【30】確信
1発ネタ的なものから始まったこのシリーズなのですが、まさか30話まで続くとは思いませんでした。
相変わらず進歩しないヘッポコさ満点ですが、今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
平原に現れた巨大な火の玉は大爆発を起こした。
何だあの爆発は!? あたしの思っていた魔法のスケールを遥かに超えているじゃないかッ!
まぁ、あたしの想像してい攻撃魔法なんて「そりゃーっ!」って、火の玉とかを飛ばす程度だったんだけどさ。
それが、天変地異か!? 隕石の衝突か!? って位の、もはや現象と呼ぶスケールの事が起こった訳で、それに比べたらあたしの魔法って何てみみっちいんだとまた落ち込みそうだ。
平原の彼方に雲が空高く立ち昇っているのが見え、あたし達の乗った乗り物はそれに向かって走っている。
少し進んだところから地面は灰になった草が舞うだけになって来た。
爆発の熱が地面に残っているみたいで、乗り物の中にもその熱は伝わってきてかなり劣悪な環境の空間と化している。
「だめだ……これ以上は熱くて進めないよ」
遠くの地面が蜃気楼の様に歪んで見える、こんな状態であの二人は大丈夫なのだろうか。
あれをクリーダが使ったとしたら、きっとクリーダは無事なんだろう。
でも使われたスフェーンは? しつこい様だけどあたしがスフェーンを嫌いとは言っても、彼女の命まで否定はしていない。
スフェーンが真剣だったのは分かるし、取った行動だって理解出来るから。
隣に居るシンナバーの顔は少しの余裕もなく、そして少し震えていた。
『あ、雨』
いつの間にか空に雨雲がかかり、爆発があった方向は白くぼやけ見える。
どうやら爆発のあった中心地で大雨が降っているみたいだ、でもあの水蒸気はきっと地面に落ちた雨が瞬間的に蒸発してるんだろう。あたしはある程度の覚悟はすべきだと思ったよ。
少しして、やっと水蒸気がおさまって来た。雨はどんどん地面を冷やしてくれてるからきっと先に進めるだろう。
『シンナバー、先に進もう』
そう言って、あたしは伏せっていたシンナバーの頭をやさしく撫でてあげた。
そして、あたし達は二人を探しながら雨の中を乗り物で走ったんだ。そろそろ爆発のあった中心に近いのかな? 地面が著しく溶解してまっ白になっている所に入ったよ。
「あッ! あ、あれッ!」
シンナバーがいきなり大きな声を上げ指をさした。その指した方向に見えたもの。
それは、まさにあの二人が最後の衝突をした瞬間だったよ。
あたしとシンナバーは、乗り物から飛び出し地面に倒れた影に走り寄ったんだ。
そこには、仰向けに倒れたクリーダと、変わり果てた姿のスフェーンが居た。
「バカァァァァァァーーーーッ!!」
シンナバーは大声を出して駆け寄ると、スフェーンを抱きしめて泣いていた。
「ハハッ、泣くなよ……シンナバー」
「泣くに決まってるじゃないッ! いつも心配させて……うぅ」
「そうだったわね、ごめんね」
そう言ってスフェーンはシンナバーの髪を撫でてあげてた。
「シンナバーに教えてもらった、片手棍二刀流が……最後に役に立ったよ」
「うん、見てた……よくやったね」
「ねぇ、シンナバー
あたしは勝ったのかな……それともこんなになっちゃったし、やっぱ負け……か……な」
その声は徐々にか細い声になって行った。スフェーンはこの戦いで体の半分を失ってしまっていたんだ。
あたしはクリーダの鼓動を耳で確認しながら、ずっと二人を見つめていたよ。
~~~~~~
『クリーダ?』
「ここは……」
『気が付いた? ここは乗り物の中だよ
大丈夫? 寒くない?』
雨に濡れて冷えたクリーダの体を、あたしはずっと温めてあげていたんだ。
「大丈夫です、とても温かいです」
ニッコリと微笑むクリーダを、あたしはしっかりと抱きしめた。
「へくちッ!」
「あッ! こっちも起きたよッ!」
「ん……あらぁ? シンナバーじゃなーい? 久しぶりぃーッ!」
「コラーッ! 全然久しぶりなんかじゃないよッ!
特にこれからは常に密着取材させてもらうから覚悟するんだよッ!」
「アハハッ! 楽しみだー」
あの二人とても楽しそうだなぁ、いつまでも幸せであります様にってお婆ちゃんに祈ったよ。
「ねー、シンナバー」
「なに?」
「あたしの足ってこんなだったっけー?」
「え? 紛れもなくそんなだったと思うけど?」
半身だけになったスフェーンは、あれからすぐにシンナバーによって再生が施されていたんだ。
再生は高位の聖職者が使える魔法で、一般に言うヒーリングとはまた別のものらしい。
本人の回復力を使う事が出来ない場合や、著しく欠損してしまった場合の処置で、細胞の設計図を使ってそれらを修復させるんだってさ。あたしにはよく分かんないけど。
再生する時間に耐える事が出来れば復活出来るらしいけど、多くのクラスがあれどそんな神がかり的な事が出来るのって聖職者位だろうね。
でもね、スフェーンは本当にギリギリだったのかもしれない。神様を信じてないって言ってたシンナバーが、ずっと神様に祈ってたのをあたしは見てしまったから。
ほら、シンナバーはにっこりしながら目から流れる涙をぬぐってるよ。
『あたしも確かそんなだったと思うな』
「わたしもそう思います」
「えーーッ!? もっとこう何ていうかさ……」
どうやらスフェーンのケジメはちゃんと付けられたみたいだね、乗り物の屋根にくくりつけた洗濯物のバタバタと風に靡く音が妙に清々しかった。
もうみんな大丈夫、この時あたしはそう確信したんだ。