ホワイトな国
「確かに何でも良い、意識のあるものでも良いって言いましたけどね?」
場面は一転して朝、向かい合い、家内カフェテラスにて紅茶を飲みながらぼやく。
「天使を選ぶのは悪手ですよ。
私あの人みたいに回復魔法使えないし、鶏みたいに飛べないし、天から授かったこの身体以外にはこれといってありません。
面白いですよね、この○ば。
所有権的に帰れないんですよ、さっきの契約は大きな拘束力を持ちます。
あーあ、あなたのせいです、貴重な二度とない機会を無駄にして」
「アリシアと言ったな」
「エリシアです」
「チートを使って何が楽しい。
己の限界を超えて働き続ける事に奥ゆかしさを感じるんだ、金なんて精製したらあっという間に世界征服してしまう。
あ、それとお前の使い道は用意してある」
「な、なんですか。
まさかこの天から授かったこの清さを投げ売り効率良く金を稼いで来いなんて言いませんね」
「事務係」
事前にこの世界での記憶は叩き込まれていた。
作られた記憶は少し気持ち悪いものがあったが言語理解などの点で素晴らしい。
名前は間宮テツのままだ、俺は都市外縁部の独身貴族で、特に実績はない。
魔法が使える、冒険者とダンジョンがあって魔王はいない。
肥沃な土地を所有していて五百数十組の小作農が居る、文字は書けなくて徴兵された事も無い。
小作農と言っても朝起きて、耕して、釣りをして、昼寝みたいな楽な仕事をしている。
そこを利用させてもらおう。
「思うにエリシア君、君は日本の税金システムは素晴らしいと思わんかね。
確定申告に所得税に関税、大人でもよく分からない。
今の現物を納める年貢制度はやめて複雑なシステムをつくろう、そして学校を建てよう」
算段はこうだ、重税を課し控除システムをつくって、小作人に学ばせて、教育水準を上げて、周辺の土地を買って、都市を造る。
無論誘導は欠かせない、広報に資金を多めに割こう。
「初期費用は双方十分にある、しかし!
私は忙しい、ほかのビジョンに向けて動かねばならない。
そこでエリシア君、やってくれるね?」
「何を?」
「法案作成・教育改革・都市形成」
「嫌です」
「命令だ」
「いーやーだー!私は天使なんです!ホワイトじゃなきゃいけないんです!教会を建てて信者からお金を頂きましょう!出家制度を導入しましょう!オ○ムみたいに!」
「この国は幸福だ、宗教が流行る国は不幸じゃないとな。
じゃ、頼んだぞ。
夜には帰ってくるから、まず草案を用意してくれ」
これで腹いせは済んだ、一年も経てばエリシアも労働のありがたみが分かることだろう。
その後、声は家の門を曲がった辺りまで続いた。