表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/60

【48】討伐作戦開始

 作戦当日、朝になってもヘリオは魔戦士組合のテントには戻って来てはいなかった。


『ヘリオは結局戻ってこなかったんにゃん』

「そうですね、どうしたのでしょう?」


 出発の準備を終えてクリーダと話していると、軍の兵隊がテントにやって来た。


「魔戦士組合員は全員速やかに外に集まるように」


 とうとう軍の集合がかかった、あたし達組合員は小走りでまだ明けたばかりの少し薄暗い空の下へと出て行ったんだ。

 外に出ると軍のテントの前に軍の兵隊達がずらっと並んでいた、人数で言えば軍の方がずっと多かった。

 って事は組合員としては軍の補佐をすればいいのかな? 軍なんだから立派な兵器もあるんだろうし。


「組合員各自、適当に並んで聞け」


 昨日の几帳面そうな軍人が声を上げ、あたし達はそれとなくチーム毎に固まって聞いていた。

 軍の群れの中にアンハイド将軍の姿が見えないなぁ。そうなると、この几帳面な軍人が今回の指揮を取るって事だろうか。


「私が今回の作戦の指揮を行うアンモチン大佐である

 これより魔物討伐を行うが、我々軍の後に続いて現地へと向かう事

 また、我々とのやり取りが必要な場合はキミ達の隊長であるエルバ、又は副隊長のミメットを必ず通すこと、以上だ」


 以上だってぇ!? ここに来ても魔物の説明はナシなのか!?


『(ねね、ミメット)』

「(なに?)」

『(未だに敵がどんな魔物かって説明もないってどうなんだんにゃん)』

「(うーん……そう言えばないね、エルバに聞いてもらおうか)」


 ミメットはそそくさとエルバの所へ行くと、彼の耳に手をあてて何かを伝えていた。別にミメットが直接聞いてもいいらしいのに……。


「アンモチン大佐、質問があります!」


 よし、エルバが手を上げたぞー。これでやっと魔物の説明が聞けそうだ。


「なんだ? エルバ」

「我々は討伐予定の魔物の情報を未だ頂いておりませんが」

「それについては依頼書に突然変異の魔物と書いてあったと思うが?」

「もう少し具体的な詳細を頂きたいのですが、

 我々の作戦に大きく影響しますので」

「残念だが我々にもそれ以上の情報がない為、詳細については伝える事が出来ない」

「そうでしたか……了解しました」

「他にはないか? ないな? では現地へ出発だ」


 チチチチィーッ! なんなんだこの作戦はッ!? 敵の正体が分からない癖に、敵の居る場所が分かるってどういう事なんだーーーッ!


「作戦頑張りましょうね」


 エルバを先頭に横を通り過ぎてゆく精霊チームのクリーダが声をかけてくれた。


「うん、頑張るんにゃんッ!」


 納得出来ない表情をしていたあたしは、急いで表情を笑顔に切り替えてクリーダに返した。

 精霊チームに混ざって前衛チームが進み、その後ろにヒーラーチーム、最後にあたしとミメットの召喚チームが続いた。


 いよいよかぁー、オラ何だかワクワクして来たぞォーッ! 今日は体調も元に戻ってるし、あたしの欠点の対策もちゃんと考えておいたし全てが万全だ。


 軍の後にゾロゾロと続いて歩いてるこの道、昨日ヘリオと通った道だな。

 そう言えばどこにもヘリオを見かけないぞ、まさか先に行っちゃってるなんて事もないだろうけど、一体どうしたんだろう?



 暫く歩いて行くと、次第に辺りの緊張感が増してきた。さっきまで聞こえていた鳥の囀る声や、小動物の気配がまるでなくなったよ。これって魔物に近付いたからだろうか?


『鳥が全然鳴いてないんにゃん』

「うん、わたし何だか緊張してきちゃった……」


 ミメットが緊張した様子で腕組みをして歩いていたのを見て、あたしは彼女の背中にそっと手をあててあげた。


『おや?』

「え?」


 あたしが声を出したのはミメットの背中の手触りがすごく良かったからなんだ。何ていうか触ると何故か癒される場所。ミメットの背中ってまさにそんな感じだったんだ。占いをしたら今日のベストスポットはきっとミメットの背中だろうね。


「ちょっと……何してんの……」

『ごめ……でもミメットの背中の手触りがメチャクチャいいんだんにゃん』


 スベスベして得られるこの癒しは何だろう、あたしの顔は今とても緩んでいるに違いない。


「うぇぇぇーーーッ! ダメだよーッ!」

『ウヘヘヘヘ、よいではないかーッ! よいではないかーッ!』

「コラッ! 静かに歩け!」


 ミメットが嫌がってるのをしつこく続けていたら、後ろにいた軍人に怒られちった。ちぇっ……。

 でもミメットの緊張は解れたみたいだ、もう腕を組む事はなかったよ。


 街を出発してから20分程歩くと列の先頭が停止した、ここらが現地って事なのだろうか。

 辺りは生き物の気配が全くなく、木々が風に揺れる葉の音だけがたまに聞こえてるだけだった。

 それらを鬱蒼とした木々が更に増幅させて妙な雰囲気を醸し出している。


『もしかして着いたのかんにゃん?』

「かな?」


 アンモチン大佐は、あたし達組合員をその前に集めた。


「ここから先、この方向が作戦エリアだ」


 アンモチン大佐は、進行方向から見て右の方向を指差し、組合員もその方向を一斉に見た。

 場所が決まっているのって魔物の巣か何かがあるからなのかな? そう考えればつじつまは合うんだけど。


「それではエルバよ、組合員の指揮を執って速やかに作戦を開始してくれたまえ」

「はい」


 着いた早々始めるのか、遠足じゃないしここでお弁当食べようとかって事もないけど、随分と唐突なんだな。


「これより討伐を開始するが、行動はチーム毎固まり各自単独にならない様に注意する様に

 隊形は前衛、召喚、ヒーラー、精霊の順とするが、中衛は前衛が撃ちもらしたものがあれば召喚獣でそれをブロックし、前衛が崩れた場合もフォローを行う事

 またヒーラーは何があっても死守する必要がある為、精霊チームも含めて皆そのつもりでいてくれ」


 流石エルバはランク9だね、きっと彼のパーティーは今まで不安に思った事なんてなかったろうな。

 それに対してミメットって……全く隊長のサポートをしてないよ。召喚術の能力は相当なもんっぽいけど、現状召喚チームってあたしが主導権握っちゃった様な感じもするし大丈夫なのかな?


「一応念のため、最悪のパターンも考えておく事にする」


 最悪のパターンか、前回を考えればほぼそのパターンになるんじゃって思うもんだろうしね。


「もし前衛が破られた場合、召喚がその代わりを担え

 召喚が破られた場合、精霊が盾となり時間を稼げ、その間にヒーラーは迅速に作戦地域から撤退しろ

 ヒーラーは絶対に逃げ遅れる様な事があってはならない、自分が最後まで生き延びる事を最優先と思え」


 それを聞いて、オブシディアンがほっぺに手を当てて体をくねくねさせていたよ。横に居た別のヒーラーに腰がドンと当たる程にね。


「大丈夫です、あなたは絶対に死なせませんから」


 いつの間にかクリーダがあたしの後ろに居てそう言ったんだ。でもね、あたしもクリーダを絶対に死なせはしないよ。命まで張る必要のないこの仕事は、二人とも生き残るって選択肢しか選ぶ気はないからね。


「では作戦を開始する! 前衛は周囲に注意を払いつつ前進を開始しろ」


 前衛チームを先頭に、あたし達15名は大きな木々が立ち並ぶ森へと入っていった。

 少し歩いた所で後ろを振り返ると、軍の連中はそのままの場所でこちらを見ていたんだ。


『なんだぁ!? 軍は討伐に参加しないのかんにゃん?』

「だって、軍の手には負えないからわたし達が呼ばれたんでしょ?」


 ミメットはつけミミをピコピコさせながらそう言ったけど本当にそうなんだろうか? 軍には強力な武器だってきっとあるはずなのに。

 あたしは釈然としないまま前に続いて歩いて行った。


 突然変異の魔物の討伐<リベンジ>は、こうして幕が開かれたんだ。


やっと討伐開始です。

補足ですが、この世界には「蘇生」と言う魔法が存在しません、それがないのは苦しい所ですが、それがあると後で生き返らせればいいみたいになってしまう為、あえてなくす事にしました。


これからストーリー的には最終段階へ入って行きます。

ちゃんとイメージ出来る文章になるといいのですが、、。


今後のシリーズ全般で軍や国家とは関わって行く予定です、小細工魔法士以外でも世界観は共有して行こうと思いますので、気長にお付き合い頂けると幸いですm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ