ep.16 小遣い稼ぎ
次の日の昼頃…拓海の部屋に魁斗が遊びに来た。
「よっ、拓海!」
「おう、入れよ」
拓海は魁斗を家に招き、床に座る。
「俺たち二人でやる事っつったらよ…スマパラだよな?」
スマパラ…正式名称はスマッシュパラダイス。色んなゲームのキャラが集結し戦う、超傑作格闘ゲームだ。テレビを付けてゲームを起動する。
「魁斗、今日は誰使うんだ?」
「オレはもちろん遊者だぜ」
「はぁー?!キモすぎんだろお前!」
「お前だってメロン・マック使ってんじゃねぇか。ソイツも十分キモいぞ」
遊者。「魔剣伝説」シリーズより参戦。剣と盾を持ち、魔法を駆使して戦う。必殺技のスロカススロットでは、運が良ければ相手を一発で破壊できるチートキャラ。攻撃が当たった時の音が爽快で、脳汁が溢れるのが堪らない。
メロン・マック。「キチゲファイト!」より参戦。機動力が高くスマッシュ攻撃だけで相手キャラとプレイヤーの精神を破壊する。ある程度攻撃を受けると「キチゲ解放」が使用出来るようになり、一発で相手を消滅させる。
クソキャラ同士が今、ぶつかり合う。キャラ選択が終わり、試合開始の合図がされる。
「いくぜ!開幕スロット…!」
遊者が初手からスロット展開!初手から大当たり!ガード不能の画面全体即死攻撃によりメロン・マック死亡!
「はぁ?!初手から…!!」
メロン・マックの残機は残り2つ、マックは蘇る!マックは遊者に殴りかかり、シールドごと粉砕してしまう!
「今ので割れんのヤバいって!!!」
馬鹿糞高火力パンチによって遊者にかなりのダメージ!しかしまだ撃墜とはいかない!遊者は復帰し、スマッシュで応戦する…しかし!すでにマックはスマッシュを構えていた!遊者の攻撃はマックの「アーマー」の前には虚しく、高火力パンチで無事死亡!!
「はぁ?!キモすぎ死ねカス!!」
「お前のソイツもキモいだろが!」
熾烈なクソ技の押し付け合いにより、お互いの残機は残り一つ。読み合いもテクニックもない、ストレスのぶつけ合いだ。
『ンゴォ!』
メロン・マックの「キチゲ解放」が溜まった。遊者は機動力ではかなりマックと差がある。お互いダメージも溜まっている為キチゲ解放をくらえば即死する。
「ガチでキモいぞお前!!」
「お前もキモいぞ!!」
マックはゴキブリのようにカサカサ動き回り、キチゲ解放を当てるチャンスを伺う。ガード不能、攻撃を受けても踏ん張る、即死級の一撃。
「こうなったら…!」
遊者もスロットを展開。「魔剣斬り」を発動!大きく振りかぶり、相手を粉砕する技だ!しかしマックのアーマーによってその攻撃も無効化され、遊者敗北!勝者はメロン・マックだ!!
「グボワァァア!!キモキモ!キモすぎる!!」
魁斗は白目を剥き、怒りのあまりコントローラーを握りつぶしてしまった。そんな時の為に予備のコントローラーがある。二人は夕方までスマパラを続けた。
「あー、メロマキモかったわー。もう一生スマパラやらん」
「とか言って次の日にはやるだろ」
二人は公園まで歩き、ベンチに腰掛ける。
「なぁ…お前昨日聖女様といただろ?あれって結局何してたんだ?」
ここでそのことに突っ込まれるとは思っていなかった。
「え…ああ、お礼にって飯奢ってもらったんだ。」
「…もしかしてお前、金ないのか?」
魁斗がニヤリと笑う。魁斗がこの顔をする時は、面倒ごとに巻き込まれる時だ。
「…ないけど…。」
「来週の日曜、隣町の地下闘技場でデカい大会が開かれる。二人一組なんだけど…拓海、オレと出ないか?」
拓海はニヤリと笑う。
「…面倒な事かと思ったけど…なんだ。小遣い稼ぎじゃんかよ」
二人は握手を交わし、来週の地下格闘大会に出ることにしたのだった…。