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2.バクチ命名

「これは一体どういう状況なんだ…」


 俺は見博 競賭(みひろ けいと)

 確かさっきまでは日本にいた筈だが…今は何かに縛られた様に動けない。

 更に目の前の五人から、絶対魔法の類でしょうと確信出来る何かを向けられている。


「貴様ッ!なんだその禍々しさは!」


 何も分からない俺に対してこの質問を投げ掛けてくる阿呆は、「口を開けば殺す」と言わんばかりのデカい炎の塊をこちらに向けて構えている。


 正直言って厳しいものがある。自分が一番状況を理解していないのにこの仕打ちだ。


「申し訳ないのですが、僕自身も何が何だかわからず…」


 腕も足も何も無い。体は無いようだ。しょうがない、謙ってでも情報を引き出さねば。対異物コミュニケーションの第一歩だろう。


「グゴ…!とぼけるな!貴様は魔天門(デモンズゲート)より出でし者!以前より強者である事間違いなし!」


「加えて魔王様の覇気に当てられているにも関わらず冷静さを保つ精神力、わしにも匹敵する…!」


「精神防御は忘れないでください!洗脳されるかもしれません!」


 殺意の炎属性、グゴグゴ言ってる土属性、アホのジジイは風属性か?そして洗脳被害妄想女は間違いなく水属性だろうな。

 もう1人はメイド?こいつは魔王の側仕えなんだろうな。

 なんて分かりやすい見た目なんだ…見に徹するまでもない。


「四皇の皆様方、助太刀感謝致します。この人間はあろうことか、魔王様の全魔力をもってしても従える事の出来ない化け物にございます。

 異界より呼び出したばかりの為、まだ状態は良くないと思われます。

 現在私の鎖で全身抑えておりますので、魔王様が復活するまでそのまま警戒していてください。」


 なるほど、この会話だけだほとんど分かってしまう。日本からこの魔界のような場所に呼び出された訳だな。しかもさっき倒れた魔王よりも俺の魔力が上…と。何でも教えてくれるじゃないか。

 ちょっと色々試してみよう。

 メイドさんから出ている変なモヤは鎖だったらしい。ギリギリ見える程度だが、なにか変な流れが凄まじい量這っているのが分かる。

 ああ、これが魔力なんだろうな…。なんか腹減ってきた。美味そうだし食ってみよう。


「ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」


「「「「「!?!?!?」」」」」


 あー、これ美ん味いわ。なんか怒りと恐れと絶望の味?フィーリングなんだけどすっごい美味しい。

 すっげえパワー出てきた感じするわ。鎖解いちゃうか。


「よいしょお!」


「「「「「??????」」」」」


 だめだ、こいつら膝から崩れ落ちた。面白すぎる。

 四天王とか言ってたし多分俺めちゃくちゃ強いパターンだこれ。現世でも運良かったし、こっち来たタイミングでなんか手に入れたって感じだろこれ。

 よしよし、試しに魔王乗っ取ってみるか…


「貴様ら、ひれ伏すが良い。我こそが真の魔王、デビルザデモンである。異界より召喚したと聞いたが、我を召喚するとは凄まじい魔力だ。

 そこに倒れている()()()には一流のポストを与えよう。安心せよ。貴様らを無下にすることもない。我が元に大人しく下るならば今後三億年の栄華を約束しよう。」


 三億年も生きられないだろうが知ったこっちゃない。俺は権力が大好きだ。


「なんと…真の魔王と申すか…

 ワシはウチワ、全魔王より発足された魔天四皇、風のウチワじゃ。他は火のダンロ、土のジベタ、水のイズミ。よろしく頼みますぞ。」


「ウチワ!貴様裏切る気か!我ら誇り高き四皇の面汚しが!」


「ダンロ、そう言わずに。この方が本当に真の魔王ならば、我らの抱える問題も全て討ち滅ぼしてくれるかもしれません。」


「グガ…我らの王は未だ健在…早まるな…」


「イテテ…」


「魔王様!?」


「全く…なーにが起こったのよ、もしかして我輩とんでもないもの召喚しちゃった?」


 まずい、魔王が起きてしまった。これでバトルになったらどう戦えばいいんだ。後先考えるべきだった。


「ガハハ!我はデビルザデモン。真の魔王だ。貴様は今までよくやった。魔王は我が引き継ぎ貴様ら魔族の栄華を約束しよう。」


「んー変なの来ちゃったなぁ。お前さんの真名は見博 競賭(みひろ けいと)でしょ?

 我輩がそれ知ってる時点で国家転覆なんて無理なんだよねぇ。可愛い手下達にまで手を出してる感じもあるし…流石にやりすぎだと思うからさぁ、罰は与えなきゃいけないねぇ。」


「や、やめろ!何をする気だ!」


 まずい流れになってしまった。権力に目が眩んだ。俺はいつもいつもこうなんだ。いや仕方ない、こうなれば最終手段を取るしかあるまい。

 部下として働くことにしよう。


「魔の雷を味わえ!サンダ〜…」


「ちょっと待ってください!冗談、冗談です!あまりにも貴方様の部下が頼もしかったのでどこまで出来るのか試していたのです!」


「ふーん、じゃあそういうことにしとくよ。ほんと気をつけてくれよ?我輩はそんなに優しく無いからな?」


「つきましては、貴方様の元でこの身果てるまで仕えたく…」


「魔王様に服従した…だと…?我らが魔王様はなんて素晴らしいお方だ!真の魔王相手に服従を選ばせた!」


「カッカッカッ!ワシは最初から分かっておったわい。」


「グガ…どの口が言う…」


「ソバツカさん、魔領でこのことを喧伝してもよろしいでしょうか?勿論私達、水の管轄下で行わせていただきます。」


「えぇ、それは構いませんが…」


「それじゃあケイト、お前はこれからバクチを名乗れ。これは我輩が付けた名だ。これをもってこれからの働きに精を出すが良いぞ!」


「ははぁ!」


 全くこいつらはなんなんだ。手のひらが回りすぎではないだろうか。

 それはそれとしてなんとか命だけは助かった。どんな下働きを任せられるか分からないが、謀反を起こしたようなものだ。暫くは苦渋を飲んでやろうじゃないか。

 いずれその席は俺が入手してやるから覚悟しておけ。


 懲りないバクチであった。

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