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【56】もう1つの手に入れたもの

 打ち上げを終えた後、あたしとクリーダはまたあの風呂屋さんに来ていた。


『あづぅ……』

「毎回懲りませんよね、わたし達って」


 つい仲良くし過ぎた為、既にあたし達はのぼせていた。

 この間と同じように縁台に座ったクリーダに膝枕をしてもらってあたしは寝転んでいた。


『ミメットめ……せっかく誘ったのにまだ来ないのかんにゃん』

「どうでしょう、ミメットさんはすっかりあなたを警戒していましたから」

『ちょっと挨拶代わりに背中を撫でただけなのにー』

「でもそれ……わたしは余り面白くないです」


 そう言ってクリーダは少し悲しそうな顔をして目を逸らしたんだ。


『ご、ごめッ! 本当にただの挨拶ってだけだんにゃん

 あたしが本当に好きなのはクリーダだけだよ』

「もちろんわかってます、あの位は普通に流せる様にならなきゃいけませんよね」

『うむうむ、もっと親密な関係を築く為なら、あたしも協力は惜しまないつもりだんにゃん』

「でも……出来れば程ほどにして下さい」

『わかってるんにゃん!』


 ヨッシャァーッ! これでミメットの背中に触る口実……じゃなくて正当な理由が出来た訳だ。

 その時ドアの開く音がして誰かが入って来た、ミメットがやっと来たかと思って起き上がってみると、入って来たのはスフェーンとシンナバー、そして爆裂魔導士のオプテーゼだった。


「やぁ、おチビたんとクリーダたん!」

「ほほぉー、まさかこんな場所が隠されていたとはーッ!

 この大きなお風呂の大きさはおチビ単位じゃ表せないねーッ!」


 少年の様に無駄のない体型のシンナバーが、両手を斜め上に上げて言った。


「へー、いいお風呂だねー」


 そう言って二人の後から続いて入って来たオプテーゼに、あたしはミメットの事を聞いてみる事にした。


『おんやぁ? ミメットはまだ来てないのかんにゃん?』

「うんー? ミメットなら来てるけど? ほら、そこのドアのトコに」


 ドアを見るとその言葉通り、ミメットが物凄く警戒しながらこちらの様子を伺っていた。


「みんなよく青空の下でそんなにオープンで居られるよね……」


 ミメットはタオルを巻いたままヒョコヒョコした足取りで湯船に近づくと、日の光で水面が光っている湯に一気に浸かった。明らかに警戒してるね。


「で? おチビたん達は何してんの?」

『あぅん……のぼせ……』

「のぼせちゃいました」

「のぼせるなんて……きっと変な事してたんだねッ!? 汚らわしいッ! ドロドロだねッ!

 あたし達は聖なる光の祝福を受けてるからのぼせるなんて事ないけどさ」


 シンナバーはスフェーンの膝の上に座ったままツッコんでくれとばかりに毒を吐いた。


「みんな……みんな不潔だぁ!」


 それに対して、ミメットが純心な乙女の様な反応でツッコミを入れた。それが狙った訳じゃないのは分かってるけどいいタイミングだ。

 ミメットみたいなタイプってどっかしら腐ってると思ってたんだけど思い過ごしだったのかな? 美少年スキーは基本アビリティーだと思ってたんだけどどうなんだろ。

 ミメットはオプテーゼの近くに移動して、コソコソと噂話をする様な格好をしていた。


『クリーダも寝転んでみるんにゃん?』


 あたしばかりが膝枕してるのも悪いのでクリーダに聞いてみた。クリーダは一見クールに見えるけど、実は結構甘えるタイプだって事が分かってきたしね。


「えぇ、してみたいです」


 ほらね、すっごく嬉しそうな顔をしてあたしの膝枕に応じたよ。

 うーん、のぼせた体にたまにそよそよと吹く風、そしてどこからか聞こえてくる風鈴の音が心地いいな。


 そういえばヘリオって打ち上げの時居なかったけど、どこに行ったんだろ?

 あたしはヘリオに魔物の事や他に色々と聞きたい事があった。何で魔物と同化していたのかって事とか、バーサーカーだったって事を言わなかった事とか。誰も言わないけど、みんなも聞きたいだろう。


 その時またドアの開く音がして誰かが入って来た。


「おぉ!? 今日は随分大勢で来てるんだな」


 このシチュエーション、そして聞き覚えのある声がした。予想通りそこにはヘリオが立っていたよ。


『なんだ、ヘリオ……』


 あたしは反射的にいつもの台詞が出たけど、唐突にある感情が沸き起こってきたんだ。


「ったく、なんだはないだろ……ん? どした?」


 あたしが前回と違って硬直した様にぎこちない動きだったのを見て、ヘリオは不思議そうな顔をした。


『ギェェェェェェェーーーーッ!』


 あたしは自分でも信じられない程の声を上げて、一目散に湯船に飛び込んだんだ。

 クリーダの頭はと言うと、膝枕を失った為に縁台に頭が当たってゴツンと言う音をさせていた。

 その後で、ミメットとオプティーゼも当然の様に叫んでたよ。


「おや、おチビもついに羞恥心と言うものを覚えたかーッ! 成長したねぇ」

「アハッ! 次は反抗期が来るかもねぇ」


 ポカーンとしてるヘリオ。


『なッ! なんでヘリオが入ってくるんだァァーーッ!』

「何でって……、何で今回に限ってそんな声出すのか逆にオレが聞きたいわ」


 そう言えば……何であたしは叫んだんだ? 今までなら全然何とも思わなかったのに、今は裸を見られるのが凄く恥ずかしいんだ。


「ほら、ヘリオもボーっとしてないでお湯に浸かりなよ」

「近こうよれ、苦しゅうないぞよ」


 スフェーンとシンナバーには羞恥心と言うものは一生縁がなさそうだ。


『こっち見るな!』

「お前は思いっきり見てるってのにそう言うか」

『わわわッ! こっちに近づくなッ!』


 ヘリオは一直線にこっちに来やがった。近くにいたミメットなんて気を失いそうになってるよ。


「プッ、おチビたん顔真っ赤だぁ! かわいぃーッ!」

「恥らう割に見るべきものはしっかり見ちゃうんだねッ! わかります」


 スフェーンとシンナバーがあたしを茶化した。


『これはッ! さっきのぼせたからだんにゃん!』

「オレに興味があるならそう言えよなー」


 そう言ってヘリオはあたしの目の前で筋肉を誇示する様なポーズを取った。

 その直後、あたしは目の前が真っ暗になったかと思うと記憶が途絶えた。後で聞いた話ではぷかりとお湯に浮かんだらしい。


 それは二度目ののぼせが理由じゃはない事は確かだったんだ。


いっその事全員で二次会のお風呂って思ったんですけど、大変そうなのでかいつまみました。

いじりキャラ達を今後どうするかは、ゆっくり考えて行きたいと思います。


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