2話 魔術の試験は獣から <前編>
アドバイスを受けて、少々改良いたした。
人が集まらん! だが諦めない!!
今回のお話は魔術だよー
俺は魔術を習うことになった。
ブラック企業勤務だった俺は
寝れるということだけで体力が溢れ出てくる。
最高にハイッってやつだ。
外に出れるだけいいってもんだぜ。
リースに貰った本によると、
魔術というモノは難易度があるらしい。
当たり前といえば当たり前だが……
最初から上級をやるわけにはいけない……
というか、出来ないようになっている。
まずは初級から学べということだろう。
魔術には<詠唱>というものがあって、
初心者のうちは全て読まないと魔術が出ない。
だが稀に例外も居るらしい……
前の世界で言う”絶対音感”みたいなものかな。
「<冬春の丘>に来て。授業をする」
ちなみにグラル流の剣術には魔術が混ざっているので
魔術初級を終えるまでは剣術は休止中である。
魔術の授業が始まった。
まずは初級魔術だ。
魔力を媒介として火や水を生み出す。
「原初たる炎よ、我に従い燃え盛れ」
出るはずの魔術が出ない。
詠唱が間違っていたのだろうか……?
魔術を使うには詠唱が必要だけど……
いずれは無詠唱とか憧れるな。
「そりゃそうよ。魔法はイメージが大事!」
「あなたはただ読んだだけじゃない」
詠唱は魔術のトリガーではなくて、
”創造の補助”ということなのだろうか。
俺はアドバイス通り、火の球を思い浮かべながら
前方に腕を突き出す……
目を開きながら力を腕に込める。
これが<魔力>なのか、腕の筋肉は膨張しない
「レグ、才能があるわ!」
「魔力を体にまとわせるの、最初は難しいのに」
そんなものを最初の最初に要求しないでほしいが
出来たし良しとする。
まぁ、これも愛情なのかな。
「それじゃあ、魔力を放ってみて!」
「あの木を的にしてみてね」
リースは少し離れたところにある小さい木を
見ながら俺に言う。
俺はそれに了承し、魔力を込めて詠唱を開始……
魔力を放った瞬間、木は消えてしまった……
いや、”火に飲み込まれた”の方が正しい
俺は詠唱をしないで魔術を使ったのだ。
「あなた…… 無詠唱で魔法を!?
「しかも<地獄の業火>を」
<地獄の業火>は ”上位炎魔術:拘束系” であり、
今世の俺くらいの年齢で使える魔術ではない。
その上、無詠唱ではなおさら。
「どんなイメージなの……?」
「無詠唱で地獄の業火が出るなんて……」
そんなもの、俺が知りたいのである。
俺の脳の片隅で上司が手を振っていただけだ
書類の束を持ちながら。
「無詠唱魔術ができる人なんて魔神様と師匠くらい」
「それ以外聞いたことないわ」
「そんな高貴なものなんですか!?」
うっかり人前で見せたら
危ないことに巻き込まれたりしないだろうか……
大抵のことなら<地獄の業火>で
なんとかできるだろうがね。
「……えっとぉ、気を取り直して」
「次は水魔法やってみましょうか……」
リースの動揺がこっちまで伝わる。
先程は教師か師匠といった印象の口調が緩んでいる
「母なる水よ。我に従いめっぐ……」
噛んだ。
リースの動揺に気を取られた。
俺も動揺しているのか緊張が解けてしまったのか。
「少量の水でぇ……」
常識的な量の水の玉が手のひらに浮かんでいる。
俺の願いが通じたのか、上手くいったようだ。
「いいわ、その玉を体の前に持って行って」
「発射してみましょう」
リースの口調は緩みっぱなしだが、初級魔術を俺が
成功させたことで動揺が緩和されたようだ。
「わかり……ました」
俺はリースに返事をし、先程と同様に腕を体の前へ
持っていく。
木があったであろう場所に向けて魔力を開放。
上手く飛んだ。
「いいわ!」
「今日の内に初級はクリアできそうね!」
初日で初級合格の輝きが見えてきた。
どうやら今世は才能があるらしい。前世と違って……
「初級合格は、<地獄の業火>と<電光の豪雨>」
「その2つの魔術だけど片方できるし……」
<電光の豪雨>天空に水を発生させて
雲を呼び、電撃を放ちながら辺り一帯を押し流す ”
上位水魔術:攻撃系”である。
自分でもわからない
というか、この世界の魔術の概念がやばすぎるのだ。
初級でこれかよ
等級を決めたのは"魔神様"らしい
度々聞く名前だ。
「とりあえず、1時間後に試験するから!」
「準備しといてね!」
「え? ちょっと母様?」
急に振ってこられた。
水と水を擦ったら、電気ぐらい帯びないだろうか
無理だな。
電気をためた雲と豪雨を引き起こすほどの
雨雲も必要だし……。
「魔術はイメージ……か」
リースから貰ったアドバイス。
自分の魔力を使って電気は生み出せるかもしれない
バチバチっとしたイメージを指先に集中させ開放。
電撃を放つことができた。成功だ。
だが まだ作るべきものがある、雨雲だ。
こうして、俺は十数分研究のようなものをしてみた。
そしてわかったことは
”魔術は理屈ではない” ということだ。
「準備はできた?」
「……母様、少し早いのではないですか?」
「あなたなら出来ると思ってね」
リースが声をかけてきた。
予定より早いので驚いたぞ……
ママンよ、いささか買いかぶりすぎでは?
「でも、なんでもいいわよね」
「試験始めるから! はい、死なないようにね」
「死ぬ……?」
「あら、言ってなかった? 試験内容変えたの」
「でも簡単だからね! 倒せばいいの」
倒せばいいのって…… 何を
「召喚。雪狼」
「召喚。雪蜥蜴」
「召喚。氷猪」
リースの前に魔獣が3匹召喚された。
狼にでかいトカゲ、イノシシ。
「死なないでね! レグ!」
「行け! 我が獣達よ、敵を殲滅せよ」
リースが自分の子供にする顔ではない
表情をしている。
勝負を楽しんでいるのか、ヒーローを見る
子供のような目をしている
まずはでかい猪を倒す。
火球を大きく生成し、爆発効果もつけてみる。
でかい猪に放つ。
「っ!! 防がれた!?」
雪蜥蜴が守りやがった。
そりゃそうか。
敵はトリオだし、恐らく戦闘経験もあるだろう。
魔物のグループは3体のはず
だが、いま俺の視界には2匹しかいないのだ。
雪狼がいない。
「グワォォォン」
甲高い遠吠えが上から聞こえた。
俺は嫌な予感がして視線を上げる。
「おいおい。マジか」
宙に浮く氷柱に乗った狼と
尖った氷柱がこちらを見ている。
これはあれだ、命の危機というやつだ。
もう一度雪狼が遠吠えをすると、
空中に静止していた氷柱が落下を開始した。
怖気づいた俺は動くことも出来ず
目を瞑ってしまった。
登場人物
レグオール・シルヴ(主人公)
リース・シルヴ(母)
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間隔空きすぎたかもんぬ