【18】意外な言葉
段々と本性を現してきたスフェーンに、あたしは夜になるのが今から恐ろしかった。
今になっても彼女があたしに執着する理由がわからない。
明らかに元クラスメートに対してって感じじゃないし、ただのいじめの対象って訳でもない。
スフェーンがあたしに興味ある様な事をよく言ってるけど、それは話のネタなんだろうし、もし本当にそうならもっと大事にしてくれるはずなんだ。さっきみたいな事なんてするはずないんだ。
スフェーンは魔法学校の時だって、いつだってあたしが嫌がる事してはシンナバーと笑ってた。それをあたしはずっと我慢してたんだ。
彼女の事は今もやっぱ大嫌いだけど、それはそれで気になる所でもある。
それでさっき言ってた様に、あたし達は今夜の宿探しをしてたんだけど、今あたし達はナボラで一番大きなホテルの前に立っている。
こんな豪華なホテルは魔戦士組合の仕事で絶対泊まる必要性はないだろう。スフェーンは一体どういうつもりなんだろうか?
「スフェーン!? まさかこんな高そうな所にするの?」
この清楚な街にはちょっと似合わない感じなホテルだけど、大きな街から偉い人が来た時の為なのかな?
「今回は特別にね」
「ふぅん、いつもすっごい安い所しか泊まらないのにねー?」
そして、シンナバーはニヤリっとあたしを見た。別にあたしは何の期待もしてないよ、どうせあたしだけが待遇悪い事位は分ってるさ。
「ひっどぉーいッ!」
でもそう叫んだのはシンナバーだった。
「スフェーンとおチビがロイヤルで、なんであたしがフツーな訳!?
ひいきだひいきだーッ! 格差社会だッ! 訴えてやるッ!!」
「しょうがないでしょー? 2人部屋がロイヤルしかなかったんだから
料金も少し安くしてくれるって言うし、シングル3つと料金も変わらないんだから」
「なんちゃってねッ! 後で遊びに行くから入れてよー?
じゃないとピンチになってもギリギリまで回復してあげないからッ!」
ふむ、あたしがまさかロイヤルに入れるなんて思わなかったな。
こういう場合、絶対逆になるもんなんだけどね。
「それじゃぁーねッ! 夕飯の時間になったら行くからねッ! モタモタしてるんじゃないよッ!?」
シンナバーだけシングルの部屋へ向かい、あたしとスフェーンは1つ上の階のロイヤルに上がって行った。
何か、二人きりになったら急にスフェーンの表情が優しくなった気がしたんだけど気のせいかな?
「さっすがロイヤル……大きなドアだー、入ろーッ!」
『う、うん』
スフェーンはあたしの手をとると引っ張るように、ロイヤルらしさ満点の立派なドアの先へと進んだ。
ロイヤルはいきなりベッドルームがある普通の部屋と違って、シャンデリアのある応接間や、更に個室まであって室内の装飾も流石ロイヤルと言える妥協のない豪華さだ。
「ほらーッ! おチビたん見てごらんよッ!」
スフェーンが奥で大きな声を出してあたしを呼んだので行って見ると、そこには大理石で作られた泳げる程大きなお風呂があった。
なんとお湯が何かの動物みたいな彫刻の口から注がれていて、いつでも入れる様に浴槽にお湯が満たされているじゃないか。
『うっわぁーッ! お風呂が大きいッ!』
「でしょー? やっぱりロイヤルでよかったよねー」
そう言いながら、スフェーンはあたしのローブをほどき始めた。
『え……? ちょっと……もぅ?』
「モタモタしてたらシンナバーが来ちゃうよ? その前にお風呂に入っちゃおうよ」
『あぅん、でも自分でやるから』
「いいの、あたしがしたいんだから」
その時あたしはハッとした、ある事を思い出したんだ。
あたしの体にはクリーダが付けた印がいくつもついている、このままだとそれらをスフェーンに見られてしまう。
もし見られたりでもしたらきっと永遠にネタにされる事だろう、クリーダとの事を馬鹿にされたりネタにされる事だけは絶対に嫌だ。
『あ、あの……お願いが』
「うん、なーに?」
『灯り、もっと暗くしていいかな?』
「えーッ? なんでよ」
『何か恥ずかしくて』
「おかしい事言うのね、まぁいいけど」
あたしは灯りの数を減らして暗くした、歩ける程度の灯りだけを残してね。
ゆらゆらと心細い灯りがあたし達を照らしている、辺りにはお湯の流れ出る音だけがしていた。
「暗いなぁー、でもちょっといい雰囲気よね」
スフェーンはバサッと一気にあたしのローブを剥ぎ取った。
「なんだ、綺麗じゃない? 別に隠す必要なんてないのに変な子だよね」
スフェーンはゆっくり両手であたしの髪と、そして両肩を撫でた。
ホッ、気がついてないみたいだ。
「今度はあたしのもお願いね」
そう言われても全く気はすすまないけど、仕方ないからスフェーンの服をほどいてあげた。
全てほどいてあげるとスフェーンは、嬉しそうな顔をしてあたしの肩を押して奥へと誘ったんだ。
「ほら、おチビたんも入りなよ」
先に浴槽に入ったスフェーンは、傍らに立つあたしに入るように手招きした。
それであたしが入ったら、
「おチビたんッ!」
『うひゃッ!?』
スフェーンはあたしの両手を掴んで引き寄せると自分の膝の上に座らせた。
『スフェーン?』
「あぁもぉ、おチビたん大好きッ!」
スフェーンはあたしを思い切りギュッとし、こんな思いも寄らない事を言ったんだ。