【47】魔物討伐の作戦前夜
大変お待たせしました。やっと、戦い間近まで進みました。
その夜の8時、予定通りに魔戦士組合のテントに軍から集合がかかり明日の説明会が執り行われた。
組合員達は事前にテント内に並んで座らせられていた、その人数はやっぱり少ない。あたし達を入れて15人しかいなかったよ。
アンハイド将軍と言うのが今回の作戦の責任者らしい。
そのアンハイド将軍は、軍服を着ているのだけどその顔立ちはまるで、本屋のおじさんみたいだった。体格も随分と小柄だ。
「あー、キミ達が明日の作戦に協力してもらえる魔戦士組合員達かね?
しかし今回は随分と少ない様だな」
一年前は100名を超えていた参加者だったからね、肩透かしがあっても不思議はない。
「人数も少ないし、一人っつ自己紹介でもしてもらうか
そっちの端から名前とクラス、そしてランクを言ってくれ」
アンハイド将軍はテントの右端を指差した、あたし達の反対側だから、あたし達の紹介は最後になるな。
組合員達は順々に自己紹介をして行った、そのクラスはやはり低くてもランク5だ。あたし達みたいな新米はこの作戦に参加してないんだな。
そしていよいよヘリオの番になった。ヘリオはその場で立ち上がり、自己紹介を始めた。
「ヘリオ・ブラッド、クラスはファイター、ランクは」
「あぁ、ヘリオ
キミの事は分かっているからいいよ……次」
おんやぁ? やっぱりヘリオだけが特別なのか? もしかしてヘリオって軍に認められた実力の持ち主だったりするのかな?
次はクリーダか、そうなるとあたしが最後になるね。
「クリーダ・ヴァナディンです、クラスは科学魔導士、ランクは1です」
するとアンハイド将軍が不満そうな顔をして、周りに居る軍の人間と顔を見合わせた。
他の魔戦士組合員達も他のメンバーと何か話している。ランク1って言った事にひっかかってるな?
「なに? ランク1だと?」
「はい、わたしと隣のこの子も組合に入ったばかりなのでランク1です」
「キミ達はランク1なのに難易度Aの作戦に参加するのかね?」
「わたし達が前回参加した依頼の難易度はAでクリアもしています、
従ってわたし達の能力で難易度Aを遂行する事には問題ありません」
アンハイド将軍はため息をついて、片手でクリーダに座る様に合図した。
そんで、あたしが立とうとすると、手で静止されたよ。ランク1の自己紹介なんて不要って事だろね、何だか失礼な奴だな。
「するとどうなるのかね?」
アンハイド将軍が後ろに居る、几帳面そうな男に声をかけた。
「銃士のエルバがランク9、召喚士のミメットがランク8です」
几帳面そうな男はメモを見ながら、几帳面な声でアンハイド将軍に報告してた。
「ふむ、そうか
ではエルバを組合員の隊長、ミメットを副隊長にそれぞれ任命するが二人ともよいか?」
「「はい」」
任命された二人が答えた。
エルバって言う銃士は常にゴーグルを携帯している男、何気に少しイケメンだ。ほら、そんなだから奴の横に居る女がうっとりした眼差しで見てるよ。
そんでもってその女にエルバが親指を立ててオレに任せろって感じのポーズしてら。ああいうタイプって過去のストーリーとか分かっちゃいそうで嫌なんだよな。
副隊長になったミメットは、メガネかけててテントでずっと本読んでいた。一見して女の子って感じのタイプの女だ。
何の本かわかんないけど、今もその手には本らしきものが握られてる。
「明日の討伐は街の外、北側で行う事になる
組合員の指揮に関してはエルバに任せるので皆従ってくれ」
どうやら軍の説明はたったこれだけらしい、解散の合図があり軍の連中が引き上げていくよ。
「ヘリオ」
「あぁ」
引き上げる途中、アンハイド将軍がヘリオに声をかけた。ヘリオは分かっていたかの様に返事をすると、アンハイド将軍に付いていったんだ。明日使う試作品の打ち合わせでもするんだろうか?
「みんな集まってくれ、明日の作戦についてミーティングを行う」
早速イケメンエルバが組合員を集めたよ、リーダー気質があるみたいだから適任だったな。
それから綿密な作戦が練られたんだけど、敵がどんなかも知らされてないのにどういう作戦も何もないだろうとあたしは少し思った。
「じゃぁ前衛は決まったな、次後衛だけど火力はどの位いるんだ? 精霊魔法使いは手を上げてくれ」
精霊魔法使いは2人居るらしい、ランクはそんな高くないらしいけど実力はどうなんだろ? とかランク1のあたしが言うのもおかしいか。
「わたしも火力と言う事になりますでしょうか? 純粋な精霊魔法使いではないですけど」
「ん? あぁ、ランク1の人か、何て言ったっけ?」
「クリーダ・ヴァナディンです」
「ほぉ、美しい容姿に似合う美しい名前だな
それじゃ、そこで精霊チームにまとまってくれ」
エルバの横のあの女が、ライバル意識丸出しの目でクリーダを睨んでたのがおかしかった。安心しなよクリーダは彼には関心はないと思うからさ。
クリーダは2人の精霊魔法使いの近くに座った。
「次に要のヒーラー、手を上げてくれ」
「はいーッ! クレリックのオブシディアンでぃすッ!」
エルバの横の女が陽気に手を上げた。クレリックってシンナバーのプリーストと具体的にどう違うのかわかんないけど、ああ見えても何かの神様とかを崇拝してたりするんだろうね。
他に二人のヒーラーが手を上げて、三人のヒーラーチームが作られた。
「後、残りだがミメット副隊長が召喚士で、キミは?」
エルバがあたしを見て言った。残りってあたしとミメットだけだったんだね。
「小細工魔法士だんにゃん」
「小細工? なんだそりゃ……」
その言葉に場の連中が一斉に笑った。ペッペッペッ! いつもの事さ。
「小細工じゃない、小細工魔法士だんにゃん!
あらゆる物質はあたしの味方! 味方に付けると頼もしく、敵に付けるとガッカリな万能魔法使いなのだんにゃんッ!」
「うーむ、だがその説明だと何が出来るかよくわかんないな
何でも出来る事って実は何にも出来なかったりするんだぜ? 例えば回復魔法って使えるか?」
「使えなくもないけど得意でもないんだんにゃん」
彼の言う事はごもっともだ、あたしって特に抜きん出た能力ってあったんだろうか。
「攻撃魔法は? パーティーの火力になれるのか?」
「うーん、うーん、使えるけど火力と言われると」
「召喚魔法はどう?」
ミメットが横から口を挟んだ。
「むッ!? それなら得意だんにゃん! 呼ぶんじゃなくて作り出すんだけど」
「よし、じゃぁキミ達二人で召喚士チーム作ってくれ
位置的には中衛だな、前衛のサポートだ」
結果的にチームは4つに分けられた、前衛チームが6人、あたし達召喚チームが2人、そしてクリーダの居る精霊チームが3人、オブシディアンの居るヒーラーチームが3人。
「分かれたチームで、得意不得意など話し合ってくれ
オレは精霊チームの位置に入る」
銃士は後方支援タイプのアタッカーだからそうなるだろうね、オブシディアンがかなり不満そうな顔してる、間違いなく彼女はクリーダに敵意を感じてるだろう。ホント、女ってめんどくさいよ。
「改めまして、召喚士のミメットよ
300種以上の召喚が出来ます
得意な召喚はエキドナ」
ミメット副隊長が挨拶してくれたので、あたしも慌ててお返しの挨拶をした。
「ほぇー……300種って凄いんにゃん、そんでそのドナドナって何なんだんにゃん」
「エキドナよ、魔力の続く限りけして傷付ける事の出来ないわたしの使える中では最強の召喚獣なの」
「そうなんだ、ミメットは強いんだんにゃん」
「あ、ごめんね……自慢したみたいになってるよね
あなたはどんな召喚をするの?」
「頭の中で考えたものをいろんな素材を使って作り出す感じかんにゃん?
元に命が存在してないから死なないと言う点では一緒かな、
他に乗り物を作ったり、家をリフォームしたりもするんにゃん」
「へー、小細工魔法って凄く便利なのね」
「うむ、一言で表すなら便利が適切だんにゃん
クリーダやあたしが今着てる服もあたしの魔法で作ったんにゃん」
「そうなんだ!
で、さっきから気になってたんだけど、そのミミとシッポってホンモノ? 凄く動いてるけど……」
「これも小細工魔法で作ったんだんにゃん」
「うそーッ! かわいいーッ!」
「ミメットも欲しかったら作ってあげるんにゃん」
「本当に!? 作ってぇーーーッ!」
あたしはミメットにミミとシッポを付けてあげた。ミメットは大喜びだけど、まさかミミとシッポが増えるとは思わなかったよ。
あたし達はこんな感じで、殆ど雑談だけでこのミーティングを終えてしまった。今に至って緊張感のかけらすらないのはどうなんだとも思うけど。
結局、その夜ヘリオは帰ってこなかった。
朝になり、テントの隅にはあたしが直したヘリオの剣が置かれたままになっていた。
クレリックと、プリーストは宗派で使い分けてさせて頂きました。(実際は同意とされる事が普通みたいです)
このストーリー上限定ですが、神に仕える人をプリースト。仏に仕える人をクレリックとしています。また、神様仏様と言っても、この世界のとわたし達の世界のものとは別の物と思って下さい。
わたしはハッピーエンド至上主義なのですが、色々ある全ての問題を解決して行けるかが今一番悩みどころです。
技量は全然足りてませんが、なるべくいい方向に向けて行きたいと思ってます^^;
今後ともヨロシクです(≧ω≦ )