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7.監獄再び

 建物に突っ込んで意識を失った俺は、目覚めた時ベッドに寝かされていた。いや、これはベッドと言うにはあまりにも硬いだろう。牢屋ですらもう少しまともだったはずだ。

 寝返りをうつのがえらい楽。そりゃそうだ。このベッドは猛反発枕に猛反発マットレス。…石。


「俺はこの街の補佐官様だぞぉぉぉぉぉ!責任者のバカタレを呼べぇぇぇぇ痛ぁぁぁぁ!」


 格子から顔を出して叫ぶと同時にぶん殴られてしまった。


「貴様ァ!この街に不法に侵入した挙句に身分詐称だと?そのような通達は一切入っておらん!貴様のような怪しいものはこの牢獄で一生を過ごすのがお似合いだ!!」


 えぇ…。どこから話せばいいんだ。いくらなんでも程があるだろう。

 まず前提として俺は魔王様からこの都市の補佐官を頼まれたはずだ。つまりこいつの言っている事は間違っている。しかし通達が無いと言う。伝達ミスの可能性も捨てきれない為、頭ごなしにこいつに責任を取らせるのもまた違うだろう。

 そして不法侵入についてだが、いずれウチワのクソジジイをぶちのめすことは既に確定事項だ。そのうち責任を取らせてやる。

 最後の「この牢獄で一生を過ごすのがお似合いだ。」と言う部分に関しては言い訳などさせない。こいつを降格処分にでもしてやって鬱憤を晴らそうと思う。


「とりあえずこの監獄の責任者を呼べ。俺の名はバクチ、この名は魔王様に貰ったものだ。死にたくなければ従うのが懸命だぞ。」


 どこかで見た事のある眠そうなアホ面。俺がもう少し強ければその場で消し炭にしてやったのに。


「名前は魔王様に貰った?ハッ!笑わせる!バカにするのも大概にしやがれ!まぁいい。次の飯は三時間後だ!それまでに少しは反省したらどうだ。」


 そう言うと看守はどこかに行ってしまった。

 ひょっとするとこの状況、まずいのでは?俺の話をまるで聞く気の無い看守と取り残された俺。次の飯は三時間後と言っていたが、その時に何とか説得せねば。

 そして事情聴取くらいするだろうがそれすらも無い。この街は思ったより遥かに酷いのかもしれないな。

 とりあえず魔法のコソ練でもしながら待ってやろう。少しでも魔法を使えるようにならなければ。


 しかしいつもの拘束具によって魔法が使えないバクチだった。


 ――――――


 ようやく三時間が経ち、同じ看守が飯を持ってきた。


「おい、飯だ。ここの飯は不味いことで有名だが、魔族ならギリギリ生きていける。お前が人なら死んでたぞ!ガハハハ!最も死んだら死んだで利用価値はあるがな!」


「看守さん、少し話をきいてくれ。俺は本当に魔王様に任命されてここに来たんだ。不法侵入については四皇のウチワさんに聞いてくれ。俺はあの人の魔法で吹っ飛ばされてここに来たんだ。」


「おいおい、嘘でも貫き通す気か?この三時間に考えたのは言い訳だったってことかい。お前さんも救えないもんだな。」


 クソッ!まるで聞いちゃいない。どうやらこいつは囚人の話を聞かないタイプらしい。看守としては優秀で素晴らしい…が、今ばかりは本当に邪魔である。

 こうなれば脱獄が手段になる気もするが…なんとか足掻いてみるか。


「俺が本物の補佐官だと信じられる物があればそれを出したい。何かないか。」


「ふーむ、そこまで言うのなら聞いてやろう。そうだな…お前さんの身分ってのはどうなるんだ?補佐官の前は何をやってたんだ。」


「俺は魔王様からこの世界に呼び出された召喚者だ。だから前の役職というものは無い。今はシデス様の騎士だ。」


「…まさか貴様が真なる魔王とやらか?シデス様があらゆる魔法を使って滅ぼしたと聞いたぞ。

 ならば尚更ここからは出せないな。反逆者をのさばらせておく程今の魔族には余裕が無いんでね。」


 尾ひれがついて大変な話になっているようだ。確かイズミとかいう女が周りに話を広めると言っていたな。あいつも俺にとって敵になる訳か。これで四皇の内二人が敵だが本当に大丈夫か?

 …そういえばサングラスを貰っていたな。あれを見せてみるか。


「このメガネはウチワ様から貰ったものだ。これなら証拠になるだろう。」


「そ、それは!数年前に国庫から盗まれて捜索中だった日抜きの眼鏡!貴様ぁ…賄賂は通じねえぞ…?余罪も多い。裁判にかけてやるから指を咥えて待ってやがれ。」


 信じられん。クソジジイが…なんて野郎だ。もう俺の発言がこいつに響くことはないだろう。なるようになりやがれ。

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