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【52】悪魔の様な2人再び

 突然変異の魔物はミメットが召喚したエキドナと同化していたんだ。


「《ククク……作戦を考える時間を少しだけくれてやる、

 せっかくの楽しみがすぐ終わってしまってはつまらないからな》」


 悔しい事に大きな力を手に入れた魔物はその余裕からか、あたし達に考える時間をくれるらしい。


「まずった……エキドナが食われるなんて」


 ミメットは最強の手駒を失った事を悔やんでいる。


『あのさ、エキドナを食べちゃったって事は、エキドナの能力もあるって事かんにゃん?』

「多分ね、通常の攻撃はもう通用しないかも……

 キマイラは母親とは戦おうとしないみたいだし……どうしたら」

『別のはいないのかんにゃん? 動けないキマイラじゃしょうがないでしょ?』

「んー……、でもエキドナを止められる程のとなると」

「わたしから提案があります」


 作戦を決めかねているのを見かねてか、クリーダは一歩踏み出してあたしの肩に手を置いて言ったんだ。


『提案って?』

「あの魔物は恐らく4億度の熱をもってしてもダメージを与えられないでしょう」

「よ……4億!? ってどんだけって温度よ!」

「恐らく熱などによる魔法攻撃は通用しないと思われますが、有効な手段は存在しています」

「え? どんなの?」

「いたって簡単です、物理的な抵抗は有効手段である事が分かっています」

「その根拠は?」

「まず、エキドナさんがあの魔物に引き寄せられていた事、

 次に超重力の魔法で魔物を切断出来た事」

「そういえば……さっきの魔法で千切れてたっけ」

「物理的って事はつまり殴れって事?」

「そうなりますね

 物理的な効果のある魔法でも問題はない様です」

「わかった……、すぐ召喚獣呼びなおすね」


 ミメットはずっとその場で佇んでいるキマイラを魔方陣に沈めると、次の召喚獣を呼び出す詠唱に入った。


『でも、爆裂魔法は場所を考えて使って欲しいんにゃん』

「う……気をつけるよ……」


 あたしはとばっちりで吹き飛ばされたくない為、精霊魔法使いに一応注意しておいた。


「《ククク……作戦は決まったのか?》」


 魔物が痺れを切らした様だ、あたし達は魔物の方に振り返った。


「ちょっと! 足かせが外されてるよ!」

『え!? あぁッ!』

「《ククク……捕獲してるつもりかと言ったはずだ

 それよりお前たちはエキドナだけが全てだと思ってはいないだろうな》」


 考えてみればそうだ、魔物はエキドナを吸収してその能力を手に入れたのだから、その他にも能力があっても不思議じゃない。


「《面白いものを見せてやろう、この本体の能力だ

 見た瞬間に命を失う事になるかもしれないが》」


 魔物は低く前傾姿勢をとったまま何かをしようとしている、何か技でも仕掛けてくるのだろうか?

 警戒して見ていると、ムチの様だった右手の先から出ていたものが巨大な赤い剣へと変化して行った。

 そして、突如魔物の形相が一変したんだ。

 その顔は相手を威嚇する様なものじゃなく、これから起こる事を全力で楽しもうとしてる狂人の目。そんな表情だった。


「あの目はまさか……バーサーカー!?」

『え!?』

「《ククク……終わったな》」


 魔物が剣を一振りすると、なんとそこから衝撃波の様なもの発生したんだ。

 それを身を踏ん張って何とか耐えるあたし達。


「《お前……通行の邪魔だなぁ》」

「ぐひッ!?」


 声のする方向を見ると、魔物がミメットの頭を掴んで持ち上げていた。

 頭を掴まれたミメットは余りの恐怖に硬直して、その目には涙を浮かべていた。

 手も足もだらんとたらして完全に戦意喪失してる。まだ召喚を終えてないミメットには、その身を守る手段すらなかった。


 魔物は狂気の目をニヤリとさせて、一層目を見開いた


『やめろぉぉぉーーーッ!』


 あたしが叫んだ瞬間、魔物の掴んだ手の先が激しく爆発した様に見え、ミメットはまるで作り物の人形を思いきり地面に叩きつけた様な音を立てて地面に激突し、そして空中に弾んだ。

 慣性のままミメットが何度も転がり、彼女のかけていたメガネがバラバラの破片となって周辺に散らばった。

 あたしは不自然な体勢で横たわるミメットを見た瞬間、もう助からないかもしれないと思った……それはそんな状態だったんだ。

 浮き上がっていた魔方陣がうっすらと消えて行く、それはミメットの命の火が消えて行くかの様にも見えた。


「《ククク……お前も同じようになるがいい》」


 そう言って魔物があたしの頭を鷲づかみにしようとした所で、何故かその手が止まったんだ。


「《チッ……》」


 魔物は舌打ちをしてクルリと方向を変えると、一直線にある方向へと向かって行った。今のは一体何だったんだろう……。


 でも、魔物が向かった方向はヒーラー達の居る所に間違いない。

 エルバが何が何でもヒーラーを守れって言ったのに、あたし達は守れなかったな。それどころか結局何も出来なかったじゃないか。

 そう考えつつ、目の前に無残に転がって死に掛けているミメットを見ながら、あたしはその場に挫けてしまった。


 ――あ……


 その時、ポケットから何かがコロリと転げ落ちて目の前に転がった。


『これは……』


 それはあの白い玉だった。あたしは急いでその玉を拾うと、ミメットの側に駆け寄ったんだ。

 痙攣を起こしているミメットの上で白い玉を両手で叩くと、玉はパンと言う音を立ててはじけ聖なる光りをミメットに注いだ。


『よかった……、ちゃんと発動されたじゃないか』


 その白い玉はシンナバーの再生魔法が封じ込められたカプセルだった。ミメットの全身はシンナバーの再生魔法の光に包まれ光り輝いている。


 あたしは小細工魔法でミメットの下の地面から小さい乗り物を作り、それに軍の待機する場所へ移動する様に命令すると、ミメットを乗せた小さい乗り物はすぐに森の方向へと向かって走っていった。


 少し気分が落ち着いたら、魔物とクリーダ達が交戦している事に気がついたんだ。

 クリーダの透き通った玉のはじける痛々しい音と、爆裂魔法の音がする。あの二人はあたしが挫けていた時にも諦めずに戦っている。


 ――まだみんな諦めていない


 音のする方向を確認すると、ヒーリングフィールドはまだ健在で、その前に4人の人影が魔物に立ちはだかって戦っているのが見えた。回復を受けた誰かが復帰したかな?


 あたしは急いでその場に駆けつけて驚いた。


「あらぁ? おチビたんだぁーーッ!」


 そして、聞き覚えのあるその声に元気が沸いて来た。


『え!? スフェーン!? 何で!?』

「さぁさぁ、おチビだからって、そんな所でぼんやりしてるんじゃないよ!?」

『シンナバーも!?』

「ごめんねぇ、遅刻しちゃったぁ」

「だから言ったじゃない! イチャ付いてる暇なんてないよって!」

「アハハッ! それで辞めようとしたら離そうとなかったのは誰だったっけねー?」


 ベイカからの参加者二人って、まさかのスフェーンとシンナバーだったのか! ってこんな時に何の話してるんだぁーーッ!


 スフェーンが凛々しい顔つきでビシッと二本の指を揃えて手を翳すと、魔物の周囲全方向に無数の超高速の渦巻きが発生した。


 その渦の方向は魔物に追従して動いて狙いを定め、魔物に突き刺さり発動したんだ。


「《ヌガァァァァ!!》」


「ありとあらゆるソニック・トルネード! いつもより多目に回しておりまーすッ!」


 魔物の体は無数の渦巻きに削られてボロボロになっていった。


「《おのれぇぇ!》」


 声を張り上げてスフェーンに飛び掛る魔物。


「ヨッと!」


 スフェーンが手で軽くドアを開く様な仕草をすると、魔物が左へとしかも直角に飛ばされていった。

 でも、その飛ばされていった先は、シンナバーが居る方向だ。


「《ウハハハハッ! ならばこのヒーラーを先に片付けてやる》」


 シンナバーはニヤリとすると、後ろ手に回し両手に棍棒を持って戻して構えた。

 しかし、それを魔物の巨大な剣が高速で切り裂いてしまった。真っ二つに切り裂かれるシンナバー。


『あれ……?』

「《ククク……手応えすらなかったか》」

「残念だったねッ! ハズレクジだよッ! アタリは最初からないんだけどねッ!」


 真っ二つにされたシンナバーが残像の様に消え、魔物の真横に突如彼女が現れそう言うと、目に見えない程激しく両手に持った棍棒で魔物をけたたましく連打した。

 魔物は地面に激しく叩きつけられ更に10メートル程の距離を転がりながら滑って行った。


「アハハ! シンナバーって殴るヒーラーだからホントたち悪いよなッ!」

「えー!? 回復だって一応出来るんだよ!? 知らなかったの!?」

「ぶっ! 一応かいッ!」


 何なんだこの二人の余裕は……、明らかに戦闘慣れしすぎてる。一体今までどんな戦況を潜り抜けて来たと言うんだ。


「この人……スフェーンって……最強のソーサラーのスフェーン・アウインだ……あたし初めて見たよ」

 精霊魔法使いがスフェーンを見てそう言っていた。え? スフェーンってそんな有名だったの!? しかも最強とか言われてるぞ!?


 合流したスフェーンとシンナバーの戦力は、あたし達の戦況を180度も変えてしまう程のものだったんだ。


(忘れそうになりつつも)何とか忘れずに線を結び続けられてますが、やっぱり難しい><

結は全ての集大成となるはずなので、なるべく痛快さを得られる様に頑張って見たいと思います。まだすぐは終わりません。

後一週間位でなんとかまとめられるといいのですが。


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