8話 コール&レスポンス
間が空きましたが、誰も読んでないんで。まぁいいでしょう
少しの間、近隣国で冒険者をやっていくことにした
まずは隣国のゴーセに滞在だ。
ゴーセは「はじまりの町」と呼ばれる等級であり、
冒険者の資格も取りやすい。
その分、ランクは低級なのだが……
「すみません。冒険者登録をしたいのですが」
「こ……子供っ? まぁいいわ」
「あなたの年齢と名前、ここに書いておいて」
登録はできる年齢らしいが驚かれてしまったな
周りからは「かわいそう」だとか、「孤児」だとか
そういう言葉が聞こえてくる
子供の冒険者はそのような者たちが多いのだろう
「レグオール・シルヴ か」
「あんたも大変ね、まだ8歳だっていうのに」
「いえ、皆さん程は苦労していませんよ」
前世のほうが辛かったからな、舐めんなよ小娘が
「冒険者になって早速で悪いんだけど、今夜なのよ」
「今夜? 何がですか?」
今夜……今夜ってなんだ!?
まさか……あんなことやこんなこと?
「国や街に魔物が襲撃しに来る日、赤月」
「まぁ、この辺だけなんだけどね」
「それの討伐しろってことですか……? 」
母さんが本家に協力を要請している間に経験を
積んでおかなきゃならないが
”赤月”なんて凶悪そうなイベントを初日に回すか?
「えっ? 討伐しろなんて言ってないんだけど……」
「というか、討伐できるの?」
「低級とはいえ、500匹はいるのよ?」
低級の集まりか。それなら、新しい技を試すことも
できるし数が多いだけの雑魚なら俺でも処理できる
「もし討伐できた場合どうしてくれます?」
「そうね、FランクからC+ランクくらいには」
「なれるんじゃない? できれば、だけど」
「わかった。単独で魔物の群れ 討伐してきます」
「待って、本気?」
「結界魔法陣に魔力を注ぐだけで良かったのよ!?」
「討伐したほうが速いじゃないですか」
俺は半ば強引に魔物の群れを排除することになった
強引に迫ったのは俺だがね
これぞ叙述トリック
<習得>
白家の固有領域<雪氷領域>が進化
<四季領域:寒>へと変化しました。
<実績解除・報酬>
複数の領域取得により、”世界の実績”
「強者の道「空」:序」を達成。
報酬として
<魔力総量増加> <身体機能向上>
<風・雷魔法最適化> を獲得。
突然起動するこの能力は何なのだろうか
俺の役には立っているし、助かってもいる。しかし
必要最低限は出てこないし、呼びかけても反応なし!
よくわかんねー……
ーーーーー
夜になった。
美しい朱色の満月が、ゴーセ国境近くの平原を照らす
赤く染まった平原は禍々しい雰囲気と共に、
地響きを伝えてくる
魔物の大群が、国を街を蹂躙するべく
向かってきているのだ
これが定期開催される街の恐怖は計り知れない
「さぁ、試してみるとするか」<電床>
音を立て、電撃が地面に流れると地響きは停止した
さすがは先程最適化された雷系統の魔法。
ゴブリンの群れ、およそ50体が電気を浴びて消滅だ
「次、<雷降>」
降り注ぐ落雷が魔物の群れを襲う
抵抗されることもなく、全体の約8割が消滅した
「<雷魔獣装>」
残り2割は自らの手で葬りたいよねっていう話だ
敵陣へ飛び入り
電気の爪で敵を切り、強化された脚で駆ける
以前と変わったのは体全体に電撃を纏い、
フルオートで近づいた敵を迎撃できるようになった
攻防完璧だ。
「歩くだけで魔物が死んでいく」
「D+ ランクには問題なく通じるということだな」
「……次の赤月には結界が敗れると思ったのだが」
「計画が狂いおったわ!」
頭上から、老人のような枯れた声が響く
思わず俺は見上げてしまった
「低級魔物を集めて、数で破壊しようと思ったが」
「あの技を前にしてしまったら妥協はできまいな」
誰であろうか、みすぼらしいじじいだ。
魔力の漏れ方からして C+ 〜 B ランクの実力だろう
ローズや母さんが S 〜 S+ ランク程だろうから
そこそこだ。
ランクは、魔物に対する危険度に応じて上がる
例えばゴブリンだ。
ゴブリンは単体なら F 〜 E ランクだが、
大群となれば D+ ランクに相当する。
人間に対しては
魔力量や技量、問題なく討伐できる魔物のランクに
よってランク付けされる。
つまり A ランク冒険者の実力は A+ ランクの魔物と
同等だということだ。
「お前……ランクは?」
「わしか? 人間の指標だと B+ じゃよ……」
「魔物とするなら B ランクということか……」
「勘違いされちゃあ困るの」
「わしは能力持ち」
「< 老魔操のゲール >とはわしのこと」
なんだろう?
さも”知ってますよね”みたいに言ってきたな。
「老魔操? なんだそれ」
「無知なるものよな……」
「近辺では赤月に魔物が襲撃にやってくるだろう?」
「赤月が来るほど魔物が増え、強くなってゆく」
老人は両手を広げて魔物たちを静止させる
まるで指揮者のようだ
「おかしいだろう? 魔物は元来、群れることは」
「ないというのに、軍を成して襲撃する……」
長々とうっとおしい。
要約すると ”犯人は私です” と言っているのだ。
どこの世界にも”そういうの”は居るもんだな。
「ペラペラとおしゃべりしやがって。何が言いたい」
「わしの名は”ゲール・クレイル”。魔神様の配下」
「6角の内の1角 <老魔操のゲール> である」
「訳あって街を襲撃しておるのだ……邪魔をするな」
「街には何の思い入れもないけど」
「目立ちたくないんだよ」
問題を起こして赤家や紫家、
そして黒家が出てこられると厄介だ
街の破壊は止めねばならないな
「カカカッ! いい度胸じゃ……」
「来るべき時まで使う気はなかったがしょうがない」
ゲールの足元に闇が広がり、
中からゆっくりと魔物が現れた。
「<混成雷獣>、<屍人騎士>悪いのぉ、少年」
「貴様ごときに主力魔物は使えん」
「補助魔物で相手してやるわい」
主力でないものですら B+ 〜 A ランクか
流石は”魔神様”の配下だ
……度々名前が出てくる魔神様には部下がいたんだな
おそらく、能力は魔物を操るとかなのだろう。
危険度は未知数と考えたほうが良さそうだ。
「Aランクといえど俺の速さについてこれるか?」
「ふむ……そうじゃな」
「お主の方が数段は速いわな」
「……ならもっと速くしてやるぜ」
俺は脚に魔力を込めていく。
さっきより多く、繊細に。
「一撃で終わらせてやる。<雷爪>」
「やはりお主はまだ無知なるものじゃな。
「知識が足らぬぞ」
「はぁ?」
<雷爪>で貫いた2体の魔物はピンピンしている。
……なぜだ?
いくら魔物といえど生物には変わりない。
ダメージはあるはずなんだ……それなのになぜ
「驚いているな……まぁ、無理もないじゃろうて」
「昔とは違うて高ランク魔物はなかなか姿を見せぬ」
「混成雷獣も屍人騎士も最後に発見されたのは……」
「最後に発見されたのがいつとかはどうでもいい」
「理由は何なんだよ」
「混成雷獣は体に電磁気を帯びておる」
「屍人騎士は屍人で雷などに強い耐性を持っておる」
どうだ! とばかりに言ってくるじじい
なんだコイツ。
次回:じじいと勝負着くかも