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【26】ストライカー 2/2

「ストライカー」の主人公は精霊魔法使いのスフェーンです。


 あたしは戦いを挑んだクリーダに、手も足も出せずにいた。


 6つの魔法を同時にキャンセルしてくるって一体何なのッ!?

 そもそも、魔法をキャンセルされた事なんて今までなかったのに。

 くぅ……考えててもしょうがないかーッ! もう一度試してみよう。今度は位置を変えての連続展開……!



 あたしはクリーダの周囲に魔法を展開し続けた、やっぱり次々とキャンセルされていく。


『やるねぇー! これだけ高速に展開しても全部キャンセルされるって驚くよーッ!』

「……ありがとうございます」



 あらぁ? 憶測だけど結構必死だったりしてくれてるのかなぁー? プラズマも全然撃たなくなちゃったし。


『クリーダ? 7x12っていくつ?』

「……84です」


 ほらッ、少し遅れ出したんじゃなーい? つまりはあたしと魔法速度はほぼ同じって事ね。

 んじゃぁ、ちょっとアレを試してみようかしら。


『あたしの魔法の展開速度って実はこんなもんじゃないのよねぇ

 展開する魔法を同時に複数コピーして別のところにも作れるんだけど、試してもいいかしら?』

「……ッ!」

『展開させる魔法のコピーを2つ、位置はランダムにッ!』



 そしたらねー、今までは視覚に現れる事のなかった魔法の断片が少しずつ現れ始めたの。

 その数秒後、クリーダの周囲のいくつかの魔法が成功して発動していったわ。

 たまらず後ろに飛んで回避するクリーダたん。

 あらぁ? ちょっとさっきと表情変わったんじゃなーい?



「流石ですね」

『まー、これでやっと勝負になる様になったってとこかもね』


 今まで涼しかった表情に、少し人間らしさが現れたかなぁ?

 手を後ろに回して立っているクリーダの余裕さがちょっと気になる所だけど。

 後ろに手を隠していたクリーダが、その手を前に指し出した。



『あら、あなたなに持ってるの?』

「精霊魔法を核とした、最終的に核融合に至る光の玉です」

『……かく? ゆうごう?』


 クリーダってたまに意味の分からない事を言うのよねぇ。


「わたしのとっておきです、スフェーンさんにプレゼントします」

『いらんわーーーッ!!』



 クリーダがあたしに向かってふわりっと放り投げた光の玉が、空中で物凄い勢いで膨張し始めたよ。

 あたしがいるとこが着地候補だから、少し距離とって避けたら地面に落ちたけど……これってきっとただ事じゃないよねぇ。

 見る見るうちに数十メートルの大きさに膨れ上がってた。


『えっとークリーダは?』


 あらら、遠くの方に点になって見えるのがそうかも。これはあたしも逃げないと……。

 そう思ってる間に巨大な火の玉は真っ赤に変色し、殆ど大きさの変化が見られない状態になって行った。


『うひ……?』


 その時、光の玉の天井が崩れ始めたのが見えた。


『こ……これは……ッ! 巨大な爆弾なんじゃないかーーーッ!?』


 だとしたら、絶望的な熱と衝撃波が発生するんだろうね、威力はあの乗り物との距離で大体分かるから。

 あたしはこの状況を打開する方法を、頭の中をひっくり返す勢いで探してみた、そしたらたった1つだけ方法を見つけたの。


 それは、土と水と氷の魔法を組み合わせ、特定の工程を得る事で引き起こせるあの現象……!



『さぁッ! どっちが強いかしっかり見てなさいッ!』


 だけどそれがうまくいくかどうか分からなかった、何しろあたしの周囲全てを隙間無く覆う必要があるかなーり難易度が高い方法だから。

 同時に最低でも4つ、つまり三角錐の形で展開させなければならない、少しでも隙間が空いていたらまず助からないだろうーねぇ。



 巨大な火の玉に閃光が走ったその瞬間、あたしは周囲全てにあの現象を発動させた。


 あたしの足元の地面が蒸発する様に消えて行く……成功だ! 後は風で姿勢を制御しつつ最後まで耐えるのみ。

 4つも同時展開してるからかなりの魔力を消費するなぁ、最後まで魔力はもってくれるかなぁ。

 展開した現象はギリギリの所でもっている様だ、周囲がゆがんでギシギシと音を立てている。



 どれだけの時間が経過したろうか、あたしは何とか無事でいられている。


『んぅ……? 雨が降ってきたのかしら』


 辺りのゆがみから外の様子を伺うと、周りは真っ白でどうも大雨が降っている気配もする。

 真っ白なのは凄い勢いで水蒸気が立ち上っているかららしい、今解いたら一気に蒸されておいしい料理になってしまうだろうなぁ。

 大雨が辺りの大地を冷ましてくれて助かった、水蒸気が落ち着いたのを見計らってあたしは恐る恐る周囲に展開した現象を解除してみた。


 あたしの使ったあの現象、土と水と氷の魔法を組み合わせ、いくつもの工程を得てやっと引き起こせる重力波を更に加速させ、別の次元の膜を開くというもの。

 研究しておいて使い所に困ってたけど、こんな場合に役に立つものだとはね。


『生暖かい雨だねぇ、シャワーにさせてもらおうかしら』


 あたしは髪を解いて、気持ちいいシャワーを浴びた。

 辺りは最初から何もない原っぱだったけど、更に何もない焼けた地面だけになっちゃった。目標物だったあの木もないよ。



「まさかとは思いますが……、そこに居るのはスフェーンさんですか?」



 声がする方向を見ると、そこにクリーダが信じられないって顔して立っていたよ。

 目を丸くして口を半開きにして、珍しいものでも見る様な顔ね。いいじゃない、そういう顔って見るの大好き。



『あらぁ? 戻って来たのぉ?』

「ずっとそこに居たのですか?」

『うん、そうだけど?』

「4億度です」

『はい?』

「あの爆発の中心温度は4億度もあるのですよ」

『ふぅん、そうなの、為になる事いうのねぇ』

「クッ……」


 アハッ! いいねーいいねー! クリーダったらすっごい悔しそうだよぉ!

 多分さっきのがクリーダの最強の魔法なんだろうね、それをあたしが耐えたもんだから精神的に相当なダメージ受けたんじゃなーい?


『まだ決着付いてないよね、さっ続きしましょ』

「……そうですね」


 ふっ、クリーダの目つきがまた変わったよ。戦闘態勢に入った目だ。

 といっても、あたしの魔力もあんまり残ってないから長期戦にならない様に決着を付けさせてもらわないと。

 あたしは解いたリボンをまた結び直した。


 お互いの目で合図をすると、あたしはまた魔法同時展開を……って思ったけど3つしか出なくなってる。でもキャンセルされずに展開されてるじゃない!

 あらぁ? たった3つの魔法をキャンセルしないんだ。それとももう出来ないのかしら?

 それをクリーダは避けずにプラズマでなぎ払ってた、プラズマもかなり小さくなってるから、彼女の魔力ももう残り少ないみたいね。

 あたしも後いくつも出せないみたいだから、もう今までの戦法は使えないね。


 しょうがないかー、最後はこれで決めさせてもらおうかな?

 あたしが取り出したのは、昔シンナバーに貰った片手棍二刀流。魔法が使えなくなった時の為にってくれたんだ。


『風よッ!』


 あたしは風を纏い、一瞬でクリーダとの間を詰めた。クリーダはもちろんプラズマの構えをしている、それも予想通り。

 だからあたしは軽くジャンプして上に交わすッ! クリーダの目の前であたしは思い切り地面を蹴った……うッ!? 今何かおかしな踏み応えがしたーッ!


 うひぁッ!? 地面がぬかるんでるせいで滑ったんだァァーーッ!?

 急いで風で補正したけど角度が付かない……クリーダの手に紫色のきらめきが収縮しているのが見える!


『さっきのお返し、足はプレゼント』


 そして、クリーダのプラズマが発動すると、一瞬で足の感覚が消えてしまった。

 あぁ……さらばあたしの美しい足。記憶ってものは美化されるもんなんだ。


 あたしは風を棍棒に纏わせ、片手棍二刀流による連続コンボを思いっきり叩き込んでやった。

 この連続コンボもシンナバーから教わったんだっけね。シンナバーって最後の最後で一番頼りになる奴だよ。


 しかし誤算、クリーダは吹っ飛びながらもプラズマを撃ち続けていたの。

 徐々に落下するあたしは、プラズマによってどんどん削られちゃった。


『き……消えるぅーーーーッ!』


 その時やっと、プラズマの放射が止まりあたしは地面に転がり、仰向けに倒れたクリーダの上に乗っかった。

 どうやらクリーダは気絶したみたいね、もう起き上がる事はなかったよ。

 辺りはすっかり静まり返っていた、もう雨は止んだみたいだね。


『ふぅ……終わったー』


 立ち上がろうとして、そうだった足は無かったんだって事を思い出したけど、やけに地面との距離が近いなと思っておなかの辺りを覗き込んだら、信じられないものを見てしまった……。


 それはとても表現出来るものじゃなかったから、あえて言わないでおくね。


※くれぐれも放射能はナシと言うご都合主義な方向でお願いします。

次回の視点はルビーさんに戻ります。


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