を引っ張り合う社内闘争なんざ真っ平ごめんだからよ」

「その年で社内闘争を見たの?」


 捜査員の指摘に[KY]が苦笑する。


「違う違う。そんな話を親戚から聞かされてるの。学生時代のクラスメイトとのぎすぎすした付き合いを、社会人になってからもやらされるなんて耐えられない」

「なるほど……」


 捜査員が一理あると感心していると、[KY]が腕時計を見た。


「仕事に戻るからこれで失礼しますね」

「引き留めて悪かったね」

「今後ともごひいきに〜」


 最初の接触は上出来と言えた。


 情報が足りないので繰り返し接触する必要がありそうだ。


 また、細かいところで少しずつ信用が得られれば何かメリットが出てくる可能性もある。


 捜査員はしばらくの間、一日一回バクバク・イーツを利用する事になりそうだ。


 それからも捜査員は接触を続け会話を交わし、[KY]についての情報がある程度集まってきた。


 それによると、今から1ヶ月ほど前に東京都内にいると自覚したようだ。


 それ以前の記憶がほぼ欠落し、財布も無く身分証明が不可能に近い状態だと言う。


 ただ、本人はそれでも何とかなると考えていたようだ。


 空腹を覚え動けなくなってから「あ、これヤバいかも」と自覚したようだ。


 そこにたまたま通りかかった[KT]に拾われ、名前が思い出せないという理由で名付けられ、今に至ると語る。


 [KT]をどう思っているのかと尋ねたところ、感謝に絶えないし役に立ちたいと話した。


 正直、[KY]の行動は厄介事を[KT]に持ち込み巻き込んだとしか思えないが、特段[KT]が嫌がっていない事を考慮すると黙認しているようだ。


 [KT]を語る[KY]は熱が入っており、第三者から見ても明らかに恋をしていると断言できた。


 聞く人にとっては感動的な話なのだろうが、こちらには防犯カメラがある。そもそも[KT]は[KY]を救助した記録は無い。


 直近で[KT]が拾ったのはサッシのような物、いわゆる粗大ゴミである。


 組織内で協議した結果、[KY]の経歴はカバーストーリーであり、もし本当だとしても一般人として生活はできるものの誇大妄想癖のある頭のネジが何本も飛んだイカれた人物であると結論づけた。


 真面目に監視している我々が馬鹿らしくなった。


 貧乏人の救済に走る善性は別として[KTM]に接触し続けている事から引き続き監視は続けるが、体勢の規模を縮小する事が決定した。我々とてこんな茶番に付き合えるほど予算と人員に余裕は無い。


 [KTM]と関わる以上、遠からず待ち受けているのは自滅だからだ。


 今のところその兆候は金銭の出費に留まっているが、今後様々な厄災が襲いかかるだろう。


 そう結論づけて[KY]との接触を終了する。


 また新たに情報が加われば加筆修正の事。






















※緊急。[KS]についての情報求む。


 無関係と思われていたが[KS]の戸籍に記載されていた生誕地を訪ねたところ、誰も[KS]を知らない事が発覚。


 登録された戸籍は偽造ではなく役所が正式に発行した物だ。


 どのような経緯で発行されたのか調査中だが役所に問い合わせても戸籍に記載されている通りとしか返事が無い。


 至急調査人員を増員し[KS]を中心とした監視強化をするよう求む。

次話の再編集が出来上がり次第、再投稿します。

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