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Ep.21 立つ!経つ!勃つ!

『ベッドorアライブ〜夜に咲く二輪の花〜』

タイトルから嫌な香りのする映画。そして目に入るは18禁のマーク。生唾を飲み込む。

『 冴えない男子高校生、山西隆正やまにしたかまさは同級生の吉永 よしないおに片想いをしていた。2人は一進一退ながらも甘い日常を過ごしていた。そんな中、2人の女性教師である田口多雪たぐちたゆきが隆正に行為を迫る。美人かつ大人の色気に健全な男子高校生である隆正はというと……。理性と本能の先にあるのは禁断か純愛か。人間の生々しい生態を描いた激震のエロサスペンス!!』

 俺は帰るべきなのかもしれない。あらすじを見た途端、ある種の使命感、将又はたまた、逃走本能とも呼ぶべき焦燥感が指先まで行き渡った。若干境遇が俺と似ているのもやめて欲しい。

「あ…の、俺まだ18歳じゃない…です…」

「じゃあ君は未だ他人のセックスを見た事がないと」

「…。」

「エッチな動画は見てるのに、こういう時だけ年齢を正当な理由として持ってくるのは、なんら武器にはならないよ」

「せ、セクハラです」

「黙れ公然猥褻こうぜんわいせつ

 見られていた。てかやっぱあんたかよ!!

「えちょ、待ってください、じゃあ噂流したのって…」

「それは私ではないな。私が学校に着いた時にはもう既に広まっていた」

 まじかよ…先生含め最低2人はいるってことか…。

「さあ、早く入ろう。映画が始まってしまう」

 抵抗虚しく、俺は4番シアターへ入っていった。



 ―――――時刻は既に24時をまわっていた。

 外は少し肌寒い。6月のはずなんだけれど。

 空を見上げてみる。星々は都会の喧騒けんそう絢爛けんらんに呑まれている。

「うん、面白かったな!」

「どこがですか。めちゃくちゃ胸糞でした。結局主人公は先生に犯されてたじゃないですか」

「それがいいんじゃないか。そのリアリティー、生々しさが。純情な想いとは裏腹に抗えない欲望。ヒトとしての自分とオスとしての自分、その懊悩、葛藤を経ての淪落りんらくが最高なんじゃないか」

「…。」

 何も言えなかった。正直、胸糞ではあったがそのリアルな心理描写と演者の妖艶な演技に興奮した自分がいたのも事実である。

「それに…」

 先生は俺の正面に立つ。そして左手の指先で俺の太腿下方に優しく触れる。

「なんだかんだ、君も満足してくれてたみたいじゃないか」

 そう言ってゆっくりその指先を撫でるように上へなぞってゆく。まだ鮮烈に残る映画の余韻とその艶かしい刺激に、つい反応してしまう。

「ちょ、せんせい…!!!!」

 俺はすぐ先生の手を振り払った。そして若干前屈みになる。

「っぶ、かわいいなあ。どうだ、元気でたか」

「あーあー!でましたよ!」

 主に俺の股間がな!!

 何にツボったか知らないが先生は暫く笑っていた。

 そして、一頻ひときしり笑うと、息を整え、改めて口を開いた。

「最近、君の様子がおかしかったからね。パンツ一丁になって悪門に殴り込むぐらいだ。相当フラストレーションが溜まっていたんだろう。しかも、普段おとなしい君が、だ。気分転換に、と思ってこうして誘ってみたんだ」

「はあ…?ウソでしょ。信じられないです。こんな手荒なマネして…魁斗まで攫って、えっちな映画見せて、股間にまで手を出そうとして!」

「ぶふっ、うひ、あはははは!!!ごめんごめん!でもこんくらい派手じゃないと発散にならないだろう!それに天堂君には協力してもらっただけさ。購買で声をかけてね。拓海のためならって快諾してくれたよ」

 もうどこまでがウソかホントかわかんなくなってきた。魁斗も何でラーメンでついてっちゃうんだよ。色々おかしいはずなのに、なのに、「この人はキチガイ」という理由だけで、妙に信じてしまっている自分が嫌だった。

「でも俺あの日、午後の授業とんだんですけれど。それに先生だって授業あったでしょ。」

「何を一日くらい!君今までちょいちょい休んでた癖に。それに私は、午後から有給を取っていた。」

 ほんと、ぶっ飛んでんな…。社会的にはマジに教師失格じゃねえか。…でも、おかげでちょっと楽になれた自分がいるのも否めない。

「まあなんだ。これでも教師だ。1人で解決できない悩みは私に言いなさい。私なりのやり方で君の味方になってやる!…ああそれに、別に悪門の件を咎める気などない。そういう役目は社会にこの星の数ほどいる。そいつらに嫌など怒られればいい。」

 星、見えないですけれどね。

キチガイで社不で、やり方は不器用を極めた人だけれど、この人なりに教師を頑張っているんじゃないかと思った。思ってしまった。

「あの、先生」

 俺が口を開いたその時だった。


  「拓海…くん…?それに神崎先生…?」


 ほんの数秒だっただろうと思う。俺から街の喧騒は消え、絢爛も色を失った。聞こえてきた音を処理するのに、永遠とも刹那とも言える時間が流れる。

しかし理解してからは加速的に時間が流れ始める。

「…いや、え、甘音…?」

 やばい見られたっ!!よりによって1番見られたくない人に!!

「おお、甘音じゃないか。こんな時間まで何してる。」

なに、平気な顔してんだこの人!見られてんだぞ?!先生と生徒が2人で隣街に居る所を!

「私はその、用事があってここへ…」

 やばいやばいやばい!!どうする!?なんて説明する?!

「違うんだ甘音!これは、その…!ええと!」

「ところで拓海くんこそ先生と何してるの?なんでお礼をしてるの…?」

 …っは!!そうだおれ今、勃起してんだ!!益々見られたくない!!…っくこうなったら一か八か!!

「いやあ!ありがとう甘音!俺、ここでブレイクダンス踊ってたんだよ!そ、そしらさ、先生が丁度ここにきて、こんな街中でブレイクダンスをするなって怒られてて!そんで謝ってたところだったんだよ。いやあ甘音がきてくれなかったら俺一生こうやって謝ってたかも!」

「デートだ」

 …………………………はい?

「私は彼とデートをしていたんだ」

 おいキチガイィイイイイイ!!!!!!

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