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【45】のぼせた2人とあと1人

 お楽しみが過ぎてすっかりのぼせてしまったあたし達は縁台でへばっていた。


 あたしは縁台に仰向けに寝て、クリーダの膝枕に頭を乗せ白い雲がいくつか浮かぶ青い空と、クリーダの美しいボディーのシルエットを同時に眺めて堪能していた。


『ふー、涼しいんにゃん』

「一緒に大きなお風呂に来たのは初めてですね」

『うん、いつも小さなお風呂だんにゃん』


 ベイカにあるあたし達の家には小さいけどお風呂があるんだ。

 二人でゆっくり入れる様にもっと少し広げたくても、敷地面積の制限を受けてどうしょうもない状況なんだけどね。

 なら一人っつ入ればいいのにと思うかもしれないけど、そこで身を清めてから神聖な儀式の場へと行く重要な役割を果たしている、時間差を作らない為二人同時に清めるんだ。


「わたしはあの小さなお風呂も好きですよ、お互いの距離がとても近くなりますから」

『それはあたしも思うんにゃん』


 そう言うと、あたしの頭に軽く手を添え嬉しそうな顔で見つめた。


『ねぇ、クリーダ』

「何ですか?」

『あたし達が子供を産むのにさ、ヘリオが提供してもいいって言ってるんにゃん』

「……もうそんな事話したんですか……」

『うん、ヘリオはあたしに好意を持ってたみたいだったからハッキリさせなきゃって思ったんにゃん』

「でも……ヘリオさんは少し難しいかと思います」

『うむ? なして?』

「こういう場合、強い感情を持っていたりすると後で気が変わって色々と問題が起こるかもしれません

 あくまで提供のみで、出来れば二度と会わないのが理想なのです」

『うーん、そっかぁ』

「もし、ヘリオさんから提供を受けるとしたら、産むのはわたしの方がいいでしょう

 あなたに強い好意を寄せているヘリオさんは、その気持ちを抑えられるかわかりませんし……それに」

『それに?』

「提供を受けると言う事は、か……関係を持つ必要もありますから

 わたしにはそれをとても容認出来る気がしません……」

『わかった、あたしももっとよく考えるべきだったんにゃん』

「でも、ちゃんと考えてくれていて凄く嬉しいです」


 そして、クリーダはまたキスをしてくれた。

 のぼせたのが大分おさまってきた頃、あたしの足元の方向からドアが開く音がした。


「あ……!」


 あれ? クリーダの顔を見上げていたら何だか驚いた表情をしているぞ? 誰か入って来たみたいだけど、誰を見て驚いてるんだろ?

 あたしはヒョッコリと起き上がってドアの開く音のした方向を見てみた、そこに見たものは見たことある顔だったよ。


『なんだ、ヘリオかんにゃん』


 そして、あたしはまたクリーダの膝枕の状態に戻った。でも、すぐにヘリオがここに居る不自然さに気が付いてもう一度起き上がって確認したんだ。

 間違いなくそこに居たのはヘリオだった、あたしが想像した通り細身で整った筋肉の付いた体をしていたよ。

 だけどそこに居るヘリオは何も言わず、そして微動だもせずまるで石になったかの様にあたしをじっと見つめていたんだ。


「いけませんッ!」


 クリーダがあたしの前に立ちはだかってヘリオの視線を遮断した。その様子を見てあたし達の今の状況を把握したんだ。

 でも、あたしは裸を見られても別に何とも思わなかった。

 やっぱりあたしは男性への恋愛観念がないのだろうか、服がめくれるのはみっともないとは思っても、裸を見られるのは何とも思わないや。

 その代わり男性の体の造形には非常に興味がわいていた、ヘリオがあたしを見つめたのと同じ位、あたしもヘリオを見つめ返していたよ。


『いいよ、クリーダ

 ヘリオも固まってないでお風呂に入るんにゃん』

「あ……あぁ……」

「普通は遠慮して戻るものです」


 少し遠慮しがちに入って来たヘリオに、尚もあたしの目は釘付けになっていた。


『ふぅん、ここって混浴だったんだんにゃん』


 辺りを見渡してみるあたし、見たからと言って何がわかるもんでもないんだけどさ。


「お前知らなかったのか? 男湯と女湯のドアの外は繋がってるんだぞ?」

『知らなかったんにゃん』

「見るなよ……

 だがその様子じゃ知ってても居たんだろうけどな

 そんなに男の裸が珍しいのかねぇ?」

『だって初めて見たんだんにゃん

 だから珍しいのだ』

「は? お前……そうだったのか」

「この子の体はとても神聖なのです、なのであなたのけがれた目で汚さないで下さい」


 クリーダが不満げに口を尖らして言った。


「けがれた目とか……オレってすげぇ言われようだよな」


 そのやり取りに思わずあたしは噴出してしまった、クリーダもいつもと違って冗談を言う様な口調だったからだ。

 クリーダって冗談を言う時は、目をつむるとか口を尖らすか何かしら癖が出るんだよね。

 一見するとクールそうに見えるけど、実は物凄く直情的で物事を包み隠さない性格なんだよね。あたしはそれが分かって急にクリーダが大好きになったんだ。


『ヘリオもずいぶんお風呂早いけど、もう用事は済んだのかんにゃん?』

「ん? あぁ、後は明日を待つだけだからゆっくりと汗を流そうと思ってな」

『軍の試作品はもらって来たのかんにゃん?』

「いや、それは明日の作戦前って話だ」

『残念だんにゃん、どんなのか見たかったのに』

「まー、そん時になったら見せてやるさ」


 ヘリオがお湯に浸かったせいで、よく見えなくなった事にあたしは残念さを覚えた。

 仕方ないので湯船のへりに座り、それとなく続きを見る事にした。


「お前なぁ……神聖って言うなら……そんなジロジロ見るなよ」


 そして、それとなく作戦がまるで通用していなかったと言う。


『うん? 珍しいから見たいだけだんにゃん、そんな事男がイチイチ気にするな』

「そんなもの見ても目の毒ですよ」

「お前もそんなものとか言うな

 つーか、二人とも少しは隠すとかしたらどうなんだろうね」


 あたしはともかく、クリーダも全然気にしてないみたいだ。

 クリーダも服の露出は恥ずかしいみたいだけど、フルオープンだと気にならないんだな。ヘリオだけが恥ずかしがってるこの状況ってちょっと面白いかもしれない。


「ヘリオさん聞きましたよ、提供者になってもいいそうですね」

「お? もう話したんか?」

『あぅん』

「ただ……、ヘリオさんはこの子に強い感情を抱いてますので、提供してもらうとしたらわたしと言う事になりますが、それでも提供して頂けますか?」

「えッ!?」


 ヘリオはビックリしてクリーダの顔を見つめ、次にあたしの顔を見た。その顔にあたしは困った顔でかすかに頷くしか出来なかったよ。


「……何でだよ」

「提供して頂く以上の事は何1つして頂く訳にはいかないからです

 この子に提供して頂くとしても、その後二度と会わず全ての事を口外しないでいられますか?」

「そ……それは……」

「わたしはそうする事はあなたを不幸にするだけだと思うのです

 なので、この子に提供して頂く訳にはいかないのです」


 ヘリオは俯いたままじっと何かを考えている様だった。


「今すぐ提供して欲しいと言う話ではありません

 後何年か経って……その時にまだその気があるならばですので、今回答を急ぐ必要はありません」


 少しの間が開いた後、ヘリオが俯いたままで口を開いたよ。


「オレは……そいつにしか提供する気はない

 例え二度と会うことが出来ないとしても、誰にも言う事が出来ないとしてもそれは絶対に変わらないだろう」


 あたしには理解出来る様な出来ない様な、少しぼんやりとした話だったんだ。


いつもこんな駄文にお付き合い頂きありがとうございますm(_ _)m


この小細工魔法士って話が少し重いでしょうか?

次に書くとしたら、重さは少な目で行きたいと思います。

まだ冒頭しか考えられてませんが、短めにまとめたいです。


今後ともよろしくお願いいたちまつりまつ。

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