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【39】朝から大騒ぎさ

 早朝あたしは騒音と共に目が覚めた。


 あたしは眠い目を擦りながら一体何があったのか辺りを確認してみると、怪力ファイターのヘリオ・ブラッドが床に転がってるのが見え、その前に息を切らして立つクリーダの姿があった。



「いってぇー、散々な起こし方してくれるなぁ」

「あ、あなたはッ! あなたと言う人はッ!」


 あのクリーダが取り乱してる、一体何があったんだろ。


『朝から何やってるんにゃん?』

「これを見てください!」


 クリーダが指差したあたしの布団の隣に何故か布団が敷いてあって、掛け布団がヘリオが転がったその先に吹っ飛んでいた。


『んむー? 布団が吹っ飛んだって事かんにゃん?』

「いえ、わたしは駄洒落を言いたいのではなく、布団がそこにある事を問題にしてるのです」

「いや、だからオレは何もしてないって……

 やっと知り合いが出来て嬉しくて布団を移動して寝てただけで」

「だからって、していい事と悪い事があります」


 参ったなって顔でクリーダを見ているヘリオ、そして他の組合員もなんだなんだと言う顔で布団から起き上がってその様子を見ていた。


『まぁまぁ、ヘリオはただ寝てただけみたいだし、クリーダも少し落ち着くのだんにゃん』

「なぁ? ただ寝てただけなのにこれはないよなぁ」

「そうですか、だとしたらずいぶんと寝相が悪いですね

 この人はあなたの布団に潜り込んでいたのですよ」

『ほぇ? 潜り込んだぁ?』


 手で探ると確かに布団の右側があったかい、あたしの布団とヘリオの布団の間が約50cm。その間も手で探ってみたけど冷たいままだった。はて?


「ヘリオさんの手がわたしの手に当たって気が付いたから良かったものの、もし気が付かなかったらどういう事になっていたかと思うと」

『クリーダの手に当たったんにゃん?』


 あたしは布団の左側も探ってみた、こっちもあったかい。でもこれはいつも通りだ。


「お前もこの娘の布団に潜り込んでたんだから、寝相の悪さなら相当なもんだろ?」

「わたしの場合、寝相のせいではありま……」


 途中で何を言っているか気が付いて口篭るクリーダ。そりゃー、いつもの様にあたしを抱き枕にしてたなんて言えないもんね。


「ん? 寝相じゃないって?」

「ええと、この子の護衛の為です」

「ほー奇遇だな、実はオレも寝相は仮の姿で、本当はその娘の護衛の為だったんだ、

 お互い護衛仲間って事で仲良くしようぜ」


 ヘリオがそう言い切ってニカっと笑った直後、魔戦士組合用のテント全体が揺れた。



~~~~~~


 その後、テントの外に設置されている水の入ったタンクに付いた蛇口をひねり、水を出して顔を洗って歯も磨いていた。

 太陽の光が斜めにさして、あたし達の足元から長い影を作っている。


「ヘリオさんには気をつけて下さい、あの人あなたを狙ってますから」

『はえ? あたしを?』


 男の人に狙われてるとか言われても、あたしには全くピンと来なかった。正直それがどういう事なのかよく分からないんだ。


『でもさぁ、護衛って言ってたんにゃん』

「それはあの人の出まかせです、騙されないで下さい」

『わかった、気をつけるんにゃん』


 と言ってる視線の先をヘリオが歩いて行った、大きな剣を背負ってどこへ行くつもりだろ。


「お腹が空きましたよね、食事に行きましょうか」

『うん、軍って寝床は用意してくれても、ご飯は出してくれないんだんにゃん』


 リドナの街には朝から多くのお店が開いていた、パン屋さんもあれば食堂も酒場も開いている。


『どこにしようかんにゃん』

「朝からずいぶんと開いてるお店が多いのですね」

『やっぱ都会に近いとお店も賑わいってるのかんにゃん』


 キョロキョロお店を見ながら歩いていると、突然物凄くいい匂いがして来たよ。こ……これは……これはこれはッ!

 その匂いのする方へあたしはフラフラと歩いていった。


「どうしました?」

『この匂いってもしかして』


 タレの焦げる香ばしい匂い! パタパタと炭火をあぶる団扇の音。これはまさしくあたしの大好物のウナじゃないか!

 あ、ウナって言うのはウナギの事ね。あたしは愛しさ故にウナって呼んでるんだ。


「まさか朝からウナギですか?」

『ウナが食べたいんにゃん』


 一生懸命目でも食べたい事を訴えた、暫く食べてなかったからとにかく今はウナを食べたくてしょうがない。


「……わかりました、少しヘヴィですけどウナギにしましょう」

『わぁぃ! ひっさしぶりのウナだんにゃん!』


 注文して待ってる間、先に出された一品をちびちびと食べつつ、メインのウナが来るのをワクワクしながら待つ。

 期待がどんどん膨らんで頂点に達した頃にやって来るウナの器の蓋を、開けた時に香って来るなんとも言えない素敵な香りに酔いつつ、山椒を少し多目にかけ香りを楽しみながらご飯とウナの黄金比を緻密に計算しつつ食べてゆくんだ。


『美味しかったんにゃん! 幸せ~』


 食べ終わった時に思わず声に出しちゃった、ウナギを焼いてるおじさんがニコニコしてこっちを見てたよ。


「すっごく美味しそうに食べてましたね」

『うん、ウナは大好きだけど、ここのはすっごく美味しかったんにゃん』


 いいお店を見つけたな、朝からおいしいウナを食べれてあたしはご満悦だ。


「お昼は何を食べましょうか?」

『そうだねー、そこの”あの肉亭”ってお店がすっごく気になるんにゃん』


 あの肉亭と書かれた看板には丸々として美味しそうな骨付き肉の絵が描かれていた。よくマンガに出てくるお肉にそっくりだよ。


「あの肉……確かに気になりますが、あれも結構重そうですよね」

『それじゃ、夜は控えめにするんにゃん……』


 食後の運動を兼ねて街をぐるっと散歩してたら、通りの先にヘリオが歩いてるのを見付けた。ヘリオもどっか食事にでも行ってたのかな?


「今夜の宿、どっか取れないでしょうか」

『どうしてんにゃん?』

「お風呂にも入りたいですし……仲良くもしたいですし」

『うーん……、軍の人が使わない様にって言われた様な気がするんにゃん……』

「極力ですよ、絶対と言う訳じゃないですから」


 クリーダの提案には賛成だ、あたしも風呂には入りたいし、人目を気にせず仲良くもしたい。

 それからあたし達は宿屋の空きを探して回った、でも残念ながらどこも一杯だったんだ。あぁ……儚い夢だったね、仲良くするのは終わるまでお預けだ。

 それでも、お風呂屋さんは見つけられたんだ、大きなお風呂でまったりしようねってクリーダを何とか納得させたけど、かなりガッカリしてた。

 クリーダもやっと少しわがままが出てきたかな? あたしはもっと出してくれて構わないんだけど。


 突然変異の魔物の討伐まで後一日、この後明日の準備とかもして行かなきゃ。


ルビーさんの好物のウナの話題は、何度か登場してますが今回やっと食べれました。


おかげでうなぎが食べたくなりました、考えてみたら半年以上も食べてません。

後、お寿司も食べたいです。そういう事を考え出すとキリがないので余り考えない事にします。


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