18.来襲の知らせ
魔族優遇措置、これによってシデスに在住出来るものは金のある人間、または魔族のみとなった。その他上下水道の整備、繁華街の増建、狼車を公共交通機関として物流と移動の活性化をした。カジノ行き特急便を設立したことによりカジノの客足は伸び続けている。
狼達は俺のフェンリル変化で手に入れた部下達だ。何度でも無料で乗ることを許可し、それらを一律の税で収めさせることによりカジノと交通の両面での収入を大きく確保した。
しかし細かいところが無秩序に土地開発されていたので、立ち退きと整備に使う金は火の車。ここまでしても財源は整いきっていない。
しかし弱覚醒魔法の整備を確立出来たのが大きい。良い所、悪い所を分別しスラムをなるべく小さく囲うことに成功した。これらは人間との境に置いて盾になってもらう様、カジノの近くに設置。そのせいか負けて鬱憤晴らしをするようなゴミ共に虐待される事件も増えていたが…よっぽどの事情がない限りは公共雇い入れ事業に参加してくる為、被害者も含め段々と減ってきている。自分の身の程を弁えてギャンブルは楽しもう。
月光の書と日抜きの眼鏡についての調査は大きな進展無し。眼鏡は人間達に伝わる秘宝を魔族の国庫に保存しておいたもので、特に実験などもされなかったらしい。要するに体良くゴミを渡された訳だ。それでも何か、いつか俺の役に立ってくれることを願う。
月光の書は未だにまともな情報なし。これも右に同じくいつか。
という訳でサングラスを常に掛けながら活動している。へばりつく変な本とよく分からないサングラスが俺のトレードマークになった。
そんなこんなで一年間は割と平穏無事に暮らせていた…のだが、最近イズミからホトリ経由で勇者接近の話が飛んできている。彼らの戦闘力は高く、一般の魔族では太刀打ち敵わないらしい。今この街を勇者に攻められてしまうと落ちてしまうだろう。当然俺の首だって危うい、リアル首のほうだ。敵対関係なのだからいつかこうなることは予想していたが、こんな早くになってしまうとは。人と魔族の時の流れには、かなりの違いがあると実感する。しかし、そのまま黙って斬られてやる程俺は弱くは無い。
初心者向けの魔導書から始まり中級者向け、ついには上級者向けに手を出しつつある俺の魔法。属性を操ることなど容易く、わざわざ唱えるまでもなく放てる魔法が大多数となってきた。魔力と適性は元々強かったんだからもっと早く使えるようになるべきだったと、後悔している。しかし今使えるのなら問題はない。実戦経験が少ないのが唯一の不安だ。
ということで今日はミルと会議だ。シュセキ、ホトリとその他部下達は本格的な内政派として役割分担を行った。
美少年で賢いミル君はもはや俺の右腕。この都市はミルと俺が居なければ成り立たないのだから当然だろう。これからも俺に着いてこさせようと思う。
「という訳で勇者接近の予報が入ってしまった。あと一ヶ月もしないうちに来るそうだ。どうにか被害を広げずに彼らを籠絡出来る案はないか?」
「そうですね…それならばあえて来賓として迎え入れ、覚醒魔法の温床であるでカジノに誘い込むのはいかがでしょうか?耐性の多い魔族ですら抗えない魔法です、人間にはひとたまりもないでしょう。勇者という点が引っかかりますが…なんとかなるのでは無いでしょうか?」
「いい案だな。その案で採用、と行きたいが勇者達を来賓として迎え入れるのは難しいだろう。なにせこの街は魔族優遇を掲げている。筋が違いすぎる上、大義名分も無さすぎる。 魔王様に対する姿勢としても悪いだろう。
カジノがダメだった時の二の矢が無いのも気になるな。そのまま民兵で刺せるという事も無いだろうし、なんといっても勇者なのだから。」
勇者は地球人の可能性が高い。もし仮に日本生まれならばギャンブルも毛嫌いしているかもしれない。
「…それではこれから人間を受け入れる政策を取り入れるのはどうですか?一ヶ月ならギリギリ間に合うのでは無いでしょうか。」
「そっちも厳しそうだな、一ヶ月では少し足りないだろう。差別まで行かないがやはり蟠りは強い。
…仕方ない俺が少し話をつけることにする。彼らとは同郷の可能性もあるからな、話せば通じるかもしれない。」
「それを一の矢と?貴方が居なければこの都市は破綻します。本当にいいんですか?」
「構わない。それにお前の案を断っておいて代案が無いなんて、俺自身許せないしな。しかし、最終的に奴らをカジノに誘い込むのは賛成だ。俺が少しばかりそれの手助けをする。そこまで難しいことはないさ。」
「バクチさん…!」
調査によれば、人間達の都市だって娯楽に飢えている。仮に日本人だったとしてもこの世界の娯楽の無さにはウンザリしているはずだ。ゲーセンでスロットやコインゲームをしたことくらいはあるだろう。延長線上だと説得出来れば俺の勝ちだ。
「よし、そうなればもう待つ必要も無い。奴らの足を奪いに行こう。馬共を狼に襲わせてそのまま護送させてしまえ。これならシデスから易々とは出られまい。ミル、都市民に通達をしろ。ホトリをにも話を通しておけ。」
「分かりました!」
勇者のパーティは四人。男二人と女二人だ。
どこかきな臭い雰囲気は感じている。このタイミングでの勇者来襲など疑わざるを得ない。いつかじゃなく、今であることが問題なのだ。警戒するに超したことはないだろう。
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