7話 目標
短めです。
領域から出てきたのは父ではなく、女だった。
グラルのことを殺しただとかほざいてやがる。
「あら? その子がグラルの子ですわね」
「私に勝てると思ってるの? 過信はよくないわよ」
「黙りなさい。あなた、私の事は知っているわよね」
「野良に下ったシルヴに味方はいないわよ?」
「ローズ・ノワール・グレイラル」
「会ったのは初めてね」
「覚えていたのね。でも初めてとは心外ですわ」
「あなたのような俗物、記憶にないの」
俺には会話がよくわからない。
お互いに色家だというのだが、子供を攫う理由も
殺し合う理由も理解できないのだ
「父、グラルを殺したというのは本当ですか」
「信じてなかったの? とてもいい人でしたわ」
グラルで勝てないなら、俺では手も出せないだろう
だが問題はそこじゃない
父親が殺されたんだ、感情に身を任せてもいいだろう
「お前を殺す」
グラルより速く、しなやかに……足に魔力を流す
電撃は獣の脚のような形状で俺にまとわれた。
次は腕だ、魔力を帯びた手には電撃の爪が生成された
「そんな魔術は見たこともありませんわ」
「面白そうですわね」
「魔獣装とでも呼ぶか」
地面を蹴る。
少し動こうとしただけで
ローズとかいう奴の前まで移動してしまった。
「速いわね。<棘殺刺>」
「本当、残念ですわ。殺してはならないなんて」
「<青宝石の壁>舐めすぎですよ」
この脚は速すぎる。
ギリギリ瞬発で<青宝石の壁>を展開できたが
できなけれま背中を貫かれていたであろう。
「<雷爪> 左腕、貰うぞ」
3本の爪がローズの左腕を貫いたが、硬すぎる
石のように固くて切り裂けない。
「あなたのような子供に、良く腕が貫けましたわね」
「お返しですわ<流星粒撃>」
集まった石は発射される前に粒子となった
何はともあれこれはラッキーだ。
もう一度左腕を裂こうとする。
「どうして! 魔力が左腕に流れないの!」
「<流星の夜演場>!!」
ローズは慌てて領域が展開した。
綺麗とは言えない、ボロボロのステージの領域
未完成だ
「どうしてあんたみたいなガキに!
「私の華麗な魔術を断たれなきゃならないのよ!」
「あなたの未熟さが故でしょう?」
「……殺して差し上げますわ<死星夜>」
この女、俺のことを殺しに来たぞ。
ローズは殺意をむき出しにし、怒り狂っている。
「<寒夜の虹幕 忘れないでほしいのだけど」
「あなたは今2対1の状況なのよ?」
降り注がれた隕石が粒子程に小さくなって
地面に落ちていく。
「チッ…… わかりましたわ。ここは手を引きます」
「いずれまた会うでしょう。<閉幕>」
領域が解除された。逃がすもんか
「逃げられると思った? グラジェス、捕食」
領域の外で大氷龍が待ち構えていた。
「さようなら。レグオール・シルヴディア」
「<流星転移>」
ローズは消えた。
龍に食べられる直前、姿を消したのだ。
「……グラルは死んだのかしらね レグ……」
「信じないですよ、父さんが死ぬとは思えません」
そうだ、グラルが死んでいるわけがない。
今はどこかに行っているだけだ……そう、思うしか無い
「ねぇ、レグ?」
サヤだ。隠れていた物陰から出てきたらしい
手には何か紙のようなものを持っている
「……父さんが死んだんだ」
「用なら後にしてくれないかな」
「えっと、違くて……さっきね、剣のおじさんから」
「手紙もらって、自分に何かあったらレグにって」
サヤが手にしているのは手紙だ
剣のおじさん、つまりグラルのことなのだろう
グラルからの手紙なんか初めてで、少し緊張する
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レグ、そしてリースよ。
俺は死なない。
あいつらは元赤家だった俺を連れ戻すと思う。
俺が赤家に連れ戻された時、お前らには迷惑をかける
洗脳されたりするだろう。
よって、俺は魔導具に記憶を移すことにした。
俺のことを救え、レグ。
そしてこの魔導具を使い、俺の記憶を蘇らせてくれ。
<追憶の耳飾り>をレグに預ける。発動の詠唱は、
いや、書くのは辞めておこうか。
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詠唱くらいかけ。
追憶の耳飾り……か。
これはグラルを救うまで、俺がつけておこう。
詠唱を教えないのはちと問題だが、そこはいい。
生きているだけでいいのだ。
「母さん、僕。いや、俺は父さんを救いに行きます」
「黒家か赤家にいるのでしょう?」
「駄目よ。あなたじゃまだ誰にも勝てない」
「ローズごときに手こずっているようじゃあね」
確かに、今のままでは駄目だ。
それを知ったところで何をしろというのか。
「1年の内に体力をつけ、剣術を上達させなさい」
「その間、私は白の本家に協力を仰いでみます」
俺はリースの言葉に頷き、決意した
必ず父親であるグラルを救う、と
「サヤ、教えてくれてありがとう。家まで送るよ」
「大丈夫だよ。これでも私、能力持ちだし」
「でも、女の子一人で帰らせるわけにはいかないよ」
「えっ……うん。ありがと……」
「じゃあ、途中まで送って」
父であるグラルの救出と黒家を撲滅させる。
この日から俺は決意を胸に鍛錬に励む
俺が鍛錬している間、リースは手紙を書き続けている
それからリースは外出が多くなった。
お父さん救出大作戦〜序〜