14.失脚
ホトリが男の娘だったり、ウンネイに俺のムスコを見られたりの騒ぎも束の間。どうやらカジノの付近で爆発があったようだ。内部分裂などの期待もできるため、何はともあれ準備一択。ホトリには魔法検査官も連れて来るように指示した。
「当官はウンネイ、この街の運営官である!そこの衛兵、何があったか詳しく説明したまえ。前置きは省略を許可する。」
「はっ!先程、例のカジノの横にある民家が爆発致しました。つい今しがた、ホトリと名乗る女性が魔法検査官を連れて来ましたので調査させております。」
やっぱ女に見えるよな!?良かった〜俺だけじゃなくて。特別見る目が無いって訳でも無さそうで安心した。
「報告感謝するのである。引き続き住民を誘導するように頼む。」
「バクチ様、ウンネイ様、お待ちしておりました。今捜査が終わったところです。あ、失礼しました。僕はミルと言います。まだ会ったことはありませんでしたが、バクチ様に属します魔法検査官です。」
うーむ、美少年でなんとも可愛らしい。しかし歳はいくつだ?パッと見15位か?あまりにも若い。
「これからは仕事を任せることも多くなるだろうからよろしく。俺はバクチだ。検査の結果は…いや、その前に君の性別を教えて貰えるか?」
「男ですが…?」
このタイミングで現れる美少年。お約束では女の可能性もあっただろう。しかし俺に向けられたこの疑問の眼、間違いなく男だ。良かった。良かったってなんだよ。
「すまない、それで魔法痕はあったのか?」
「その前に失礼します。」
そう言うとミルは俺に光属性的な何かをファーンと掛けてきた。無礼者め。失礼しますでは伝わらんだろうが。
「結論から言うとありました。しかしこの魔法は爆発ではなく火属性ですね。何かしらの爆発物に引火したものだと思われます。皆様仰られていますが、ほぼ間違いなくグロウゴ組の抗争によるものでしょう。
それと…カジノの入口には盗聴魔法が仕掛けられていました。
今かけた魔法はバクチ様についた盗聴魔法を解くものです。僕の得意魔法なので。」
ニヤニヤとしながら話すミル。可愛いなこいつ。まぁ、仕事できるしOK。これからも使い倒してやろう。
「よくやった。君はとりあえずそのまま待機していてくれ。また呼ぶことになるかもしれない。
…ウンネイさん、どうしますか?部隊もいますし突入するのも手かと。ホトリもいますし、チャンスですよ。」
チャンス、チャンスか。チャンスってのは台によってマチマチなのだ。0.1パーセントから60パーセントまで幅広い。信頼度ってのは信頼出来ないもんだ。…話が逸れたな。
しかし何やら難しそうな顔をするウンネイ。こんな千載一遇滅多にないだろうに。罠でも警戒してんのか?
「ウンネイさん?」
「…私達は待機とする。何か嫌な予感がする。」
気持ちは痛いほど分かるがな、ここは引き時としてはあまりにも早すぎるぞ。今は押し時。なんとか説得だ。
「いえ、このタイミングを逃すのは愚考かと。立場上ウンネイさんの下ではありますが、魔王直属としてここは私に任せていただけませんか?」
「そういうことであれば良いが…精々気をつけるのである。」
不審だな。何か隠しているのかもしれない。手駒が少ないとこういうことになるから嫌なんだ。誰かウンネイの素性を知るものはいないのか。
「魔族のお兄さん!」
その声はプリティーなロットちゃんじゃないか。カジノ関係者がこのタイミングで飛び出してくるとはまたまたきな臭いな。
「ロットちゃん、何があったかわかるかい?」
「多分カジノの裏にいる組織ってやつだと思います。私も怖くて…給料がいいので働いてたんですけど…もう…」
ふーん、正直に話すんだ。疑心暗鬼になってしまうな。ロットは子供だろうし、裏社会と通じてるなんてあまり疑いたくない。さて、どうしたものか。
悩んでいると頭に声が響いた。
(バクチ様、聞こえますか?今魔力を通じて話しています。)
(聞こえるが俺の声は聞こえるのか?それ。)
(…聞こえていると信じます。今はとにかくウンネイから離れてください。その方は何か裏があります。)
聞こえて無いみたいだ。念話は片方が使えなければ一方通行、覚えておこう。…なら何故聞こえますかと聞いたんだ。ボケのつもりか。俺も俺で独り言を心の中で呟いたアホだ。クソッタレ。
そしてウンネイに裏がある?あの表情はやはりグロウゴとの関わり故か?果たして信頼出来るやつは俺の近くに居るのだろうか。
とりあえずは現場を見てみてるか。
「これは…爆破油であるな。人間達が魔族に対抗する為に作った兵器用ものだと認識している。」
魔族が勢力を弱めたのは恐らく人間の技術力もあるのだろう。魔法を得意とする魔族がここまで追い詰められるということだ。四皇連中も手を焼いているだろうな。ダンロなんかはメタを張られているし、イズミも油に水と。ウチワは火に酸素を供給してしまう。頼りになるのはジベタ、攻略の足がかりだろうな。
「爆破油は魔領での流通は禁止されているはずです。これは由々しき事態ですよ。」
ウンネイの責任だ。もう完全に流通も握らせているのかもしれない。知っての通りこの街は治安が悪く、衛兵や門番がどこよりも厳しく取り締まっている。そんな中危険性のある道具の流通など、ウンネイとグロウゴとの関係はもはや否定出来ないだろう。
となれば俺が取る行動は…一つだな。
「衛兵!”元”運営官のウンネイを捕らえよ!こいつは魔族にもかかわらず人間の裏社会と繋がり、この街を危険に貶めている可能性が高い!捕らえぇぇぇい!」
周囲に衝撃が走り、集まった野次馬がざわつき出す。衛兵達は目に困惑を浮かべながらも腑に落ちる所があったのか、続々と槍を構え始める。
「バ、バクチ!何をしておるのだ!当官は誓ってそのようなことしておらぬ!」
「聞くな!洗脳されるかもしれない!禁魔の拘束具を掛けよ!」
「バ、バクチィぃぃぃぃ!」
ウンネイは拘束具をつけられ、そのまま牢獄方面へと連れ去られて行った。これで有罪なら名実共に俺が運営長だな。
「今この瞬間から運営長は、このバクチが代わる!俺の指示に従うように!」
衛兵は雄叫びを上げ俺に忠誠を示した。これだよこれ。
「これより我々はカジノ及びグロウゴ組の検挙に入る。心して掛かれ!」
「「「ハッッッ!」」」
悲しそうな目を浮かべるロットちゃんが印象的だった。
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