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【54】真紅の大剣

次に書く話ばっか考えてしまって、ずいぶん投稿に時間がかかってしまいました。

 あたしは魔物に小細工魔法の一つである物質の「解体」を発動した。


 魔物の体が光に包まれ、取り込んでいた者達が開放されていく。

 ぱぁっと光の瞬きが辺りに散り、やがてそれらは空高く上って消えて行った。この光りは一年前の作戦に参加した組合員の魂だ。あたしはその光を見てやすらかにと祈った。

 その後で、エキドナの巨体が魔物から飛び出し大地を揺るがすと、地面に大きな魔方陣の光が現れてその中へと沈んでいった。


 後はヘリオと魔物が分離するだけだな、魔物はその見た目を殆どヘリオへと変えていた。その右腕と融合している巨大な赤い剣……これが魔物の正体だったんだ。

 赤い大剣はドスンと言う重い音を立て、ヘリオの右手から離れて地面に突き刺さった。

 そして、魔物と分離したヘリオが地面に倒れ込もうとした所で、あたしは巨人の腕でヘリオを受け止めた。


 すぐさまあたしはヘリオの胸に耳を当ててみた。しっかりとした鼓動が脈打っている。よかった……ヘリオはちゃんと生きてるよ。


「どうですか?」


 その声で周りを見渡すと、周囲にみんなが集まって来ていたんだ。

 ヒーリングフィールドも消えている、エルバや前衛達も治療を終えたんだな。エルバ達が起き上がりぐーっと伸びをしたり、屈伸運動をしているのが見えた。



『大丈夫……ヘリオは生きてるんにゃん』


 そう言いつつ、これで今回の作戦はこれで終わったんだなって思えたんだけど……、


「《我を手に取れ、その者に思いのまま力を授けよう……》」


 と言ったのは地面に突き刺さっている赤い剣だった。


『まだやる気かんにゃん?』

「また誰か捕り込まれたら厄介です、すぐに破壊してしまった方がいいでしょうね」


 クリーダがそう提案した時、その後ろで声がした。


「その役目、オレにさせてくれないか?」


 その声の主は隊長のエルバだった。


「真っ先にやられちまったオレが最後においしい所をもらおうってのは虫が良すぎるとは思うが、そうでもしないと気が治まらない」

「そうですね、エルバさんに破壊して頂きましょうか?」


 あたし達に異論はなかった、全くいい所ナシでやられた隊長ってのもかわいそうだからね。


「悪い……、じゃぁ終わらせてみんなで帰るか」


 エルバは片手で斜めに銃を構え、赤い大剣に埋め込まれた赤い玉を狙い放った。

 辺りに炸裂音が響き、剣に埋め込まれていた赤い玉は粉々になって飛び散り、燃えるかように煙を上げて消えて行った。

 その魔物が最後に発した言葉は、《我を手に……》だった。

 忌々しい魔物の声が途絶え、そこには丸い玉の抜けた真っ赤な大剣だけが残されていたよ。


「ねぇ、隊長

 この赤い剣は壊さないの?」


 スフェーンがエルバに問いかけたのを聞いて、あたしは剣を慎重に探ってみた。もう、この剣こには邪気のかけらすら存在していなかった。不思議な素材で出来ているけれど、もうただの剣になっている。


『大丈夫、もう魔物は消えたみたいだんにゃん』

「しっかし、真っ赤な剣なんて珍しいねぇ、何で出来ているんだろ」

『それがねぇ、よく分からない素材なんだんにゃん』

「これを使いこなせるとしたら、ヘリオさんしか居なそうですね」

「だがオレにはその剣は必要ない、破壊しよう……」


 ヘリオが気が付いた様だ、巨人の手に支えられながらそう呟いた。


『あのさ、その剣……あたしがもらったらダメかんにゃん?』


 その時、何故かあたしの口が開いたんだ。


「えぇ!? その剣はおチビよりずっと大きいんだよ!? 大人用なんだよ!?」


 シンナバーがすかさず突っ込んでくれた。久々に聞いた様な気がする。


「あなたって剣を使えたのですか?」

「魔法使いが大剣を使うなんて聞いたことないぞ」


 その問いに対して、あたしはこう答えたんだ。


『今さっき使える様になったんだんにゃん』


 あたしは魔物と意識を一時的に融合した事によって、ヘリオの剣術を少しばかり会得してしまっていたのだ。


「だけどさー、おチビたんにそんな怪力があると思えないんだけどぉー

 どうやって持ち歩くのぉ?」


 スフェーンの疑問もごもっとも、あたしの力は見た目通りにとても弱い。こんな剣を持ち上げる事なんて絶対無理だ。だけどね。


『イイーヒッヒッヒ! ビビデバビデブー!』


 あたしは童話の魔法使いが言いそうなセリフを言い、更にそれらしいポーズを取ると、赤い大剣に小細工魔法をかけた。

 みるみるうちに大剣はそのサイズを縮め、あたしの背丈に丁度いい大きさになって行ったんだ。実は質量は変わってないから重さは同じなんだけどさ。


「すげぇ……小さくなったぞ!?」


 あたしは丁度いいサイズになったその剣を、背中に背負ってキメのポーズをした。


『シャキーン! どうかんにゃん?』

「その剣……不自然に背中に張り付いてますね」

『うん、背中に張り付くように魔法かけてあるんにゃん』

「ギャハハハハーーーッ!

 大剣が普通の剣のサイズになったねッ! おチビは何でも子供用だからねッ!」


 突然シンナバーがあたしを指を差して爆笑した。


「ブッ! シンナバーあんた今日も冴えてるねッ!」

『ぐぬぅ……言われてみれば……』


 そう言われて見て気が付いた、普通の剣のサイズまでじゃないけど、ほんの少しだけ長い片手の剣って感じのサイズだよ。

 みんながあたしを見て笑ってやがる、いいんだいいんだ。あたしはこの赤い剣が気に入ったんだからさ。


 爆笑の中、あたしはみんなに赤い剣を振って見せた。ついさっきまで剣の「ケ」の字も知らなかったあたしが剣を自由に振り回せている。これにはあたしもすっごく驚いてる。

 ただ、剣を振り回してるのはあたしの筋肉じゃなくて魔法でなんだけどね。


「おぉー……それなりに見えるぞ」

『ヘリオ、どんなもんかんにゃん?』

「驚いたな……その型ってオレのそっくりじゃん」

『ねぇ、ヘリオも魔法使える様になってるんじゃないかんにゃん?』

「あぁ、オレの剣をお前が会得した様に、オレが魔法使える様になったんじゃないかって事か?」

『そうそう、どうかんにゃん?』

「いや……、残念ながら魔法の魔の字すら会得出来ていない様だ

 その代わりお前の事なら殆ど理解出来たみたいだがな」


 ヘリオが満足そうな顔をして言った。


「この子は先にわたしのものになってるのですから、後から来たヘリオさんは遠慮して下さい」


 それを聞いてあたしも周りのみんなも一斉に言葉を失った。クリーダもとんだタイミングでカミングアウトしてくれたもんだ。


「コラ! クリーダはケチケチするんじゃないよッ!

 そう言う事ならおチビは前からあたし達のものだったんだからッ!

 おチビの独り占めは禁止なんだよッ! おチビはみんなのものなんだからねッ!」


 そしてまた爆笑が起こった。これこそいつものやれやれな展開さ。と言うか、みんなして「もの」扱いかいッ! その期待通り、あたしはやれやれと言うポーズをしてあげたよ。


 その後、あたし達は軍が待つ場所へと戻って行った。

 アンモチン大佐達は何故か驚いた顔をしてたけどさ、まさか戻って来ると思ってなかったんだろうけど、どっこいあたし達は戻って来たんだよ。「ざまぁみやがれッ!」とか言いたかった、絶対に言えないけどね。

 そこには無事に回復したミメットも居たんだ。あたしはちゃんと元通りになったかどうかミメットの背中で早速確かめて見たさ。


「うぇぇぇーーーッ!」


 周囲の山に響くほどの大きな悲鳴を上げるミメットに、あたしはヨシヨシと頷いた。


 その後、エルバがアンモチン大佐へ作戦の一部始終を報告をしてくれたんだけど、大変な事になってしまったんだ。


 なんとね……


 あたし達はこの後、マトラ王国の首都であるマトラへ行くことになったらしい。らしいとか他人事で言っちゃったけど、ちょっと信じがたい事なんだ。

 でもこれは確定なんだ。それにちゃんと依頼を終えたサインを貰わないといけないからね。

 ともかく無事に家に着くまでがお仕事です。成功報酬一人100万丸の大仕事だし、この際「えーーッ!?」とか文句は言うまい。


 そんな思いもよらない展開に、あたしはちょっとワクワクしてしまったんだ。


もう1回戦闘を入れても良かったのですが、ストーリー上影響を与えない展開だったので切り上げました。

ルビーさんはたなぼた方法で剣技を入れてしまいましたが、もっと他にも手に入れたものがあります(と言う予定です)。

それらについても今後書いていこうと思います。


もう少し続きます^^

ヨロシクお願いします。

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