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【11】口封じ

 軍の最高機密であるルクトイを見てしまったあたし達は、あろう事か軍に捕まってしまった。


 兵隊達に捕まる前に反撃しても良かったんだけど、何たって相手が軍だからねぇ。

 将軍を人質にするとかして逃げられたとしても、それじゃこの国には住めなくなっちゃうし、初仕事は絶対やり遂げたかったから大人しくしてたんだ。

 それで、相手の様子を見ようと思ってたんだけど、取り押さえられたのは麻酔を打つ為だったらしい。


 さて困ったぞー、体は麻酔で全く動かないし、あの変な2人にどっか連れて行かれてるし。


 どこに連れて行くつもりだんにゃん? って言ったつもりが、


『ろこりるれれるくるもりらなん』


 うぐぅ……うまく喋れないじゃないか。

 あたしを抱えてる変な男が「ふん」と言ってにやりとした。


 ひぃぃぃぃーーーッ!! こえぇぇぇぇよぉぉぉーーーーッ!!


『ろらーーーーぁ……あらへぇー(コラー! 離せーッ!)』

「「ククククク……」」


 見た感じも動きも全てがキモいけど、笑い方も極めてキモいなぁ。

 クククなんて笑う奴もマンガ以外で初めて見たよ。


 それから、あたし達はテントの奥のどこかの部屋に運ばれた。

 テーブルの上らしき所にクリーダと並べられて仰向けに寝かされたんだ。

 それを変な2人が両脇から腕を組んでニヤニヤして眺めてる。


 変な男は軍服をすっごい几帳面に着ててね、すっごい真面目そうなんだけど、何がおかしいって表情が不味くて顔がやけにデカい。

 そんで、たまにちょっと頭イッちゃった様な表情をするんだ。コイツ等絶対まともじゃないよ!

 こんなのが……しかも2人も軍にいる事が一番の問題じゃないのか?


「「あんた達ってアレでしょ?」」


 んむ? 何だぁ? コイツ等さっきと口調が変わったぞ?


『あれれにゃんら(アレってナンダ)?』

「「隠したってムダよッ! 分かっちゃうんだからッ! ねーッ!」」


 ねーッって……見事なシンクロぶりだけど、何が分かるっていうんだ。


「「ウフフ……好き同士なんでしょー?」」


 うっわー、口調変わったら更にキモさがパワーアップしたよ。岩みたいな顔でその口調か!

 しかし何でわかるんだろうなー、別にわかってもいいんだけど何でかは気になる。


「「何で分かるんだろうって思った? 思ったんでしょぉーッ!」」


 ちょ、、あたしがよく使う繰り返し使うな。


「「それはね、あたし達も同じだからよ」」


 キモい2人は岩みたいな顔をくしゃっとさせて、2人でハイタッチしてたよ。

 つーか、どこが同じなんだーーーッ? あたしが許せるのはイケメンのカップリングのみだぞッ!

 もし1つ条例を作る事が出来るなら、岩同士のカップリングは永遠に禁止にしたい。


「「それじゃーねぇ、いい事してあげる」」


 そう言ってキモい2人は麻酔で動かない、あたしとクリーダの手を繋げたんだ。

 麻酔してて手は動かないけど、感触は分かるんだね。クリーダの手はやわらかくてとってもあったかい。


「「ウフッ、あなた達は幸せよー?

  大好きな相手と手を繋いだまま死ねるんだから」」


 ん……? えぇぇッ? 今コイツ等って「死ねる」って言った気がしたんだけど、それってどういう事なんだ!?


 更によく見るとキモい2人があたし達の足元で何かやってる、足に少し感覚がするんだけど一体何してるんだろう。

 そして何かをキュッと縛る様な音がした、そうかテーブルに縛り付けてるんだな。

 次に膝の辺りを縛ると、徐々に上半身に上がって来た。

 感覚が鈍いからよく分からないけど、かなりギュッと縛られている感じだ。どっちみち動けないんだけどね。


『まっら、まれんりふみあいりれんらるしる(待った、魔戦士組合に連絡しろ)』

「「ふーん、死ぬと分かったらとたんに必死ね

  魔戦士組合って言ったの? それなら大丈夫よ、あそこは出入りが激しいんだから

  出先で行方不明になる組合員なんて珍しくはないのよ」」


 そう、魔戦士組合の報酬は高額だけど、命の保障は全くない。全て自己管理、そして自己責任なんだ。

 これは最高機密であるルクトイの口封じって訳か、軍事裁判なんてせずに始末するって事だね。

 冗談じゃないぞーーーッ! あたしはこんな所で人生終える気なんて全くないんだッ!


『うぁーーー……いやらーーーー……(うわーッ! イヤだーッ!)』

「「さぁ、おチビのネコさんももう諦めなさい

  もう1人の娘はとっくに諦めてるわよ?」」


 あたしはずっとクリーダが黙ってるのが不思議だった。

 まさか諦めたとも思えないんだけど、何でずっと黙ってるんだろう?

 クリーダは目だけこっちに向けて、ただずっと黙っていた。


「「よしコイツ等を運び出せ」」


 キモい2人の口調は元に戻っている、兵士を使ってあたし達を外に運び出す様だ。

 呼ばれて入ってきた兵士は、さっき将軍の元に案内してくれた隊長とその部下だったよ。

 あたしはもう後がないと思い、隊長達に一生懸命訴えていた。


「「りりたくらいぉーらるれれぉー(死にたくないよーッ! 助けてよーッ!)」」


 あたしは完全に素に戻ってる、でもどうしょうもないんだから。

 隊長達は一度もあたしと目を合わさなかった、でも隊長が一言小さな声でこう言ったんだ。


「……すまない」


 うん、それは分かってるよ。


 それからのあたしは、運ばれてる間ずっと泣いてたんだ。

 そして兵隊達の横を通り過ぎる度に必死に訴えかけた、無駄だと分かってたけどそうするしかなかった。

 彼等は首を動かさずともその目は悲痛をあらわにしていた、この状況って本当にどうしようもないんだな。

 さすがのあたしも段々諦めを感じて来た頃、クリーダがあたしの手をキュッと握ってくれた。

 そっか、あたしは一人じゃないんだ、クリーダと一緒ならまぁいっかな。


 あたし達はルクトイのまん前に板ごと設置された。

 最後はルクトイの主砲か、それなら一瞬だからきっと苦しむ事はないだろうな。

 そう思って虚ろになった目でルクトイの主砲を見つめた。

 遠く離れたテントの前に、サルファー将軍とあのキモい2人、そして多くの兵士が並んでこちらを見ているのが見える。

 なんだ、結構人がいたんじゃないか、今までどこに隠れていたんだか。


 もうクリーダだけを見ていよう、一番最後までずっと見ていよう。


『ふいーら……るっろいっほらお(クリーダ、ずっと一緒だよ)』


 その言葉に、クリーダは微笑んでくれたんだ。


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