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【34】難易度A

 魔戦士組合の掲示板には、多種多様な依頼が寄せられていた。


 依頼は難易度別に分かれていて、難易度Sを筆頭に、A~Dと言った感じで左から右へとずらりと並べられている。

 あたしは何となく難易度Sの掲示板を見ていた。流石は最高峰だけに凄そうな依頼がいっぱいだ。


 例えば、魔軍との抗争への参加ってのがあるけど、依頼してる地域と対立している魔物勢力との抗争と言うか戦争に、傭兵として期間を決めて参加するって事。

 で、魔軍って言うのはあたしたち人間と常に対立してる別の種族。

 世界のあっちこっちでその対立は起こっていて、聞いた話によると国そのものが魔軍に滅ぼされたりと言う事も実際あるらしい。

 マトラ周辺は人間の勢力が強いから魔軍は大して攻めてきてないけど、世界はマトラだけじゃないからね。


 他にもちょっとスケールが大きそうな依頼が多い、近場だけど凄いのを見付けたよ。マトラ旧市街の開放って奴。

 昔のマトラ王国の首都が化物に占拠されてるから全部倒してくれってさ。街全部とかスケールが大き過ぎるなー。



「いきなり難易度Sはちょっと危険じゃないですか?」


 あたしの後ろにいたクリーダが声をかけてきた。


『だねぇー、どんなのかと思って見てたけどやっぱ凄いや』

「もう少し経験を積んでからならやってもいいですよ」

『いんやぁ……、クリーダならやれるだろうけど、あたしには無理だと思うよ』

「そんな事ないですよ、あなたは本当はとても強いです

 今はまだそれに気がついてないだけだと思います」



 クリーダはそう言ってくれたけど、あたしが強いなんて本当なのかな?

 クリーダはあたしが好きだから気を使って言ってくれてるのかもしれないけど、あたしはもう腐る事は辞めて新しい自分に生まれ変わるつもりだから本当なら嬉しいな。



「これはお世辞でもなんでもない本当の事です

 わたしがあなたを気に入った理由の1つ、小細工魔法を気に入った理由がその強さですから」

『あたしってもっと強くなれるのかな?』

「きっとなれます

 小細工魔法は精霊魔法などとは別の系列らしく、わたしにはその原理が全く分かりません

 でも……」

『でも?』

「あなたはわたしよりも強い魔法使いです」

『えぇーーーッ! まさかーッ!』

「だからこそ、わたしはあなたを好きになったのですよ」


 その目は冗談を言っている目ではなかったよ、あたしは自分の魔法にもっと自信を持っていいんだね。

 思えばクリーダは初めてあたしを好きになった理由を話してくれたんだ、体から出てるっぽいナニカではなかったんだね。

 クリーダが両肩の上からあたしを包み込む様にしている両手に、あたしも手を重ねた。


『クリーダは難易度Aのってどう思う?』

「スフェーンさん達は難易度Aの仕事をしてましたね

 内容を選べば出来るんじゃないでしょうか? 見てみましょうか」

『うん、行ってみよぉー』


 あたし達は難易度Aの掲示板の前に移動した。

 いつくかの依頼書を見ていて、ある依頼に目を止めたんだ。


『突然変異の魔物の討伐?』

「何でしょう、突然変異って」


 丁度クリーダも見てたみたいだ、細かい字で補足が書いてある。

 リドナの街の付近で突然変異と思われる魔物が現れて、付近の通行が困難になっている退治して欲しいらしい。

 おかしいなぁ……魔物の突然変異ってどういう事? 大体魔物なんて仕様そのものが決まってない様なもんだから突然変異とかなんて分かる訳ないもんだけど。


『依頼主は……えッ!?』

「これは……」


 依頼主に書かれていたのはマトラ王国、つまりこの国からの依頼だったんだ。

 この国には軍隊が存在しているから、ある程度の規模のものは軍内部で処理されて外部に依頼する事などないはず。

 戦争を除けば考えられる理由は通常2つしかない、軍の損失との釣りあいが取れない場合か、雑用的な事に軍を使いたくないか。

 そしてこの仕事の難易度はA、つまり雑用の線は消える事になる。


『軍の手には負えないから誰か助けてって事かなぁ』

「そうみたいですね」


 軍に関わるのは嫌だけど、前の事もあるし保険を作っておきたい気もする。

 前の事ってのは、もちろん軍の最高機密のルクトイをクリーダが全滅させちゃった時の事ね。

 何日も経って未だお咎めなしだから平気だろうけど、借りを作っておけば安泰だ。

 それと少し興味もあるかな? 何をもって突然変異の魔物と言ってるのか。


『ねぇ、クリーダこの依頼って、一人っつに100万丸だって』

「やってみましょうか?

 その仕事をやり遂げれば今度こそランクアップするかもしれません」


 あたし達はまだ魔戦士組合に入って日が浅く、最低ランクの1のままなんだよね。

 一応前の仕事でランクアップ確実とか言われたけど、本当に上がるかなんて分からない。

 ある程度仕事をこなして期待値が高くなれば、それに応じてランクが上がるんだろうけど、何を基準にして期待値って決められてるんだろうか?

 ともかくあたし達はこの依頼を受ける事にしたんだ、でもね……組合窓口で聞いてみたらさ。


「突然変異の魔物の討伐……ですか?

 難易度Aになりますけど、失礼ですがあなた達のランクって……」


 窓口の係員は名簿を確認しながら少し困った様な声を出した。


「はい、二人ともランク1です」

「決まってはいませんけど、一応難易度Aは目安としてランク6以上の参加が一般的となってますが……」

「難易度Aの仕事は二回目です、問題ありません」

「分かりました

 損害等は全てが自己責任となりますので気をつけて下さい

 尚、成功報酬の100万丸は個々に対しての支払いになります、

 つまりお二人で終えた場合はそれぞれ100万丸、お1人だけで終えた場合は1人だけに100万丸の配当となります」


 これは毎回説明される事なんだけど、成功報酬以外は何も出さないよって言ってんの。

 たとえ死んでも自己責任、それがあたし達魔戦士組合員の一般常識なんだ。


「心配頂けなくても大丈夫です、ちゃんと二人分頂きます」

「あ、集合日は五日後となってますのでお急ぎ下さい」

『集合日?』

「はい、作戦決行日です

 この依頼を請けたのはあなた達二人だけでなく、他にも参加メンバーが居て既に現地に向かっているのですよ

 団体行動になりますので現地に着いたら指示に従ってください」

『そうだったんだ、何人位いるのかな?』

「ここからの参加者はあなた達の他に二名ですが、その他からの参加者も多少は居ると思います」

『多少ね……』


 ちょっとご大層な事になって来た、作戦の指示を出すのってやっぱり軍なのかな?


「えっと、こんな事言うのは良くないのですが

 実はこの依頼は二回目なのです」

『二回目って……』

「一回目は一年前で失敗してます、前回は大勢の参加があったのですが……

 もちろん前回の生還者も居ますが、皆さん今回の参加は見送られています」

『ぐふぅーーーーッ!』

「今からでも考え直せますけど……」

『うーん……』


 唸りつつクリーダの表情を窺がってみたけど、クリーダは何も言わずあたしを見てるだけだったよ。


『よしッ! 参加しよう』


 どういう表情になるかクリーダの顔を見てたけど、その顔には全く変化がなかった。

 クリーダは全然臆していないね、もし表情が曇ったら撤回するつもりだったけど……。

 と、言う事であたし達の次の仕事が決まった。


 突然変異の魔物の討伐、サブタイトルには<リベンジ>と書かれていそうなこの仕事に。


たまにはこんな依頼もどんなもんでしょう。

ルビーさんがうまく活躍出来るといいのですが、それは本人の運次第な予感。

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