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【17】聖職者の街ナボラ

 お昼を少し回った頃、あたし達はナボラ湖に到着した。

 ナボラ湖は美しい水を湛え、全ての物音を吸い込んでるかの様にとても静かだ。

 スフェーンとシンナバーは途中からずっと寝てくれてたよ、そのお陰で少しの間だけど平和でいられた。


「んー! やっぱり湖の辺りは空気がおいしいねーッ!」

「それよりお腹すいたーッ!」

「シンナバーっていつでも腹ペコだよねぇ

 しょうがないなぁー、確かここにはあの街があったよね、行ってみるかーッ!」


 あの街はナボラ湖に面し、名をそのままナボラと言う。

 ナボラには街の中央に大きくてすっごく奇麗な教会があるんだ。

 ナントその教会を中心として十字に道が伸びてるの、つまり街全体が十字架になっててそれが結界になってるって話。

 そんな街だから街の住民の多くは聖職者、正確には聖職者が集まってくるのかな?

 シンナバーみたいなのはまずいないと思うよ、みんな殺生は絶対しませんって感じでつつましやかに歩いてるからね。


「あらー? こんな街にもダック・ドナルドとかあるんだ」

「うそーッ! まさかまさかだねッ! あっちになんてセンタッキーもあるじゃない!」

「他にどんなのがあるのかしら、ちょっと見て歩こうよ」

「あッーーーッ! みてみてーッ!? シスタードーナツの本店だってーッ!」

「決めた、シスドにしよう!」


 シスタードーナツは、この街のシスター達が巡業する聖職者の為にお店を作ったのがはじまりらしい。

 聖職者は基本的にお肉は食べないから、普通のお店には入りにくいかららしいよ。

 それが大ヒットしてチェーン店が今やどこの街にもある位になっているんだ。スイーツ大好きなあたしはもちろんシスドは常連だよ。

 因みに、シンナバーはいつもモリモリお肉食べてたけど、菜食主義になれば毒気も薄れるんじゃないかとあたしは思ってる。


 そして、あたし達はいっぱいドーナツを買い込んだ、丁度モキナワドーナツっていうのも売ってたからそれも買い込んだよ。


「ちょっとー! これって買いすぎたんじゃないのー?」

「やっぱお腹すいてる時に買うもんじゃないよねぇ

 残ったらおチビのエサにでもするしかないかぁ」


 大きな袋いっぱいに入ったドーナツを見て二人が言ってた。

 望むところだ、正直言ってこの程度のドーナツなんてあたしは何ともないからね。ホントにドーナツで良かったよ。

 教会の周りは奇麗な広場になっていて、広場には噴水まである。

 その噴水の近くのベンチに腰掛け、あたし達はドーナツを食べたんだ。


「おチビたん、おチビたん」

『なぁに? スフェーン』


 スフェーンがあごでクイッと示した方向に、ちょっとしたイケメン男子がベンチに座っていた。


「このドーナツあの人にもあげてきなよ」

『えーッ! なんで?』

「プッ、そしてこう言うんだよ『あたしとドーナツ食べませんか?』って

 両方食べるかって意味が含まれているんだけどねッ!」

「アハハハハハッ! あたしの思ってた事よくわかったねーッ!」

「そりゃー、スフェーンとはながーいお付き合いですもの

 当然カップルって言う意味は含まれてないけど?」

『やだよー、知らない人じゃない』

「おチビたんももう年頃なんだし、ああいう人ともお付き合いした方がいいんじゃないの?」

「あたし達はいつでもおチビの味方なんだからね!

 べ、別に面白がってなんかいないんだから!」

「なにその変なツンデレ!」


 あたしの方を見てスフェーンの目つきが変わった。


「おチビたん? ……さっさといってこい」

『うぅ……』


 あぁついに始まったか……。

 スフェーンはいつもこうなんだ、あたしの嫌がる事を無理やりさせてその反応を見て笑うんだよ。

 あたしはしょうがなく、ベンチに座ってるイケメン男子の前に立った。

 イケメン男子は既にビックリした様な顔してるよ、うぅ……帰りたい。


『あの……、あ、あたしとドーナツ……食べませんか?』

「!? いや……結構」


 すっごい嫌そうな顔された、でもこれで引き下がったらもっと酷い目に遭わせられる。


『お願いしますッ!』

「オレ……ドーナツ嫌いなんだよな」


 しつこく頭を下げて頼み込んで、やっとドーナツ食べてもらえた。

 イケメン男子は涙を流してるあたしを見てとっても困ってたよ。絶対変な人だと思われたろうな。

 スフェーンとシンナバーの所に戻ったら、二人が大爆笑してた。


「良かったねーッ! 食べてもらえたじゃんッ!」

「おチビは売れ残ったみたいだけど?」

「そっか、かわいそーなおチビたんだぁ」

「男性は本能的に、元気な子を産みそうな女を選ぶんだからしょうがないんだよ」


 全く言いたい放題だね。


「さて、今夜の宿を探そっかーッ!」

『仕事は?』

「そんなの明日明日! 今日は街を見物して散歩してー」

「スフェーンはおチビとごにょごにょしたりしなかったりするんだねッ!」

「えぇーッ!? 変な事言わないでよ

 するに決まってるじゃないッ! アハハハハーーーッ!」

「なぁーにぃ? 今日はどんな手口でぇ?」

「そうだねぇー……ってッ! 手口言うなッ!」

「楽しみーッ!

 明日の朝ナボラ湖におチビが浮かんでたら犯人はお前だッ! ってスフェーンを指差してキメ台詞を言うからね!」

「ぶッ! なにその簡単すぎるサスペンス!」


 この二人のネタ会話では、昔からあたしはバッドエンドを迎える。

 今回の仕事がとにかく無事に終わる事だけを願って止まない。


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