ep.3 幼なじみ
あれから、俺は急いで学校の準備をして家を出た。
「あ〜、せっかく早く起きたのによ〜」
朝食をまともに食べることも出来ず、結局食パンと牛乳という簡素な物になってしまった。そして、学校に着いた俺はいつもより人の視線を感じることが多かった。
なんでこんなに見られてるのか分からず自分の教室に向かった。そして、教室でも人の視線に晒されることを避けることは出来なかった。
「よっ、面白いことになってんじゃねぇか」
そう俺に声をかけたのは天童魁斗で俺の小学校からの幼なじみだ。
「うるせっ・・・俺もこんな状況にしたくてやったんじゃねぇよ」
「拓海はなんだかんだ女子にモテるからな」
「それをおまえに言われると嫌味にしか聞こえねぇよ」
魁斗は誰が見てもわかるほどイケメンで成績も常に上位スポーツ万能、サッカー部でも次のエースと言われる程のハイスペック人間で俺とは正反対の存在である。
「もー、かい兄!たっくんをいじめないの」
そう魁斗に注意しているのは魁斗の双子の天童愛美である。彼女は外見は更紗と一、二を争うほどの美少女でスポーツも万能である。だが、兄とは違い勉強は苦手なようで俺と同じくらいかそれ以下の時もある。そしてその愛くるしい見た目と合致するほど人懐っこく男子の間でも人気の一人である。
「たっくんも大変だったね。まさか、あの聖女様から告白されるなんてね。あと、途中で逃げ出したよね聖女様と一緒に。だから、結果がどうだったのかが気になってみんなたっくんのこと見てるんだと思うよ」
愛美は俺が気になっていたことを解説してくれた。なるほど、確かに振ったことは誰も知らないんだな。
「あー、なんだ・・・聖女様の告白は丁重に断った」
あのいざこざは説明せずに俺は結果だけを伝えた。
「えーー‼︎、聖女様からの告白断っちゃったの?」
愛美は目を見開いて相当驚いた。
「意外だね、拓海なら承諾するのかと思ったよ」
「お前と一緒にするな」
「心外だね、僕はそんな軽い男じゃないよ」
こうやって、幼なじみと駄弁るぐらいが俺にはちょうどいい。そういう穏やかな時間も突如として消えるんだ。
「冴咲くん、おはよう」
その言葉でクラスのみんなが全員俺の方を向いた。それもそのはず、その言葉を発したのは聖女様だからだ。
「お・・・おはよう」
俺は流石に挨拶は返すべきだと思いこちらも挨拶をした。
「それと魁斗さんに愛美さんもおはようございます」
「おはよう、聖女様」
「聖女様、おっはよ〜」
俺はこの時思ったのだ。聖女様に魁斗、そして愛美を合わせるとここって学校一目立つ場所になっていないかと。
そして、この空気のあとに先陣を切ったのは愛美だった。
「聖女様、失礼かもなんだけど昨日振られたのに次の日に話しかけるのってすごいメンタルだね」
(おい愛美、なんでそんなぶっ込んだこと聞くんだよ。おい兄貴からも何か言ったれよ)俺は魁斗に目で合図を送った。それを見た魁斗は頷いて、
「確かに、僕でも次の日すぐに自分からは行けないかな。聖女様は振られても拓海のことが気になるの?」
(この兄妹は揃ってバカなのか?誰が追い討ちをかけろと言った)
「そうですね、私これまでに振ることはあっても振られたことって一度もないから冴咲くんにより興味が湧いたんです」
この言葉によって教室がざわめきの頂点に達していた。
ガララララ・・・・・・
「お前ら〜、さっさと席につけ〜ホームルーム始めるぞ」
そこで俺のクラスの担任神崎千花が教室にやってきた。さきほどまでうるさかったクラスメイト達はたちまち静かになり席についた。
「中間テストが終わったからってお前ら羽目を外しすぎるなよ」
千花先生は、接しやすく生徒からの人気も高いが怒るととても怖い。さっきみんながすぐ静かになったのも怒ると怖いからである。こうして朝のホームルームは終わった。