【1】最初の出会い
その日、あたしはマトラ王国の魔戦士組合に来ていたんだ。
この組合には魔法使いや剣士などが登録してて、登録した人達は国が対応しないと~ってもやっかいな仕事をするらしい。
その仕事の報酬はかなり高額なんだけど、完全成功報酬制だから成功しないとお金はもらえない。
それにしても、、うーん……結構人がいっぱいいるもんなんだなぁ。
見渡す限り強そうな人がいぱーいよ、何だかあたしって場違いって感じじゃない?
たっかっそーな剣を不必要に出してまたしまう、いかにも「オレ様別格キミらは三角」って感じで腕組んで通る人の装備見て鼻で笑ってる様なイヤ~な感じのまでいる。
げっ、目が合っちった……こういうのに関わると大体ロクな事ないんだよナァ。
「ふふん? お嬢ちゃんがここに何しに来たのかなぁ?」
ほらね、大体こういう奴らなんだよ。
『と……とととッ』
「とととぉ?」
『と……登録にッ!』
「はぁ~? よく聞こえなかったんだけど
まさか組合に入ろうってんじゃねーよなぁ?」
そのまさかの組合に入ってやろうってんだよッ! 文句あるのかッ!!!
『え……えーと』
「組合に入るのは勝手だけどよ、
少なくともオレ様ならお前なんかとパーティーなんて絶対組みたくねーわ」
男は凄く嫌そうな顔をして言った。
『なッ!?』
「どうせ何の役にも立てやしねーで寄生だけするのがオチだろ?
いるんだよなー、しかもドン臭いからどうでもいいトコで死んだりして、パーティーの士気下げちゃう様な奴ってよぉ~!
そもそもそんな小さくて戦えるのかぁ?」
『あ……あの』
うわぁ、もうダメだーッ涙があふれてくる!!
「おいおいーッ、このお譲ちゃん泣いちゃったよー!」
コイツ……ッ! 笑いやがって。
悔しい、こんな奴に……こんな奴なんかに。
「あなたも登録に来たのですね?
わたしも今日が初めてなのですが、良かったら一緒に登録しませんか?」
『あ……』
その声がした方向には、長く美しい黒髪に一風変わった色のローブを着た綺麗な女の人が立っていた。
「おいおいーッ! あんたも新人かぁ?
キレイな顔していかにも寄生しるって匂いがプンプンするわぁ」
その女の人、あの男が言い終わるかの辺りで、床が抜ける程の音を立てて地面を踏んだよ。
その音にその男だけじゃなく、周囲の連中も言葉を失ってしまったんだ。
「わたしはまだ新人ですらない初心者なので、
うっかりすると魔法を暴走させて二億度の熱で、
色んなものを蒸発させてしまうかもしれませんので気をつけて下さいね」
うはぁ……美しい顔でニコっと笑った。
あれは本当に痛快だったなぁ。
あの男、何も言わずに壁に戻って下向いてずっと剣をいじってたよ。
その後、あたし達は組合に登録したんだ。
最初の仕事もキッチリもらえちゃった、もちろんあたしとあの人の2人でパーティー組む事になったんだ。
『あ……あの……』
「何ですか?」
そう言ってあの人は首を少しかしげて微笑んだよ。
うぅ、事ある毎に美しいナァ。
『あ……あたしと一緒なんかで良かったんですか?』
「と、言いますと?」
『も……もっと凄い人が他にイッパイいるじゃないですか』
「それは新人同士お互い様ですよ
それにわたしはあなたと、あなたの小細工魔法士というクラスがとても気に入りました
なのでお願いしてるのはわたしの方です」
『あ……本当ですか!?』
本当にうれしかったなぁ、あたしはその時この人と一緒に仕事がしたいって思ったよ。
そうさ、思ったんだよ本当に。
そうしたら、あたし達が組合を出て少し歩いた所にあの嫌な奴が待ってたんだ。
こっちは二度と会いたくなかったのに。
「よぉ、待ってたぜ? お嬢ちゃんと綺麗なお姉さん」
大体こういう奴ってこうなんだよ、救いようもない程にやる事なすこと全てベタなんだよ。
それで仲間とか大勢集めちゃってて、そいつらは意味もなく「うへへ」とか言って笑ってるんだよ。
しかもさ、決まって「なかなかの上玉」とか言うんだよ。
「いいぞ、お前らも出て来いよ」
ほらね、早速仲間を呼んだよ。
「うへへ……」
「おぉ? なかなかの上玉じゃねーか」
そんなのが10人位出てきたんだ、あたしはもうこれ以上は許して下さいって思ったよ。
「さて、どちら様でしたっけ?」
「いいか新人ども、先輩の顔はよーく覚えておくもんだ」
「うへへ……」
「マジでなかなかの上玉じゃねーか」
「お……おでにっ……おでにやらせてくれよ!」
ベタすぎる、仲間なんて同じセリフの繰り返しだよ。
何かそれに加えてまた変なのが混ざって来たみたいだけどさ。
「その先輩がわたし達に何かご用ですか?」
「てんめぇ……さっきは偉そうな事言ってやがったが
お前らの登録ランクは最低じゃねーか」
「それが何か」
「しかも聞いたこともねぇクラスと来たぁ」
「うへへ……」
「上玉じゃねーか!」
「お……おで……」
どうでもいいけどさ、ヤツの仲間ってセリフが1つしかないのか?
「さっきの話ですが、多分顔を覚える必要はなさそうです」
「なんだとぉ?
ケッ、何が二億度だ! マジで笑かせてくれるぜ
だがな嫌でも忘れられない様にしてやる」
お約束どおり、嫌な男は下品な顔でニヤリと笑った。
そんでもって最初に仲間にやらせるんだよな。
「お前達! やっちまいなッ!」
嫌な男が手で合図すると仲間がぞろっと前に出て来たよ。
セリフすらないヤツも出てきたんだ。
1人は武器すら持たず、両手でただ掴みかかろうと構えてる上半身裸の太ったヤツ。
何かわからないけど、鎖を持って頭の上でブンブンまわしてるヤツ。
一丁前に剣と盾を持ってて、頭に載せたカブトに二本のツノが生えてるヤツ。
そしてその他は、ただ居るだけで構えもしないヤツ。
こういう奴らってほぼ100%一瞬でやられるんだよな。
「やれっ!」
嫌な男から号令が出ると、そいつ等は「わーっ」という声を上げて飛びかかって来たよ。
黒髪の女の人が片手で「あっちいけ」って振りしたら一瞬でどっかに吹っ飛んでったけど。
「なにぃ!? て……てめぇ……よくも中間達をやってくれたな」
「さぁ、あなたの小細工魔法の出番です」
黒髪の女の人はあたしに振り返ってそう言ったんだ。
「ウハハーーッ! バァカメッ! 隙を見せやがったな!?」
嫌な男はそのセリフを最後に、どこか遠くに飛んでったよ。
「やっぱり思った通りです
あなたの小細工魔法、とても素敵ですよ」
わたしの使った小細工魔法、それは周りの木の1本に小細工をかけ、嫌な男をつまんで遠くに放り投げるものだった。
『あの……
あなたの名前を教えてくれませんか?』
「わたしはクリーダ、クリーダ・ヴァナディンです
これからよろしくお願いします」
そう言ってクリーダは微笑んだんだ。
今日のこの日、あたしとクリーダは初めて出合ったんだ。
科学魔導士のクリーダ・ヴァナディンと、小細工魔法士はこうしで出合いました。
これからもヨロシクお願いします^^