11.魔法を学びたい
「バクチよ、この金貨15枚はどこで手に入れた?」
「商売です。私は商売が上手いので一日あればこんなものですよ。」
「貴殿、嘘をついているな?」
「…そのようなことは。」
「貴殿自ら言うのであればお咎めなしとも言えたが…そのような態度では処分は避けられないであろう。
今日夕方に貴殿が赴いた賭博場は…何を隠そう。この街にある大きすぎる膿の一つである。当官らも手をこまねいていたのだが、まさか補佐官ともあろうものがあんな店に自ら入っていくとは。
故にあそこには常に監視が着いていたのだ。貴殿が店に入ったのはもう既に確認済みである。」
なんということだ。この街は腐敗に完全に負けているということになる。まぁ俺は勝って帰ってきた訳だがな。ガハハ。
いやしかし笑い事では無い。せっかくの補佐官生活がお釈迦になりかねない事態だ。どうにかせねば。
「あそこには人間が多い。つまりあのカジノには何かしらの秘密があると考えられます。私も考え無しに行ったわけではありません!
言い訳を考えるのが難しかったので敢えて濁したのです!信じて頂きたい。」
「…それではそういうことにしておく。言っておくが今回だけだ。ゆめゆめ忘れるでないぞ。」
ふぉぉぉぉ、どうにかなった。咄嗟に考えた言い訳にしてはよく出来たかもしれない。さっき自分で言ったことだが、間違いなく何らかの秘密はあるだろうな。
考えられるものとしては異世界人、それも地球人の関係とバックに付いている暴力組織的ななにかだ。面倒なことになったな。
「あのカジノですが、もしかして召喚者や異世界人などの関わりがあるのではないでしょうか?
奇しくも、この私自身魔王様に呼ばれた召喚者。あの雰囲気には覚えがあります。」
「ほう?貴殿異世界人と同郷なのか?あれは地球の文化である。
150年程前の話になるのだが…こぞって人間どもが召喚者を呼んだ年がある。彼らは全て地球人を名乗ったのだ。」
「私も地球人です。今は魔族として魔王様に仕えて居ますが記憶などは全て残っています。」
「やはりそうか。その姿はあまりにも他の魔族とはかけ離れているのは分かっておるのか?魔王と言われても遜色のない見た目だ。
召喚されてすぐにそのような見た目を希望するのはこの世界ではほとんどありえないと言っていいだろう。勇者に殺される可能性があるからな。
ここまで言えば分かるであろう?その150年前に呼ばれたもの達こそが勇者なのだ。一人や二人ではない。そこ全てが勇者であった。つまり貴殿にも勇者の血が流れているのだ。」
俺は勇者であり魔王なのか…とんでもないことだ。覚醒魔法とかいうよく分からん魔法が発現したのもそこら辺の要因がありそうだ。
買って正解だったな。魔導書を読み漁ることにしよう。
しかし150年も前の話だぞ?骨になった地球人なんか見たくもない。
「その勇者たちはどうなったんですか?地球では寿命は精々100年まででした。ほとんど死んでいるのでは無いですか?」
「そうであったか。寿命は100年…。そんな事すら今の魔族は知り得なかったのだがな…結論から言うとほとんど生きておるぞ。
最も未だに勇者としてやっているのは四人程度である。彼らは人間どもが期待した程に戦いに力を出すことは無かったのだ。」
「と言いますと?」
「奴らは半数以上が日本という国の生まれだそうだ。他の国よりも争いを好まなかったと聞いてる。貴殿は違うだろうがな。」
俺も日本生まれじゃボケ。誰が血気盛んだコラ。
「ははは、そうですね。」
「そろそろ日も沈む。本日の業務は終了であるな。
貴殿の部屋はこの館の二階一つ目の部屋である。身一つで来た事も考慮してベッドやらタンスやらは用意しておいたので使うが良い。他の部屋には入るなよ?内職している者の邪魔になるからな。そして明日は休みである。この機会に色々やってみると良い。」
「ありがとうございます。助かります。」
初日はカジノで遊んで終了と。一応公務員的なポジションなのにも関わらずこんなことでいいのだろうかね。
まぁ金が足りないんじゃしょうがない。むしろ副業が推奨されるような始末だからこんなもんだろう。あーもうめちゃくちゃだなぁ。
とりあえず部屋に入って魔導書を読むとしよう。この白紙の本も気になるしな。
――――――
一応の体裁だけは保っているようなボロ館を進み自分の部屋に入ると驚きが二つ。
一つは家具について。ベッドとタンスはまぁまぁ、普通って感じの見た目の物が置かれてある。しかしこの椅子と机である。DIYでもここまで酷くはならないだろうと思えるような見た目をしている。これは酷い。そんな机の上には不思議な見た目のランプが一個置いてあり、恐らく魔力を通して付けるとかそんな感じだろう。
二つ目は部屋窓についてだ。こんな金を持ってるやつが集まりそうな建物、標的にされやすいんだろうな。窓に木材があり、侵入を防ぐような貼り付け方をされている。この街の治安を示している。とてもじゃないが安心して眠れないだろう。ウンネイは本当に苦労してるわ。
ベッドの横にあるランプ置きに明かりを設置して魔力を通すと、案の定光った。魔力の操作は出来てるっぽいんだけどなぁ、属性ってのが本当に分からない。イメージとかそんなんじゃないのか。
疑問を解決してくれるだろうこの魔導書を読んでいこうと思う。
(なになに?初めて火属性魔法を使う時は理論を用いましょう。火というのは本能的に恐れられるものです。感覚で使おうとしても上手く行きません…なるほど。)
こんな調子で火、水、風、土と読んでいくが、風は中々使いやすい魔法のようだ。魔力素人の俺でも出せたんだからそんなもんなんだろう。しかし覚醒魔法についての表記は無かった。ソバツカさんの言う通りよっぽどのものでない限り明記されないのだろう。
しかし、四属性時限爆発魔法の表記はあった。覚醒魔法の元となる魔法らしく、得意魔法の一種だという。得意魔法はあれだな、一人一人に宿る能力ってことなんだな。
そしてこの魔法は個人差が強く自分の根幹の部分が効果になるのだと言う。つまりこれの一つが覚醒魔法なのだろう。俺の根幹にアブナイ何かがあるってことか?余計なお世話だ。
魔力量は産まれた時に決まり属性の適性も同じ。威力に関しては頭打ちになる可能性もあるが、それまではどんどん伸ばしていけるらしい。だが適性がないからといってその属性の魔法が使えないということはないらしく、練習次第で使えはするらしい。全適性がなくそれでも鍛え続けた魔法使いが昔居たとのことだが、それは同じ著者の別の本を購入してくださいときた。舐めやがって。
初心者向けが俺に刺さったのだろう。本の通りに練習してみると全属性手のひらサイズなら扱えるようになった。ほんでこれを混ぜ混ぜすると爆発するってことだ。魔法はこれからもちょいちょい練習していこう。いざという時に備えて損なんかないからな。この街では自衛も大事なのだ。
肝心なのは月光の書。例の白紙本だな。これについては…まるで分からなかった。月光に照らせば見えたりするんじゃないかという思考回路の元、色々やってみたが結局は徒労に終わった。これらは全て税金を勝手に使って買った為ウンネイさんに聞く訳にはいかない。ババアも早く売りたがってた訳だからある程度簡単な事は試したのだろう。こういう時こそ知恵が必要なのだがそんなツテはもちろん無い。困ったもんだな。
幸い明日は休みだ。こういう時の定石は酒場に行って情報集めだろう。明日は酒場に行くとしよう。
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