【51】突然変異の意味
リーダーは瀕死の重傷、前衛達は戦闘不能、そして無敵のはずのエキドナが消滅してしまった。
それでも魔物は足かせにより拘束している、ならばあたし達が優勢な事には変わりないだろう。
「もう魔物の盾となるものもありませんね」
『うむ、このまま仕留めるんにゃん』
「《ククク……》」
『ちょ……変な声で笑うなんにゃん』
「わたしは笑っていません」
あたしとクリーダは精霊チームのもう一人を見た。
「あ……あたしも笑ってないから」
「《ククク……それはよくあるお約束と言うものか?》」
まさかと思ってたけど、笑っていたのは目の前にいる魔物だったんだ。
魔物はニヤリとした表情であたし達を見ている。
『げげーッ! 魔物が喋ったんにゃん!』
「喋りました!」
「魔物って喋るんだ……」
「《喋るのは人間だけだとでも思ったのか?》」
いや、そんな事知らなかったけどさ。何たってあたしは魔物に会うのなんて初めてだし。
『笑っても離してあげないんにゃん』
「《これで捕獲しているつもりとはな》」
『つもりもなにもあんたは抜け出せないんだんにゃん!』
「《次は後ろのヒーラー2人だ》」
『は?』
「《本当に抜け出せないかどうか見ているんだな》」
「お待たせ!」
その時、眩い光と共にミメットが召喚を終了した。やっとか……召喚ってずいぶん時間がかかるんだね。
ミメットの横に巨大な獣が立っていた、それは獰猛な肉食獣の様な鬼の形相に似合わず、スレンダーな手足と体、更に蛇の尻尾が付いている何なのか分からない謎の怪物だ。
体の大きさも15メートルはありそうな巨体ぶりだった。
そしてエキドナと同じ様に、周囲の光をゆらゆらと歪ませている。
景気付けかその怪物は凄い声で吼えた。全くもってそれは肉食獣そのものの咆哮だよ。
「ヒッ! また凄いのが現れたね」
『更に酷いのが現れたんにゃん』
「本人目の前にして酷いとか言わないでよ……
はじめまして、娘のキマイラです」
「「『え……』」」
あたし達はショックを受け言葉を失ってしまったんだ。
まさかこの怪物がミメットの娘だなんて……召喚士の末路を垣間見た様な気がして、何て言っていいか浮かばない。
『うんと……流石親子だけあってそっくりだよ……ね』
「う……ん、目の辺りにちょっと面影があるね」
「えぇ、佇まいがよく似てますね」
「目? 佇まい?
……ちょっとあなた達勘違いしてない? 娘ってエキドナの娘だよ?」
なぁんだ……意外性ないなぁ。親子って言う割に尻尾が蛇っぽい所以外は全然似てないって事は、他の部分はお父さん似とかなのかな?
「そ、、そっか……尻尾は似てるね蛇っぽいし」
「そうですね、蛇ですね」
『うん、蛇だんにゃん』
「いいよいいよ……今更フォローしなくても」
そう言うミメットは明らかに凹んでいる様に見えた。
「さて、喋る魔物さん」
ミメットは魔物に向かってビシッと指を差した。
「《ククク……待ちくたびれたぞ》」
「待ってくれてありがとう
今度はこのキマイラで相手をしてやるから覚悟しなッ!」
「《それは楽しみだな》」
「チィ……
キマイラ! あのお喋りな魔物を全力でやっておしまい!」
ミメットは魔物に指を差したまま、横に居るキマイラに命令した。が……、キマイラは微動だにしない。
『うむぅ?』
「言う事聞きませんね」
「だね……反抗期かな」
あたしとクリーダと精霊魔法使いは、常に鬼の様な形相のキマイラに期待してただけに肩透かしを食らった気がした。
「さぁ! 行け! どうしたッ!?
GO!! さっさと行けって!」
キマイラは「グゥゥ」と言う低い声を出して戸惑っている様に見えた。
「《ククク……何故か分からぬのか?》」
「あー?」
ミメットはその顔に似合わない言葉で魔物に返した。
「《お前はエキドナがどこに行ったと思ってるのだ》」
「……!」
その言葉にミメットが理解したかの様な反応を示した。
「そうか……それで呼べなかったって訳ね」
『へ? なになに? どういう事だんにゃん?』
もちろんあたし達は分からない訳なので、ミメットに説明を求めた。
「さっきね……、エキドナをまた呼び出そうとしたんだけど呼べなかったの
まさかとは思ったけど……」
「つまり、エキドナさんはあの魔物と同化していると言う事ですね」
「そうみたい」
クリーダがその先をズバリ言ってくれた。
そうだったのか、と言うかクリーダって召喚獣にまで「さん」付けするんだね。
「《ククク……では続きを始めようか》」
事もあろうかエキドナはあの魔物に吸収されて存在していた、つまり戦況は最初よりももっと悪化していたんだ。
最近する事が増えて(自分で増やして)しまって時間が足りません><
前回は厳しかったので、今回は少し気を抜いてやわらかくしてみました。
ちゃんと収集を付けないと…。
では次回もよろしくお願いしますm(_ _)m