若者は飲み会に行きたくない?
ジャンル日間9位になっていました!
驚きました。
ありがとうございます!
ふはぁっ!10日の夜には8位に!
もう、ここら辺で止まりますよね?止まりますよね?
「平尾くん、井尻さん、ちょっといいかな?」
俺は業務時間内に二人を会議室に連れて行った。なんかこういう雰囲気も嫌かもなぁ、と思いつつ。
平尾くんと井尻さんは去年の新卒くん。平尾くんは髪色が少し明るくて短髪で爽やかな印象。ずっと剣道をやってたらしくて姿勢がいい。あと、イケメン。
井尻さんは肩までの髪の長さで派手と言うよりは少し地味な印象だけど、顔立ちも整っているし悪い印象は全く無い。ときどき俺にコーヒーを淹れてくれたりして気を使ってくれているのも感じている。
もう入社して1年経過したから、そろそろ「新卒」と言うと彼らに失礼になるだろう。
今年は別に新卒がいるわけで、彼らは立派な先輩だし。
会議室は割と重たい空気だった。10人ほどが入れるキャパの部屋。ドアは閉めて外の音は聞こえない。
ロの字に並べられた机の一面に二人は並んで座った。俺は真正面ではなく、横の面 つまり、彼らの机と90度の方向の机の椅子に座った。
「お疲れさま」
俺が重たい口を開いた。
「「お疲れ様です……」」
二人が緊張しているのが分かる。これから彼らに嫌なことを伝えないといけない……。こっちも気が重い。
「実はな……二人の歓迎会を開くことになった……」
「「……」」
二人は無言。まず謝ろう。
「すまん……」
「「……」」
またも無言。二人とも絶望しているのかもしれない。
「……」
この反応は予想してなかった。次になんて言おうか考えていたら、先に口を開いたのは平尾くんだった。
「高宮課長、それで何があるんですか?」
「え? いや何にもないよ?ただ、俺達と飲みにいくのも嫌かなって思って」
うちの課は彼らを入れて全部で10名。おっさんばっかの課に来て飲み会とか嫌だろう。
「高宮課長は参加されるんですか?」
今度は井尻さんが訊いた。すまん。俺も参加するんだ!直上のボスが出席する飲み会とか嫌だろうに。
「すまん、俺も参加するんだ」
二人が顔を見合わせて笑顔になった。なに?
「高宮課長といつも話してみたいと思ってたんです!歓迎会楽しみです!」
「え?」
平尾くんが嬉しそうに言った。
「まだ私達1人前の仕事ができてなくていつもフォローしていただいて、お礼を言いたかったんです!」
「ん?」
井尻さんも必死な表情で言った。
あれ?これまた思ったのと違う反応。
「部長しかいない飲み会だったら、ちょっとハードルが高いですけど、高宮課長が出席されるなら安心です!」
「私もっ!」
「え?そう?そうなの?」
俺は予想と全く違う反応に思わず前髪をかきあげながら、なんて言おうか考えていた。
「俺達、同期二人だから比較的心強く思ってたんですけど、やっぱり既に出来上がってる人間関係の所に入っていくから不安はあったんです」
「そうか」
そうだろうなぁ。
「だから、会社終わってからスタバとかで俺達にも何かできないかって話し合ってたところだったんです」
へー。
「いつも高宮課長には失敗とかフォローしてもらってたし、俺達はお互いの失敗を共有してどうすればよかったかとか話し合ってました」
すごいな。この二人優秀だ。俺が二人の年齢の時にはそんな事は思いつきもしなかっただろう。
「いいんだよ、二人はまだうちの課に来て間もないんだから仕事の事は……失敗だって大したことじゃない。お客さんに迷惑かけたとかじゃないし、気にしなくていいものばっかりだったよ」
「でも、仕事がある程度できないと課の他の方に申し訳なくて……中々話しにくいなって感じてたんです」
「そんなこと考えてたのか。今は新人であることを逆手にとってどんどん聞いていいんだぞ?あとになったら恥ずかしくなって聞きにくくなるんだから」
「「はい!」」
「聞きにくかったら俺に聞いてもいいし」
「「はい!」」
「誰に聞いたら分かるか教えてあげられる」
「そこは課長じゃないんですか?」
はははと三人とも笑っていた。俺のおっさんジョークも社交辞令ではあるもののウケてくれたみたいだ。
「じゃあ、歓迎会は問題ないんだな?嫌だったら何とか理由をつけてやめさせることもできるからな?」
また二人が顔を見合わせていた。そして……
「「参加したいです!」」
声を揃えて二人が言った。
「そか。ありがと。俺も二人のことはもっと知りたいと思ってたけど、おっさんがウザいかなって思ってたしさ」
「全然! 俺、剣道部だったから、上下関係が厳しいのもある程度耐性があります! 困ったときは課長に相談させていただきますし、大丈夫です!」
「そうか。すごいな。俺が若いときはもっとダメダメだったから素直にすごいと思うよ。俺にできることはなんでも言ってくれ」
「はい!ありがとうございます!」
平尾くん優秀。見守りつつ困ったときに手を貸せば彼はひとりでどんどん伸びそうだ。
「私も初めての社会人だから不安もあったんですけど、高宮課長がお父さんみたいで、安心して働けるって思ってます!」
お父さん……年齢的にはそんくらいか。まあ、いいや。できれば、「お兄さん」くらいが良かったなぁ……。
「娘なら困ったときに気軽に声をかけてくれ」
「はい!」
なんだ、二人とも良い子じゃないか。
少し難しいけど、あれを頼んでみるか。俺は二人に提案をしてみることにした。
普段はこんなのを書いています。
やさしい監禁(1)
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よかったらのぞいてください。