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【49】戦場

 あたし達魔戦士組合員15人の小規模討伐隊は、作戦エリアへと向かって歩いて行った。


 前衛達は辺りの気配を探りつつ気を張って歩いている、歩く速度も移動時とはうって変わってスローペースになった。

 そこで、あたしはミメットにある事を提案してみようと思った。


『ねぇ、ミメット』

「なに?」

『実はあたし、魔法レーダー使えるんだんにゃん』

「魔法レーダー?」

『地面とか物の表面に薄い魔法をかけて、それに触れているものが何かとか距離とかがわかる魔法だんにゃん』

「へぇー、そうなんだ

 もしかしてこの状況に使えそう?」

『浮いてたりするとわかんないけど、少しは役に立てると思うんにゃん』


 あたしのこの提案は受け入れられ、先頭で魔法レーダーを使う事になった。

 エルバは進んだ道筋が分かる様、木の横を通り過ぎる時にその幹にナイフで目印を刻む事も忘れてないみたいだ。その様子を見た他のメンバーも、剣で幹に目印を刻んでくれている。


「どうだ?」


 早速エルバが今の状況を聞いて来た。


『見える範囲は全部魔法かけてるけど、虫がいるだけで小動物の反応すらないんにゃん』

「そうか、何か気が付いたらすぐに教えてくれ」

『了解だんにゃん』


 そのまま何の反応も検知される事がないままに森を進んで行った。

 更に歩いていくと魔法レーダーで前方の木々が突然なくなり、広場の様に開けている場所がある事がわかったんだ。


『まだ何も反応ないけど、この先に大きな広場があるんにゃん』


 あたしは広場がある方向を指差して言った。


「よし、その広場に向かって進もう」


 あたしが言った通り、やがて2~3数百メートル四方もありそうな大きな広場に出た。

 その広場は小さくてかわいい花がたくさん咲いていてとってもきれいだ。見た目だけなら楽園の様だったよ。

 でも、この広場にもやはり何の反応もなかったんだ。


「おぉ……これは素晴らしい」

「森の奥にこんなきれいなお花畑があったんだー!」

「ここに寝転んだら気持ちいいだろうなぁ」


 森を抜けて広場に出た事で緊張が解けたのか、後ろからそんな会話が聞こえて来たよ。それも当然だろうね、見た目は本当に美しい花の咲く野原なんだから。

 だけどさ、あたしはこの広場にとんでもないものを見つけちゃったんだ。この楽園の様なお花畑に点々と埋もれているあるものをさ。


「顔色が悪いぞ? 何かあったのか?」


 あたしの様子の変化にエルバが気が付き声をかけて来た。


『この広場は……一年前の戦場だんにゃん』

「なんだって? こんな所がか?」

『そこ、よーく見てみるんにゃん』


 あたしはエルバの足元のすぐ近くを指差した。


「うん? ここか?」


 エルバはあたしが指差した先を靴の先で探っていた。すると丈の短い草の下からコロンと言う音を立て白いものが転がった。


「うッ……? こ……これは!」


 転がった白いものはまさしく人間の頭蓋骨の一部だ。それも無残に破壊されて砕けた様な破片だったんだ。


『この広場にはこういうのがいっぱい転がってるんだんにゃん』


 あたしの言葉にみんなの表情が一斉に強張った。一年前の同じ作戦では、参加を棄権した者を含まない108人全員が戻れなかった。その壮絶であろう戦場がここなのだと分かったからだ。


「ここが一年前の戦場なのか……」


 エルバはそうつぶやきつつ、何かを考え込んでいる様な表情をし、少ししてまた口を開いた。


「ここが最後だ、もし迷いを感じた者はここから先に進まず引き返せ

 それ以外の者だけオレの後について来い」


 エルバはみんなの方へ振り返って、一言そう言うとまたくるりと向きを変えて先へ進んだ。

 あたしはもちろんエルバの後に続いて行った。そこで引き返して行った者が何人いて、それが誰かも全て分かっていたけどね。


「何人になったのかな?」


 少しして、エルバはあたしだけに聞こえる小さな声で聞いてきたんだ。


『前衛2人と、精霊1人、後ヒーラーが1人抜けたんにゃん』

「そうか……仲間で決めたんだな」


 これであたしたち討伐隊は11人になってしまった。4人も抜けたのは流石に痛いけど、任意参加である以上は彼らを責める事は出来ないね。

 今のあたしたちの編成は、前衛4、召喚2、精霊2、ヒーラー2と大分寂しくなった訳だ。


「既に戦場に入っている、気を引き締めて進め!」


 士気を維持する為だろう、エルバは頻繁に仲間に声をかける様になった。

 そしてあたしはここで地面の異変に気が付いた。遂に地面レーダーに反応があったんだ。


『来たッ! あっちの方向から凄い速度でここに近づいてくるんにゃん!

 魔物は二足歩行だーーッ!』


 あたしは近づいてくるものの方向を指を差して示した。


「来るぞ! 隊形を整えろ! 前衛は前へッ! 急げッ!」


 エルバのその声に前衛達は前に出ると剣を抜いて構えた。

 ミメットもいつの間にもの凄い化け物を呼び出している、下半身が巨大な蛇で上半身が美しい女性の怪物だ!

 これが彼女の言ったエキドナなのか!? 想像してた以上のスケールじゃないか!

 エキドナの周囲にはゆらゆらとその周りの光を歪める程のもやの様なものが出ていた。魔物が迫るこの状況ですら圧倒させる程の化け物だ、本当にこれが味方でよかったって思う位に今は頼もしいよ。

 あたしもすぐにどこにでも小細工魔法で作り出せる体制に入った。

 しかし近づいてくる魔物はなんて速さなんだ! やはり魔物は人間の速度とは全然違うんだな。


『敵はもうすぐそこだんにゃん!』

「何だって!? 何も見えんぞ!?」

『地面すれすれに走ってるんにゃん! あッ! 上に飛んだ!』


 その魔物は前衛の頭上を軽く跳び越して、あたしの後ろに居るエルバへ向かって一直線に向かったんだ。

 この魔物は遠くから近づいて来たのに、もう誰がリーダーかが分かってるのか!?


『エルバ避けてッ!』

「なにッ!?」


 予想外のスピードにエルバは敵の位置を把握出来ていないのだろう、キョロキョロするだけで動くことが出来ずに居る。

 そして、魔物はエルバに向かって無数のムチの様なものを伸ばした。


 あたしはエルバの前の地面から巨人の手を生やし、魔物から伸びるムチからエルバを保護しようとした。

 しかし、魔物のムチは巨人の手を貫通し始めた為、急いで巨人の手を構成する物質の結合を固めて硬度を上げた。

 徐々に貫通が止まった……何とかエルバを守る事が出来たな。

 ホッとしたのもつかの間、魔物はまだエルバに向かって降下して来ていた。


「コンプレッション・エクスプロージョンッ!」


 後方から声がした。なッ……!? 誰だぁ! この状況でそんな魔法を唱えた奴はーーーッ!

 巨人の手の真上の空間が収縮を始めると、急激に小さな光の点とまでなり大爆発を起こした。

 それに巻き込まれて周囲に集まって来ていた前衛達が吹き飛んだ、あたしはギリギリ目前に壁を作り出して爆風を凌げたけど、せっかく魔物の一部を捕獲している巨人の手も崩壊してしまったよ……何て事だ。


 爆風が収まった直後、グサリと鈍い音がしてエルバの体は魔物から伸びる無数のムチの餌食となってしまったんだ。


遂に魔戦士組合員達が魔物と接触しました。

ホントにちゃんと続くと思いませんでした・・とても驚きなのですが、これは毎回見て下さる方達のお陰なんだと思ってなりません。


分かりにくい所があるかと思いますが、最後の追い込みまでもう少しだけお付き合い下さい。


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