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【57】悔やまれし過去

 お風呂屋さんでぷかりと浮かんでしまったあたしが気が付いたのは魔戦士組合のテントの中だった。


『ブハーーーッ! あ、あれ……?』

「気が付きましたね」

『ここは……?』


 目を開けたあたしが最初に見たのはどっかで見た事のあるテントの天井だった。それが魔戦士組合のテントと分かるまで数秒を要した。

 あたしはテントの中に布団を敷いて寝かされていたんだ。


「魔戦士組合のテントの中ですよ

 お風呂の中であなたは気を失ってしまった様です」


 あぁ……そうだった。露天風呂の中であたしは気を失ったんだったよ。


「気が付いたな、大丈夫か?」


 そう言ったのは、いつもと違って少し心配そうな顔をしたヘリオだった。


「ここまでヘリオさんが運んでくれたのです」

『そかー、ごめんだんにゃん』

「いや、まさか気を失うとは思わなかったわ……すまん……」


 あたしが気を失った事に責任を感じたのかヘリオが謝ったよ。あたしもまさかあんな事で気を失うなんて思わなかったけど。


『む……?』

「どうしました?」

『あたし、服着てる』

「えぇ、わたしが着せました

 つけシッポが暴れるのでちょっと苦労しましたけど……」


 もはや付けてる事すら忘れる程、付けシッポはあたしに馴染んでいるな。もうトレードマークにしてしまうのもいいかもしれないって位にね。


『クリーダありがとんにゃん』

「当然の事をしただけです、大切な人をそのまま外になんて出せませんから」


 ここであたしは他の人達がテントに居ない事に気が付いた。


『ところでみんなは?』

「今さっき夕食に出かけましたよ」

『そかー、あたし達も食事に行かないとだんにゃん』

「そんじゃ、食事に出かけるか?」

「何か食べたいものってありますか?」

『えとね、とても気になる食べ物があるんだんにゃん』

「何ですか?」

『前に本で読んだカレーって食べ物を食べてみたい』

「カレー? 何だそりゃ?」

『ゴハンにスープみたいなものをかけて食べるものらしいんにゃん

 スパイスが香ってすっごくおいしいって書いてあったんだ』

「カレーですか……そんなお店ありましたっけ?」

『プププ……、実はもう見つけてしまっているのだんにゃん』


 あたしは二人をカレーのお店に案内した。お店に入るとスパイスの香りが店の隅々まで香っていたよ。その香りを嗅いだとたん物凄くお腹が減ってきた。


『うわぁー、いい感じだんにゃん』

「独特な香りがしますね」

「だなぁ……、何か腹減って来た」


 あたし達が店の入り口で話していると店員さんがやって来た。その店員さんは今まで見た事のない珍しい服を着ている。

 スタイル的にはローブっぽいけど服の装飾が凄い、これはかなり手が込んだ布だ。どうやって作ったんだろう。


「いらしゃいませー! 三名様でーすね?」

「んあ? そうでーすね?」

「こちらへどーぞでーすね」


 そしてあたし達はちょっと面白い言葉を話す店員さんにテーブルに案内された。

 テーブルにかかっているクロスも随分と凝ってる、これは研究のしがいがありそうだ。


「なぁ」


 あたしがテーブルクロスをじっと眺めていたらヘリオが声をかけてきた。


『なんだんにゃん?』

「これってどれがどいういう料理なんだ?」

「よくわかりませんね」

『チキンカレーとか言うのとか、キーマカレーとか言うのがカレーの定番らしいんにゃん』

「チキン? ニワトリの肉って事か? お、あったあった」

『ディナーのコースは好きなカレールーを3つ選べるって書いてあるんにゃん』

「3つもですか、それにしましょう」

『ここはナンもやってるみたいだんにゃん、ゴハンかナンならナンにするでーすね』


 結局三人ともディナーコースで、カレーはチキンとキーマとベジタブルの三種類を頼んだ。しかし一人位別の頼んで冒険しようって奴は居ないのか!?

 まぁ、あたしは辛いの苦手だから甘口にしたけどね。二人の辛さはあたしが勝手にクリーダは中辛で、ヘリオは辛口を頼んじゃった。


 前菜を食べながら、ヘリオに聞こうと思ってた事を思い出した。


『ヘリオってランク10なんでしょ? 何でバーサーカーって事隠してたんだんにゃん?』


 すると、あぁって顔をしてヘリオが答えたよ。


「だってなぁ……ランク10なんて言ったらめんどくせーし

 それにバーサーカーってあんまり人に言いたくなかったんだよ……怖がられるだろ?」

『そういうもんかねー?

 言わないのもめんどくせー奴だんにゃん』

「そういえばあなたも、ランク10になってもバーサーカーにはなりたくないって言ってましたね」

『うぐぅ……バラしたぁーッ!』

「ほらみろ、バーサーカーって世間のイメージ悪いんだよ」


 まぁ確かにバーサーカーってイメージ良くないかもしれない。人間の壁を越えてただ戦うだけの存在になるって言うし、敵も味方も関係なくなるって言うし。その時の顔もアレだし。


「ところで、ヘリオさんは一年前の作戦にも参加したのですよね?」

「あ、あぁ……」


 それに少し曇った表情でヘリオが答えた。それは一年前、参加した108名の魔戦士組合員の内、自分を除く107名を手にかけたと思ったからだろうか?


「その時もヘリオさんは魔物と融合していたのですか?」

「多分な……」

『多分? ってどういう事かんにゃん?』

「オレ……その時の記憶が全くないんだ、今回だって気が付いたのはお前の出した岩の上だった

 一年前のあの時も、気が付いたのは軍のテントの中だったよ」

「それはあの剣に触れた時からですか?」

「そうだ、軍が用意した試作品の剣を使えって言われてな……」

『もし一年前の事とか気にしてるなら気に病むはないと思うんにゃん

 あれはヘリオがやったんじゃなくて魔物がやったんだからさ』

「そうなんだけどな、簡単に忘れたくない事だってあるさ」

『ふむー? 何か訳アリな雰囲気だんにゃん』

「あいや、個人的な話だ詮索するな」


 きっと一年前に何か重大な事が起こったんだろう。あたしの憶測だとヘリオにとってとても大切な人が居て、その人を結果的に殺めてしまった……とか。

 今回参加したのは魔物に復習をする為だったのだけど、まさか自分が関係していたなんて……ショッキング。と、こんな所だろうか?


「お前なぁ……詮索するなって言ったのに」

『んにゃん?』

「勝手に想像するのはいいけど、それを声に出して言うか」

『えぅ? あたし……今声に出してた!?』

「えぇ、たまにそういう事ありますよ?

 もしかして気付いてなかったのですか? わたしはわざとだと思ってたのですけど」

『うげぇーッ! あたしって今までどんな事言ってたんだろ……』


 声に出して言う癖があったなんて知らなかった。どうりでたまに凄い顔で見られる時があるって思ってた……。

 ともかくヘリオの秘密は後でゆっくり吐かせるとして、初めて食べたカレーはとてもおいしかったよ。って事でめでたしめでたしだ。


「簡単には吐かないけどな……」

『うぎゃ……!?』


カレーっておいしいですね^^

カレーを発明した人ってとても偉大だと思います。


次回こを軍の指名をする予定です。


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