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19.勇者御一行

 僕はイサオ(勇男)エイダ(英田)。この世界、シハイマゾックに召喚されてから勇者として活動している。この世界で人間は虐げられていて、魔族達に支配されていたのだとか。しかし、僕たちが呼ばれる50年前にその支配から独立して権力を取り戻したらしい。

 僕は165歳だ。だけど心はずっと15歳のまま。なぜなら、定期的に王様の指示で記憶を消されるからだ。戦い方、有力な魔族達の特徴、前世の記憶、どうしても残したい記憶以外は全て消されてしまう。それでも僕は王様について行く。記憶を消すのが最善の案だからと、毎回謝りながら涙を流す王様を信じているからだ。


 パーティメンバーは僕を含めて四人。僕の幼馴染のヒジリ()オナガワ(女川)、ヒジリの友達のジュラ(樹羅)モンド(主水)

 そして親友で相棒でハーフ、このパーティで僕以外の唯一の男、ルスキー(琉寿喜)・ギャンブリングだ。


 ヒジリは聖女、ジュラは魔法使い、ルスキーは遊び人だ。

 僕達四人はそれぞれ別の国に属している。僕はビッゲス王国、ヒジリはミドラス教国、ジュラがスモル法国でルスキーはウンガチ帝国だ。

 僕達はそれぞれの国から派遣され、勇者パーティとして組織され、魔族達から人間を解放するべく戦っている。最初はもっと多くの地球人が魔族と戦っていた。でも、最後まで戦いを続けられる強さを持ったのはこの四人だけだった。全員が勇者だったのが、今では本当に勇者を名乗れるのは僕だけだ。死んだり、失踪してしまったり。そして最後の魔剣、そう呼ばれるものを抜けたのが既に僕だけだったから。

 国の代表者たちは、僕らが負けてしまったら多大な犠牲を払ってでも魔族と戦うつもりだ。その中には僕より弱く、仲の良かった友達や、旅の途中で出会った人達が選ばれるだろう。そんなことは許さない。僕は勇者なのだから、彼らを守るのは僕の仕事だ。つまり、いずれにせよ僕は退けない。馬車に揺られ、景色を眺めながら決意を固くする。


「イサオよぉ、黙って俺に任せておけば、魔族なんか内部から滅ぼしてやれるんだぜ?”今回”は上手くいかなかったけどよ。俺らが生きてる限りは雑魚共が犠牲になることも無いわけだしさ。」


「ルスキー、君の言うことはいつも正しい。僕より頭もいいしね。だけど、それでも僕は今旅立つことを選択するよ。君の計画が頓挫するなんて聞いたことがない。これは何か悪いことが起こっているに違いないんだ。」


「それ、ゆーしゃの感ってやつ?マジありえないんですけど。スモルで暮らすのも悪くないかなって思ってたし。何より辛い旅なんて日本人のウチらに出来んの?」


「ジュラ、やめてよ!イサオ君が旅に出るって言った時賛成してたじゃん!それに、私達がやらなくちゃ誰が代わってくれるの。」


「そんなこと分かってるんですぅ。それでもウチらがやらなくちゃいけないってのに納得いってないってだけ。選ばれし者とか言われても、150年近くしっくり来なかったのに今更感あるっしょ?」


「それは…」


 僕の感は鋭い。地球にいた頃では考えられない程に。勇者の力は強大で、望むものもほとんど手に入る、そんな責任ある力だ。腐らせるということは弱い人々を見捨てるということになる。僕がしっかりしなきゃ。

 そんなことを考えている間にも…魔物の気配だ。なにか来る。


「ちょっとルスキー!なに武器構えてんのよ!」


「イサオ、分かるか?来るぞ。」


「あぁ。」


 警戒態勢を整えた途端、鳴り響く遠吠え。


「お、オオカミ!?ジュラ、あなたも構えて!」


「え〜こんなとこでオオカミなんて出てくるぅ?マジで下がる〜。」


 ジュラは相変わらずだが全員戦闘態勢になった。数は…15体程か?よし、オオカミを迎撃する。


「ルスキー、君はその二人を守って!僕が先頭を切るッ!」


「あいよォッ!」


 意気揚々と先頭に躍り出て、オオカミ達を斬るべく剣を構えた瞬間。


「何っ!?」


 オオカミ達の狙いは僕の後ろだった。


「ヒヒ〜ン!!」


 僕たちを運ぶ馬車、その馬たちが喉や足を噛まれてしまった。


「ちょ、これどうする訳!ここから徒歩なんて無理!距離がありすぎるんですけど!」


「それよりオオカミ!…襲ってこない?」


「こいつら…はなっから俺達の足を奪う目的だったのか?何故そんなことを…」


「いや、このオオカミさん、もしかしてお腹を空かせてただけじゃない?ほら、お馬さん食べてるし、しかも他のオオカミさんに至っては馬車に乗れって言ってるみたいだよ。」


 この誘いに乗っていいものか。ヒジリの言うことが合ってるとは限らない。本当にお腹を空かせていた可能性もあるが…いや、こういうのはルスキーだ。


「僕らが固まっていれば大多数の魔物には負けない。帰るなら今しかない。どう思う?」


「ん〜俺は乗るぜ。ジュラじゃないが、歩いて帰るなんて出来るか。それにコイツらをみろよ、俺達のこと運ぶ気満々だぞ?何よりこんな面白そうなイベントを逃す手はないだろ。敢えて乗るんだ。」


「ルスキーがそう言うなら、そうしよう。」


「勇者のあんたに任せる。ウチはあんたの指示に従うわ。」


「オオカミさんよろしくね!」


 アォーンと一声。敵意は無さそうだ。


「よし、それじゃあそうしよう。オオカミ達は僕が見るよ。馬と違うだろうから怖いけどね、僕が適任だ。三人とも後ろに乗り込んで。」


「「「了解!」」」


 指示をするまでもなく、当初の目的地シデスに向ってオオカミは動き始めた。

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