Ep.22 カミングアウト
「で、デートって…二人が?!」
こんのキチガイ。こんなの修羅場じゃないか。
「あぁ、そうだぞ?」
神崎がまたニヤリと笑う。すると今度は甘音に近づく。
「なぁ甘音…私がなんで彼とデートしてたか分かるか?それはな…お前に気にして欲しかったからだ。」
「えっ?それってどういう…」
「私な、実は女の子が好きなんだ。どうだ甘音、これから私と一晩過ごさないか?悪いようにはしないぞ?あっそうだ、この先にホテルがあるんだ!凄く綺麗なとこで…」
甘音は完全に動揺している。そりゃそうだ。夜中に担任の先生に迫られるなんて誰だって動揺する。しかも同性。
「あっああ…失礼しますっ!!」
甘音はこの数分のカオスな空間に耐えきれなくなったのか、走って行ってしまった。
「はぁ…先生、何言ってるんですか…」
「くひっ!あっはは!まぁなんとか誤魔化せただろう!」
このキチガイには本当について行けそうにない…。
「まぁ…とりあえず助かりました。ありがとうございます。」
「…ちなみに私はガチレズだぞ。」
「……」
次の日。今日は地下闘技場での大会当日だ。最寄りの駅前で魁斗を待つ。
「よう拓海!」
魁斗が来た。魁斗はすごくニヤニヤしている。
「なぁ拓海…昨日先生とデートしたんだろ?!どうだった?」
昨日のデートを思い返すと…B級映画とエロい映画見て、甘音にバレて…甘音にバレた。これが気がかり過ぎる。
「…あの人ガチレズなんだってよ」
「え?」
路地を通り、誰も知らない地下への入り口に向かう。ゴミ箱の下にマンホールがあり、その蓋を開けて下へ進むと闘技場に着く。地下特有の暗く澱んだ空気、そこに混じる鉄臭い匂い。この匂いを嗅ぐだけで少しイきそうになってしまう。ダメだ、深呼吸…。そうして二人は受付に到着した。
「お、冴咲・天堂ペアだな。今日も派手なの期待してるぜぇ!奥の12番控え室に入れ。」
受付に言われ、二人は控え室に入る。地下闘技場は金持ちたちの娯楽だ。2対2でどちらかが立てなくなるまで戦い、客はどちらかに金を賭ける。武器の使用も認められており、この地下特有の無法さこそ、拓海が最も興奮するものなのだ。
「で…魁斗、武器使うのか?」
「もちろんだ。このレンチ振り回す」
レンチを2本鎖で繋ぎ合わせた、魁斗特製の武器。魁斗は手加減なしで頭を思いっきり殴れるタイプだ。そんなコイツにこの武器は最適と言えるだろう。
「拓海…お前は今日もそれ使うのか?」
「あぁ…最近ここにも来てなかったしな。久しぶりにコイツに飯食わせてやらねぇと」
拓海が持つものは…メリケンサックだった。金色の妖艶な光を放つ、上品な大人の女性のようなブツだ。
「ま、今回も賞金は俺たちのもんだ。アップは十分か?」
「あぁ…もうギンッギン。」
「冴咲・天堂ペア!こっちへ来い!」
呼ばれて門の前に立つ。この時のドキドキが一番心地よい。生きていると実感できる。
「お次の試合は…地下闘技場の常連!若きバトルジャンキー!その戦いはまるで狂犬!冴咲・天堂ペア!!」
ギイイイ…
門が開くと、壁に囲まれたフィールドに、その上から観戦するオーディエンス。歓声と鉄臭さに包まれながら、二人は舞台に上がった。
「さあ彼らの相手は…元ボクシング世界チャンプ!地上の頂から地下に堕ちたヒーロー!カロライナ&ライオスペアー!!」
その紹介と共に舞台に上がったのは、全身刺青の柄の悪い外人。体格もかなり良く、二人よりも大柄だった。舞台上の二組が向かい合う。
「々×$☆○%…コロス」
母国語で何か言ってから、ご丁寧に日本語で意思疎通を図ってくれた。魁斗と拓海は言語の壁を突き破る中指を立て、試合開始のゴングを待つ。
「試合…開始ぃ!!」
その合図と同時に魁斗はレンチをカロライナに向けて投げつける。見事顔面にヒットし、カロライナがうずくまる。そこに拓海がメリケンサックを装着した拳で顔面にアッパーを叩き込む。舞う血飛沫。拓海はちょっとだけイった。
「オォ…ガッ…」
開始数秒でカロライナのほうをノックダウンする事に成功した。
「#♪€☆%:!!!」
ライオスはまた母国語でなにか喋っている。が、レンチを拾い上げて魁斗がライオスの頭めがけて振り下ろす。
ゴンっ、という鈍い音と共に、血が飛び散る。一発、更に一発、頭目掛けて振り下ろす。
「オイ魁斗、コイツ倒れてるしもういいだろ。ンアッ」
「えマジぃ?まぁお前が言うんなら…あと試合中にイくのやめろよな。喘ぎ声がキモい」
「勝者、冴咲・天堂ペアァァ!!!」
わっと歓声が上がる。あぁ…今すっごく、きもちい。次の2回戦はもう少し手応えのあるヤツがいいが。




