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第二十四話 ナタ・レンチ・ボーン

「オレの、メリケンちゃんが…」

「まぁ落ち込むなよ拓海。決勝も勝つぞ。」

あれから順調に勝ち進み、決勝戦まで登ってきた。次の一戦で勝つことができれば賞金を得ることができる。拓海は右手を負傷している為、左手と蹴りのみで応戦していた。

「賞金で買ったらメリケンサック買ったらいいじゃん」

「はぁ…あれ極秘ルートで買ってるから面倒なんだよな」

また門が開き、二人は歓声と共にリングにあがった。

 

「決勝戦の相手はー!正体不明、性別不明のこの二人!能面の奥には巨大な闇!女面・男面ペアー!!!!」

現れたのは、能面を被った二人の人間。性別すらも分からない。袴を身に纏った二人組からは、一切の感情を感じられない。一番触れてはいけない部分に触れてしまったかもしれない。本能がヤバいと言っている。

「…なぁ拓海。アイツらヤバくねぇ…」

…もっとヤバいヤツが身近に居たのを忘れていた。

「なぁに被ってんだァ?!被るのは(自主規制)だけにしとけよボケコラァァ!!!」

拓海はもうゾーンに入っていた。能面を被った二人の手には巨大なナタが握られている。そのナタは赤く染まっている。

「女面・男面ペアはこれまでの試合、対戦相手をナタで惨殺しています!!そして二人は彼らの死体をどこかへ持ち去ってしまいました…!!!」

「…マジ?」

これには拓海も思わず固まってしまう。もしかしたら、今目の前にいる二人はとんでもないヤツなのかもしれない。

「…拓海。アイツらの素顔、見たくね?」

「見てぇ。それにアイツらが人殺してんならオレたちにぶっ殺されてもなんも文句言えねぇよな?!あ!!死人は喋れねぇかーアッハハハ!!」

「では…試合!!開始!!!!」

能面二人組はボソボソとなにか呟いている。向こうから攻めてくる様子はない。

「…拓海、ここは慎重に…」

「死ねボケぇえええ!!!!」

魁斗の言うことも聞かず、拓海が二人に飛び掛かる。左手でパンチを放つが、二人組は軽やかにかわす。魁斗も続いてレンチを振り回すが、当たらない。

「避けんなよクソが!!」

パンチや蹴りを放つが、すべてかわされる。当たらない。

「あぁ死ね死ね死ね死ね死ね!!!」

避けられ続けて我慢の限界が来た拓海。男面のほうの袴を掴み、頭突きしようとした時だった。こいつらがなんと言っているのか、聞こえてしまったのだった。

「呪…呪…呪…呪…」

思わず固まる拓海。その隙を逃さず男面はナタを振り、拓海の腕を切り裂いた。しかし拓海は怯まず頭突きで応戦する。一発浴びせ、男面の能面にヒビが入る。

「いってぇなクソ能面野郎…!!」

魁斗は…既に片割れを倒していた。今も倒れた片割れをレンチで殴り続けている。痛みで更に感情が昂り、先ほどババに噛みちぎられて負傷した拳で能面を殴りつけ、更に馬乗りになって顔面を殴り続ける。剥き出しになった骨が更に形を変えて能面を砕いていく。

「死ね!死ね!死ね!」

能面が砕けてその素顔が明らかになる。

同じだ。能面と全く同じ顔だ。

「は…?」

「オイ拓海…!!コイツの顔見ろよ!」

もう片方の能面も、素顔と能面が同じ顔だった。

「なんだよコイツら…ホントにこれ人間か?」

改めて馬乗りになった男面を見る。無機質な顔は血まみれで、まだボソボソとなにか呟いている。

「あぁ黙れ黙れ!」

また何発も顔面を殴る。しばらくするとその言葉も聞こえなくなった。

「…しっ、勝者!冴咲・天堂ペア!!」

異様な空気に包まれていた闘技場だが、その一声によって歓声で湧き立つ。

「…コイツら一体なんなんだ…?」

「さぁな…とにかく、小遣い稼ぎ成功だ。」


優勝賞金は1000万。拓海と魁斗で山分けし、その日は焼肉を食べに行った。

「なんだったんだろな、あの二人…」

魁斗はまだあの二人を気にしているようだ。闘技場で死人が出るのは日常茶飯事だが、その死体を持ち去ってしまう奴は居なかった。全てが謎に包まれた二人組、その正体を知る術はなかった。

「お待たせしました!たん塩になります」

考えていると肉が届いた。

「うおぉ!美味そうだな!」

「まあ見てろって。オレが育成すっからよ…」

二人は肉を焼き出し、その煙と共にその悩みも消えていった。


闘技場での一件の後、拓海の欲望は一時的に収まった。

「さて…今日からはモブだな。切り替えねぇと…」

「おはようございます、拓海くん。」

「あっ、あぁ…おはよう…」

甘音と一緒に学校へ向かう。あんな事があった後なので流石に気まずい。

「…拓海くん。この前先生と何してたんですか?」

「…ブレイクダンスしてたら怒られてたんだ!いやーあの時は1時間ぐらい怒られて最悪だったよホント」

「…でも先生はデートだって…」

「んな事言ってなかったよ?!耳壊れてたんじゃないかな!あははは…」

甘音はムッとしたような顔をする。流石に無理か…?!

「…そうですね。聞き間違いだったのでしょう。」

…信じた。

 

 

 


 

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