【44】露天風呂でなかよしんにゃん
あたし達は予定より少し遅めの昼食をとっていた。
『こ……コレが<あの肉>かんにゃん』
「見事なまでの骨付き肉ですね」
その骨付き肉はその骨を手に持ち、豪快にかぶりつくのが正式な食べ方らしい。かぶりついてワイルドに引きちぎる。
他のお客の食べ方を見ていたら、男も女もみんなそんな感じで食べていた。
『おじさん! <あの肉>って何の肉なんだんにゃん?』
すると、<あの肉>を焼いているおじさんはニヤリとして
「そりゃもちろん<あの肉>だよ」
と言ったんだ。
あぁ、やっぱり<あの肉>ね……結局何だか分からない肉な訳だ。見た目通りにメチャクチャ美味しいんだけどね。何なんだろうね。
何の肉かが分かったら<あの肉>じゃなくなっちゃうから、あえて言わないサービスなんだろうけど。
『テントに戻ったら軍に明日の事聞いてみなきゃだんにゃん』
「そうですね、戻ったら聞いてみましょう
お風呂の予定もありますし」
クリーダにとって一番のお楽しみがお風呂になった、大きなお風呂でゆっくり温まって明日に備えよう。
『そう言えばさ、組合の窓口の人はベイカから2人参加してるって言ってたんにゃん』
「一人はヘリオさんみたいですけど、もう一人は誰なのでしょうね」
『あの中にいるのかもんにゃん』
あたし達以外に10人位あのテントに居た、3~4人のパーティー組が3つ位かな?
殆どの人が朝どっかに出かけちゃったけど、どこかで明日に向けて特訓とかしてるのかもしれないな。
あたし達も朝に少しだけしたけど、あれだけじゃ足りる気がしない。特にあたしには何とかしないといけない問題がいくつもある訳だし。
食事の後、あたし達はスケジュールを確認する為に、軍のテントの前へとやって来た。
「明日の作戦までのスケジュールを確認したいのですが」
「今夜、2000に組合員のテントに集合がかかる予定だ」
『ニィマルマルマル? それは何なのだんにゃん?』
「時計の20時の事だ、その時間にテントに居てくれればいい」
『わかったんにゃん』
「質問させて頂きたいのですが、いくつかいいですか?」
「ふむ、何だ?」
「魔戦士組合員のヘリオさんが、明日の作戦でそちらの試作品を使うそうなのですが
試作品とはどう言ったものなのでしょう?」
「試作品? 私はそういった話は聞いてないので答える事が出来ない
しかし、例え軍の試作品があったとして、完成品ではないものが一般に貸し出される事は考えられんな」
「そうですか……
もう一つ、明日の作戦のターゲットである突然変異の魔物と言うのは、こうしている間にどこかに移動してしまったりしないのでしょうか?」
「それに関しては問題ないと聞いている
確実にその魔物はそこにいると言う事なのだろう
私は一年前の作戦に立ち会っていないので、魔物がどういう種のものかもわからんし、私の様な一般兵には詳細は伝えられておらんのだ」
『ふーん、つまりあんたは新米の兵隊さんって事かんにゃん?』
「まぁ、そういう事だ」
「よくわかりました、ありがとうございました」
クリーダはそう言って、軍の見張りにペコリと頭を下げた。
「さっきの話、どう思いますか?」
食後の歯磨きをしながら、クリーダがさっきの兵隊が言ってた事について聞いてきたよ。
『どうもこうもないんにゃん
一般兵に話さない秘密の武器って事は確定的明らかなのだ
それか単なる国が作ってる武器のテストで、実は軍とは別の機関みたいなのがあって、そこ経由だから兵隊は知らないって線も考えられなくもないんにゃん』
「兵器の開発は確かに軍とは別みたいですけど、真相はどうなのでしょうね」
『それにしても、何でヘリオなのかんにゃん』
「さぁ、もしかしたらわたし達が知らないだけで、他の組合員にも渡される予定なのかもしれませんよ?」
『だとしたら悔しいんにゃん、軍め……あたし達をナメやがってッ!』
「ふふ、さて……」
『うん?』
「お風呂でゆっくりしてきましょうか」
『まだ大分早いけど行くのかんにゃん』
「早い時間だからいいのですよ、今なら貸切りだと思いますから」
『おーッ! それはいい案だんにゃん!』
と言う事で、あたし達は少し早めのお風呂に向かったんだ。
お風呂屋さんはさっき行った繁華街のすぐ近くにある、大きな煙突があるからすぐ分かったんだ。
いやぁ、まだ日が沈んでいない時間からお風呂って何か贅沢でいいねぇー。
クリーダの言うとおり、まだ他のお客は来てなかったよ。予定通りにあたし達の貸切り状態だ。
「あ、待ってください」
脱衣所であたしがズバーっと服を脱ごうとしたら待ったがかかった。
『わたしがやります』
クリーダは丁寧にやさしく一枚っつ脱いではカゴに畳んで入れてくれたんだ。
そうしてもらったら、もちろんあたしもお返しをしてあげなきゃね。
番台にはおじいさんが居るけど、こういうやり取りをしてても全く気にしないのは流石だ。
お風呂屋さんの大きな湯船の奥の壁には、見たことのない美しい大きな山の絵が描いてあった。山の裾が左右に美しく広がり、その山の中腹から上にに雪が積もっている。
そして、この湯船に浸かって出た言葉はどういう訳か
『ふぅー、極楽極楽ぅ』
だった。
目を閉じてお湯に浸っていると、クリーダはあたしを自分の膝に誘導して座らせた。
クリーダはあたしの体をゆっくりとなぞっている、ズルいなぁ……この体制だとあたしはクリーダの足にしか届かないじゃないか。
あたしはすっくと立ち上がり、くるりと180度回転してクリーダと向かい合った。
『こうしないとあたしが届かないんにゃん、んむ?』
振り返った先に気になる扉を見つけた。その扉には屋外の湯って書かれているじゃないか。
これってもしかして露天風呂? あたしはピョコンと湯船から上がり、気になる扉を開けてみたよ。
そこには岩で作られた特別大きな露天風呂に、壁に大きな岩を積んで作った山奥の秘湯を思わせる雰囲気の素晴らしいフィールドが作られていたんだ。
『ほらーッ! 外にもお風呂があるんにゃん!』
あたしは大はしゃぎでそのお風呂に飛び込んだ、外の湯船は浅いからあたしが普通に座っても溺れなさそうだ。
外はほんのり風が吹いていて、お湯で火照ったらこの風で冷やす事が出来そうだな。
クリーダがあたしの前に回って座ると、またあたしを誘導して向き合う様に座らせた。
そして、向き合ったあたし達は口づけを交わすと、お互いの体に手を思うままにすべらせはじめたんだ。
ご存知の通りあの肉とは、別名マンガ肉とも言われるアレです。
大きな骨の真ん中に不自然な程に丸い肉が付いている、マンガで食べている様子はとてもおいしそうに見えますね。
ところで、ルビー・サファイヤのサファイヤが、サファイアではなくサファイヤなのかなのですが。
これは最初にどっちにするか悩んで決めたのですが、言葉の響きの印象によるものです。
勝手なイメージ的になのですが
「サファイア↓」(最後に何かが下がる気がする)と「サファイヤ↑」(最後に何かが上がる気がする)という、間違いなく気のせいだと思いますが…結果としてサファイヤになりました。手塚先生勝手なイメージですのでごめんなさい。