【31】記念
色々あったけど、あたし達は全員無事に街に戻って来た。
途中に寄り道したせいで空は大分暗くなっていたけど、その日のうちに帰ってくることが出来て良かったよ。
そういえば一番最初にすべきのはずな、住んでる街の紹介ってしてなかったよね。本当にごめん、うっかり忘れてたんだよ。
この街の名前は”ベイカ”って言うんだ。もちろんマトラ王国の領内にある街で、首都からの距離も乗り物を使えばそんなにはかからない。
何が盛んと言う事もないけれど、平和でそこそこ活気のあるけど賑わい過ぎず、不便過ぎずと絶妙なバランスの取れたナイスな街なんだ。
ふむ、街の名前が三文字の所ばっかって事に気が付いたかな? マトラ王国の街って全部共通して三文字なんだ。
何か決まりがあるって聞いた事があるけど、詳しくはわかんない。
さて、まずは魔戦士組合に直行だ、スフェーン達は明日には帰るらしいから報酬を分配しておかないとね。
組合の受付係に書類を提出して成功報酬を受け取る。手続きはたったこれだけで終わり、そして受け取った後で受けた人数で分配するんだ。
「さて分けるよーッ! 4人だから1人25万丸ね」
うわぁ……流石は難易度Aの仕事だ。これだけあれば2ヶ月位は何もしなくても暮らせる程だよ。
この次クリーダとやる仕事は難易度Aを狙おうっと。
「あ、わたしはこの仕事を受けてないので人数に入れないで下さい」
「遠慮なんかしないの
それに4人が出会えた記念として、あたしとしても受け取って欲しいんだけどな」
「そうだよッ!? 遠慮すると逆に失礼になる事もあるんだよッ!? 逆にねッ!」
『クリーダもらって? 服も作り直さないといけないし』
今クリーダが着ている氷女の服は、スフェーンの血で染まっている。
魔戦士組合に来ていた他の組合員ですら、それを見て一瞬固まる程にね。
きっと物凄い死闘を繰り広げたんだろうって思ったかも、実際は仕事とは別の事で付いた訳だけどさ。
「わたしの服、また作ってくれますか?」
『うん、作らせてー』
「わかりました、では皆さんと出会うことが出来た記念に頂きます」
よかった、クリーダが報酬を受け取ってくれた。クリーダってちょっと頑固な所あるからもらってくれるか心配だったよ。
「そんじゃ、今日は疲れたし帰って寝るとしましょうか」
『二人とも明日は早いの?』
「うん、夜までに着きたいから夜明けと共に出発するつもり
でも見送りはいらないよぉ? この仕事してればその内にまた会えるものね」
『そか……』
「あらぁ? あたし達なら全然心配ないわよ」
「そうそう、常にあたしが付きまとってるから、おチビの入り込む隙なんてないよッ!」
『へぇ、全然心配してないけどさ』
「アハハッ! 少しはしろよーッ!」
本当に驚きだよ、こんな和んだ会話が出来るとは、出発の時には思いもよらなかったから。
「あ、そうだおチビ」
帰りがけにシンナバーがあたしを呼んだ。
『んにゃん?』
「これ渡しとくね」
シンナバーが小さい袋をあたしに差し出した、袋の中を見るとコロコロとした白い玉がいくつも入ってる。
『これって何?』
「あたしの再生魔法を閉じ込めたカプセルだよ
大好きな人はちゃんと守ってあげなきゃね」
『うん、ありがとうッ!』
「少なくなったら取りに来るんだよ
料金はいつも通り、おチビの体でいいからねッ!」
「アハッ! あたしへのお土産も同じのでいいよー」
『あは……は……』
本気なのか冗談なのか分かんないけど、そう言ってあの二人はまたいつもみたいに爆笑しながら帰って行ったんだ。
二人を見送った後、すっかり暗くなった星空の下、またあたしとクリーダだけになった。
「シンナバーさんともしましたね、顔が赤くなってたので分かりました」
『あ……え!? えぇッ!?』
「やっぱり……したんですか」
クリーダは両手を頭にあて、苦悩の表情をして身悶えた。
へー、クリーダってそんな動きもするんだ。あたしはそれがとてもかわいく見えたよ。
『だってね……スフェーンの興味ある事を知りたいからって
あたしだって抵抗したけど麻痺の魔法かけられちゃって動けなかったんだもん……』
「正直に全部話して下さい」
クリーダは困った表情をして、あたしをじっと見つめた。
そんな顔されちゃ話すしか……。しょうがない、あたしは乗り物の中であった事を全てクリーダに話してあげたよ。
「わかりました
シンナバーさんの想いはスフェーンさんに向けられたものですし許してあげます」
『ふぅー……よかったぁー』
「でも罰として……」
あたしはその罰として、クリーダと夜遅くまで仲良くする事になったんだ。
たまに複線がつぶされているのは全て偶然だったりします。
みじん程には考えてますけど、ほぼ偶然でつぶれるのってどんな行き当たりばったりなんでしょうね><
そして、小細工魔法士ルビー・サファイヤはいまだ完成しません。
はたして完成するのかすら怪しくなって来ました。
と、いう事でもう少しお付き合い下さいm(_ _)m