第2話 お隣さん
昨日は早く寝たからか今朝はいつもより早く起きてしまった。俺はせっかく早く起きたので朝食を凝ることにした。最近は中間テストがありまともに朝食を作っていなかったため結構楽しみである。
今日の朝食は食パンにベーコンとスクランブルエッグ、そしてコーンスープにすることにした。
そしていざ作り始めようとした時、インターホンがなった。
「なんだ・・・こんな朝っぱらから誰だろう?」
最近、なにも注文はしてないし何かの勧誘かと思い警戒しながらインターホンのモニターを見た。
「な⁉︎ なんでいるんだ・・・」
俺は全く驚きが隠せなく一歩後ずさった。
それもそのはず普通ここに来るはずもない人がそこに立っていたのだから。
「昨日ぶり、冴咲くん私この隣の部屋に住むことになったのでお隣さんとしてよろしくお願いしますね」
なんと、昨日振った彼女甘音更紗がそこに立っていたのだ。
「な・・・なんで急にここに引っ越したんだよ?」
そう元から一人暮らしをするつもりなら入学式から一人暮らしをしているはずだ。だが、彼女は入学式から一か月経った今日五月二十三日に引っ越してくるなんておかしいだろう。
「ここでインターホン越しもなんだからラウンジに行こうよ」
俺のマンションはラウンジがありラウンジといっても座席が二つほどで自販機が置いてあるだけの簡素なものだがそこに行こうと更紗は誘ったのだ。
「あぁ、わかった」
そうして俺たちはラウンジに向かった。
「冴咲くん・・・聞きたいことが山ほどありそうな顔ですが」
「あぁ、聞きたいことがたくさんある。だがまず一番気になっているのはなぜ昨日までこのマンションにいなかったあんたがここにいるのかってことだよ」
そう、俺の部屋の隣はこの一ヶ月間ずっと空き部屋で誰もいなかった。なのに今日になって急に更紗が引っ越してきたのだ。
「それはですね、私は高校生になったらあそこに住む予定だったんです。ですが、諸事情により一ヶ月ほど実家の方にいました」
「諸事情とは?」
「それは・・・ですね」
ん?なんでそんなに恥ずかしがっているんだ?拓海には全く理解ができなかった。
「私、実は家事がこれと言って全くできないんです」
「ん?待ってくれ家事ができない?」
「はい、全然ダメなんです」
「それでよく一人暮らししようと思ったな」
俺は驚きながらも逆に感心した。
「これは私の意思ではなく父の提案なんです。父は優しいですがその反面厳しくもある人で高校生になったら一人暮らしをして家事の苦労など色々学べと言われました」
更紗のお父さんは娘の将来を思ってそうしたんだろうね。
「ですが、私は全く家事ができなくてそれを見兼ねた母が父に頼んで中間テストまで実家で家事を教えてもらうことにしたんです。」
なるほど、だから一ヶ月は実家暮らしだったんだなと俺は理解した。
「なんだ、そう言うことか。てっきり俺は昨日振られたから絶対彼を惚れさせてみせるとかそう言うのだと思ってたわ」
「ギクッ‼︎・・・それも理由の一つです」
「その気もあったのかよ」
「だって、考えてみてくださいよ。私結構モテますよね。で、告白も何十回も受けました。そんな人の告白を振る人がいたら気になるに決まってますよね」
更紗は身を乗り出し俺に語りかける。
「お・・・おぅ・・・」
その勢いに押され俺は空返事しかできなかった。
「っと、そろそろ学校の準備をしないとな」
「もう、そんな時間ですか・・・仕方ないですね」
更紗は話足りなそうだがそろそろ家を出る時間が迫っているので一旦保留にすることにした。
(俺の優雅な朝を返してくれ〜)っと心の中で俺はそう思った。