21.散財の快楽
遅れました!春休みは思いのほか忙しかったです。というより娯楽が多い国ですね、日本は。友達と金があればどれだけの時間でも遊んでられる。素晴らしいことですが所持金は…。鬱憤を晴らすため作品内の人物達に浪費させることとします。対戦よろしくお願いします。
「イサオ、悪い。少しだけ金貸してくれねーか?カジノで調査してたんだが財布落としちまって…」
「ルスキーでも財布を落とすことあるんだな。これで足りるか?やはりあのカジノはきな臭いんだな。そして君も言ってたけどあのバクチという人、油断は出来ないね。」
「わかってる。調査をしない事には始まらないんだ、すまないな。」
先代魔王より受け継がれた魔貨幣は、世界で唯一どこでも使える通貨である。金の価値は高い。魔力のある世界、魔道具達の軸の部分を担い、生活用品にも使用出来る金は、いつになっても価値が落ちないのだ。加工技術もピカイチなので未だその恩恵は誰しもに与えられている。
都市シデスにてこの前までなかったカジノ、そしてその周りに広がっていく繁華街達。訪れたのは最後の希望を託された、人間に唯一残る勇者。気付かないはずが無いのだ。「このカジノは何かがおかしい」と。そしてルスキーは例のカジノに携わっていた者であり、この状態を良しとするにはあまりにも都合が良すぎるというものであった。
ルスキーはイサオから借りた金貨をポケットの中握りしめ、一人カジノへと向かっていく。バクチはどうカジノに誘い込むか考えていたが、こうなるのは当然だった。敵である魔族を出会った初日に心から信頼するほど、彼らは頭が悪くない。そして…本来ルスキーはその筆頭である。カジノに行かない訳には行かなかった。
(まずい、やめられない。地球でも何度かスロットを打ったことはあったが、ここまで楽しかっただろうか。レートも高いところから低いところまで、民衆に寄り添うように置かれている。トランプ類でもそうだ。
そして極めつけはこのゲーム性。確実に日本にあったものだ。バクチが日本人ということは間違いないのだろう。いや、他の日本人情報を得た可能性もあるか。いずれにせよ信用はできない。)
そう考えるルスキーの本心とは別に、バクチが言うように娯楽のない世界だ。その環境がルスキーを更に染めていく。当たりの度に出てしまう快楽物質に抗えないようになり、筐体に隠された真実がそれを増長する。
(クソッ!俺は一体何をしているんだ!この金は借りた金、使っちゃいけない金なんだ!調査を放ったらかしにしてまでこんなことをしている暇なんてないッッ!)
勝った負けたを繰り返し、最終的には飲み込まれる。それを繰り返し宿に帰っては軍資金を求めるルスキー。勇者パーティに不穏な空気が流れ始めていた。
――――――
ククク…楽しいものよ。調査など他のことを銘打って快楽へと身を委ねるバカを見るのはね…!
趣味が悪いと笑われようが問題ない。一回やってみたかったんだよな、こういう店の経営は。
狼に移動中探ってもらった奴らの所持金はあまり多くはなかった。しかし旅に出る勇者が金を持っていないなんてありえない。つまり、どこかしら、魔法なりなんなりを使って大量の金を抱えているはずだ。
魔族領に入ってから魔物の肉を食って生活するという可能性はありえない。魔物の肉は食えたものでは無いのだから。そして未だに流通する金貨は以前から魔王が牛耳っていたものである。魔族領でも使えるのだからやはり無いはずはない。魔法は万能では無いのだし、食料をそのまま運ぶなんて芸当も滅多には出来ないのだ。
それに都市を一つ一つ落とすよりも頭一つとる方が遥かに楽である。魔族だって生きているし戦いに身を委ねている訳では無い。都市に勇者が居たところで襲撃するのは極わずかだろう。つまり都市を拠点に暮らして段々と先へ進むのが良策となるのだ。
だからこそ金をガツンと減らしてやることが出来たら、実質的に魔族陣営の勝利と言ってもいい。俺がやっていることは俺の為であり魔族の為、つまりウィンウィンの関係ということだ。
ルスキーの散財は恐ろしく早い。覚醒魔法が効いている以外にも、全ての環境が追い風となり、金をカジノに吸い込ませているということだろう…が、それにしてもちょっとやりすぎである。
負けすぎると、”罪悪感でやめる”という選択肢が出てくるのだ。判断力が落ちていても勇者パーティ、おそらくいずれ損切りして帰るのだろう。
そうはさせない。それだけは許さない。明日、イベントを起こす。その名もバクチと勇者パーティ来店イベントだ。
これが通る理由として、シデスの人々に「バクチが来る日は当たりやすい」と認識されているからである。それもそのはず、俺はヤマを張って良い台が多い日にだけカジノのスロットを打つ。そしてこれをイベントとしてしまえばいいのだ。いわゆる演者ってやつだな。客引きパンダに俺自身と彼らがなるのだ。
明日は全ての台を高設定とし、大赤字覚悟で運営する。そして勇者パーティ全員をそこに呼び込む。そして目玉イベントとして、彼らの勝ち分全てと俺の勝ち分全てで直接対決である。一日中覚醒魔法を浴びた者など俺の足元にも及ばない。完膚なきまでに叩きのめしてやろう。
これは力の直接戦闘では無く、冷戦のようなものになる。いや、激熱イベントなのだから激熱戦としておこう。勇者達よ震え上がり俺のスロットにひれ伏せ。
全てのパチンコ屋を震え上がらせる程の出玉で、更にカジノを成長させる。これこそが真のカジノ経営。
次の日、朝から狼車にバクチ、勇者来店カジノ破産覚悟の大勝負!と書かれた旗が取り付けられ、実に三割ものシデスの民がカジノに集った。
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