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三題噺もどき4

思うこと。

作者: 狐彪

三題噺もどき―ろっぴゃくにじゅうに。

 




「行ってくる」

「お気をつけて」

 月が照らす夜の中。

 今日も日課の散歩に出る。

 風は変わらずに冷たいが、首元に巻いたマフラーのおかげでだいぶ暖が取れている。

 マフラーではなく、スヌードというのだったか。耳元まで覆えるのでかなり使い勝手がよさそうだ。これは昨日の綿菓子と一緒に届いたらしい。通販で。

「……」

 何をするわけでもないが、足さばきが悪くなるのは好まないので、ズボンはピタリとしたものを履いている。ジャケットは多少もこもこしているが、これはまぁ仕方ない。少しでも動きやすくするためには、温めなくてはいけない。

「……」

 もう二月だと言うのに、まだまだ寒い日が続く。

 寒さには耐性がないわけでもないのだが、暖かに越したことはない。まぁ、まだ二月に入ったばかりだし、これから少しずつでも温かくなるんだろう。

 そうなってくると花粉もあるだろうが、花粉症とやらではないので大丈夫だろう。

「……」

 ひゅうと、強く吹く風に時折身をすくませながら、歩いていく。

 そんなに寒いなら出なければいいのにという感じだが、ちょっとした気分転換と運動も兼ねているので、辞める理由にはならない。さすがに天気があまりにも悪い日は考えるが、多少の雨ならまぁ、歩くしな。

「……」

 点々と道を照らす街灯が並んでいる。

 さすがにこの寒さでは、野良猫は歩いていないだろう。

 冬になると野良猫に会うことが少なくなるのが残念だ。割と猫好きな方なので、彼らに会えるのは楽しかったりする。

「……」

 だから、たまに見るアイツの猫姿とか結構好きなんだけど。

 あまりしてくれないのだ。先月久しぶりにその姿を見た。

 もう少し愛でて居たかったが、家に着いた瞬間に戻ったので、それは叶わなかったが。

「……」

 何かのタイミングで猫になってくれやしないかと密かに楽しみにしている。

 アレは結構気まぐれで動くから……猫になってもすぐに戻るのだ。もったいない。

 手入れは欠かさないから、毛艶は美しいし、あの目も綺麗だ。もちろん、人の姿も蝙蝠の姿も、美しいし可愛いものではあるのだが。

「……」

 なにせ性格に可愛げがないので、すべて台無しである。

 だが、あの家にいるやつらと同化せずに、アレはアレとしていてくれればまぁ、それでいいのかもしれないが。

 同じであったら、まず私はこんな風に散歩なんてしていないし。そもそもあの国からあの家から出る事すら叶わなかっただろう。

「……」

 当の本人も何か思う所があって、共にいてくれるだけかもしれないが。

 まぁ、私1人ではどちらにせよ生きてはいけないだろうから、アイツが居るということだけでもかなり大きなものである。

「……」

 アイツに助けられたことは、何度だってある。おかげで私もいいように変わっていったし、それなりに成長ができていると思っている。

 今のこの私の性格なんか、幼い頃の時分から見れば、あり得ないかもしれない、

 毎日怯えてばかりいて、毎日死んでしまいたいと思っていて。

「……」

 それが今は、生きたいとは思わずとも、死にたいとは思わなくなった。

 逃げたいと時折思うことはあるが、怯えることもなくなった。

 まぁ、比較的、ポジティブになっただけで、ネガティブではないとは言えない。

 しかしそれでも、アイツが居るといないとでは、かなり大きな違いが生まれたと思う。

「……」

 この間、久しぶりに二人で出かけたのだが。

 まぁ、なんというか……楽しかった。

 やっていることは、普段と同じ事なのに、どこか浮足立つ感じがしていた。

 二人で並んで、散歩をして、買い物に行って。とりとめもない会話をして。

「……」

 でもあれは。たまにがいいかな。

 毎日アレはちょっと……向いていない。

 過干渉なようでいて、そうでもないような感じを保つくらいが丁度いい。

「……」

 それでも。

 食事だけは、一緒に。

「……」

 ふむ。

 そろそろ、帰るとしよう。

 今日の昼食が待っている。





「戻った」

「おかえりなさい」

「これ、暖かくていいな」

「お気に召したならなによりです」

「お前にも何か買ってやろうか」

「じゃぁ、新しい調理器具を買ってください」

「お前……」












 お題:同化・ネガティブ・猫

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