まだ戦えた
それは突然の出来事だった。
いつものように会社へ帰る途中、視界の端の方からトラックが出てきて「バン」と音がした。
次に見たのは俺の身体、幽体離脱、ばたんきゅーってやつ?
6時までに会議用の資料を用意しないといけないのに!
この時だけは神様を恨んだ、これじゃ上司にどやされてしまう。
とにかくまずは戻る事だ、身体に戻ろうとしたのだが俺は刹那の後、真っ白い空間に居た。
目の前には椅子に腰掛けた少女、白衣で、翼が生えていて、頭に輪っかがあって……笑顔で私を見つめるそれはどこか満足げな表情だ。
「帰してください」
「間宮テツさん、あなたは死にました。
無惨に、バラバラになって、即死です」
何故?
「あなたは頑張り過ぎました、本来なら過労死というリミッターがあるにも関わらず無視しました。
なかなか死にませんでした、だから殺しました」
「帰してください」
「私はエリシア、天使です。
あなたにもうあんな苦しい思いはさせません。
これからは休む番です、田舎の権力者にでも転生して療養を」
「帰せ」
「一つチート能力を授けましょう。例えば、金を精製する能力を得ればたちまち巨万の富を」
「帰せ!」
「ひえっ」
けっこう頭に来ていた、連勤記録は途絶えるし、資料は間に合わないし、殺されるし。
「俺はあの会社に必要とされてるんだ!
もし資料が間に合わなかったらどうする、俺のせいだって評価下げられるだろ!」
「あなたはもう死んでいます、評価も気にする必要はありません」
「お前が殺したもんな」
「その事を言わないでください、仕方なかったんです、かわいそうで見ていられません」
「……大きなお世話だ、で、俺を生き返らせてくれ」
「まだ言いますか?
あなたの左右の腕と脚は今1mくらい離れています、今生き返るとそれはもうおどろおどろしい。
そうなると各国の研究機関が動き出すでしょうね、キリストさんの二の舞です。
そ・し・て!私達のしごとが増えます!嫌です!」
「頼むよ、今ならまだ許してやるから」
「嫌です!ここは平和で楽なんです!もう宗教戦争なんて嫌なんです!」
「へぇ、じゃあ諦めるよ」
「それでこそ日本人です、あなたは田舎に行って甘やかされて普通になってください。
一つチート能力を授けましょう、もう頑張らなくて良いんです、休んでください」
「能力じゃなくても良い?」
「Yes」
「例えば意識のあるものでも?」
「Yes」
「お前」