第6話 料理
俺たちは今ファミレスにいる。
「あんた、何にするんだ?」
「私は、このほうれん草とベーコンのクリームパスタにします。」
「そうだな〜、俺はこのチーズハンバーグにしようかな。ドリンクバーはどうする?俺はファミレスにきたら必ず頼むんだが」
「じゃー私もいただきます」
「わかった、それで注文するわ」
さて、みなさんなぜこの2人がファミレスに来ているかの経緯をご説明しましょう。
俺は更紗が料理を作ってる最中に部屋の掃除をしていた。そうして数十分たった頃台所の方から悲鳴が聞こえた。
「どうした、何があった‼︎」
俺は慌てて台所の方に駆けつけた。そうしてその惨状を見た俺は絶句するしかなかった。
「すみません、拓海くん何分焼けばいいのか分からなくてお肉は生だと良くないって教えてもらったので長めに焼いたのですがそうするとこんなに真っ黒になってしまいました。」
そういう更紗の目には少し涙が滲んでた。
「俺の想定範囲内だったから大丈夫だよ」
そうしてものすごく謝ってくる更紗を宥めて、俺は更紗にある提案をした。
「俺で良ければ毎日料理を作ってやろうか?」
これは恋心でもなければ下心があるわけではない。ただ、更紗に料理を1人でさせていたらご飯もまともに食べれなくていつか火事とか指切るとかアクシデント起こしそうでお隣さんとしてそれは目覚めが悪いからだ。
「いや、でも拓海くんにそこまでしてもらうのは申し訳ないです」
「じゃー、この状況を見て1人で料理できることを信頼してくれってことか」
「っ・・・そ、それはその〜」
「そうだな〜、じゃーこうしようか。毎日作る兼あんたに料理を教えるってことでどうだ」
「それって拓海くんの仕事増えてませんか?」
「いや、そんなことないぞ。料理を教えてそれが俺の合格点に達したらそれからは1人で作ってもらう。それなら俺も安心だし、あんたも料理ができていいだろ?」
「拓海くんがそれでいいならこちらとしては言うことはありません。よろしくお願いします」
そういうことで話がまとまったところで俺の腹の虫が都合よく鳴ったのだ。
「食材はまた買いに行かないといけないし、今日はファミレスで済ませるか」
そうして今に至る。
「本当に申し訳ないです」
料理を食べている間も更紗はシュンとしていた。
「気にすることないって、俺が頼んだんだし」
そうだ。俺はそうなることも想定の上で更紗に頼んでいるので気にする必要はないのだ。
「あと、一ついいですか?」
「ん?どうしたんだ?」
「拓海くん、私のことを名前で呼んでくれませんか?」
なるほど、確かに俺は一度も更紗のことを名前で呼んではいない。
「名前で呼ぶことはできないが、これからは甘音と呼ぶようにするよ」
「あ・・・はい、ありがとうございます」
更紗はなんだか釈然としないようだが、苗字呼びは俺の最大限の譲歩だと思っている。更紗のことを普通に名前呼びしようものならよからぬ噂が学園中を駆け巡りそうだ。
「それで今後の話なんだが、食費は折半で俺の家で作るでいいか?」
「はい、大丈夫ですが食費はこちらが全額負担持ちでもいいんですよ。料理も作っていただきますし教えてもくださいますので」
「いや、料理なんて1人分も2人分も変わらんし、教えるのだって俺の自己満足だから折半でいい」
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」
その他にも様々な話題で雑談をして結構な時間ファミレスで話していた。
「もうこんな時間か、明日も学校だし帰ろうぜ」
「はい、そうですね。帰りましょうか」
そうしてこの日から聖女様との生活が始まりを告げたのだった。