10.使っちゃいけないお金
どうせスラム街では端金しか掛けないだろう。俺が求めるのは多少金を持っている奴らとのギャンブルだ。繁華街に向かう。
しかしその最中とある本屋を見つけたので入ってみることにした。どうせこんな街の仕事だ。サボってもいいだろ。
「いらっしゃい。こんな場所で本を見ようなんざ変わったガキだねぇ?ヘッヘッヘ。なぁに悪いようにゃぁせん。どんな本がお望みだい?」
小汚い街と一体化している店ではあったが中々本の数が多い。店主は気味の悪いババアだが…色々物色してみよう。
「俺は魔法が苦手なんだが何かしらの指南書はあるか?どうしても使えるようになりたいんだ。」
「ヘッヘッ、それならこの月光の書はどうだい?噂によるとかなり貴重な品だという。これ一冊で魔族金貨30枚。だけどアンタの財布事情は…恐らくこれがギリギリ買えるかどうかってとこだろうね。
どうだい?初心者向けの魔導書とセットで金貨10枚だ!買得だろう。」
なんて分かりやすい…このババアぼったくりに来てやがるな。そして俺の財布事情を完全に把握してやがる。値切るしかあるまい。
「10は出せない。8ならどうだ?」
「ヒヒヒッ!まいどぉ!」
こうして俺は街の運営費で魔導書を二冊手に入れた…が。
「なんだこれは…白紙の本だと!?」
「もうアンタのもんだよ。そいつは文字通り手放すことが出来ないからね。ヒッヒッ!」
「なんだコイツは!必ず戻ってきやがる!クソっ!離れろっ!ババアてめえ!」
何度本を投げても俺の服に入り込んでくる。
「どうにかならないのかこれ!」
「ああ、その白紙の本の中身を読んだろ?そこに答えが書いてあるってのが通説だよ。読めたやつは一人もいないがな!ヘッヘッヘ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
――――――
という訳で為になる本一冊が手に入りゴミ一個がまとわりつくことになった。サボりはするもんじゃないな。
こんな萎えた気持ちでギャンブルなどできるか。そう思った俺は飯を食い再び探索をしていた…その時だった。
「お兄さん!うちで遊んでいきませんか?楽しいですよ!」
人間の女の子に話しかけられた。中学生くらいの幼さだが…その身なりは只者ではない。自然体で収まる範囲ではあるが一級品の服やアクセサリーを付けている。
金の匂い感じちゃいます。
「どういう遊びなんだい?」
「カジノです!人間の間で流行ってる賭け事ですよ!
魔族のお兄さんには少し難しいかなぁ〜?えへへ。」
このメスガキィ…!賭博のプロであるこの俺様に向かって少し難しいかなぁだとぉ…?
しょうがない。少し手本を見せてやるとしよう。
「分かった連れていけ。後悔させてやる。」
「そうこなくっちゃ!こっちですよ!」
日の目浴びぬ路地裏方向に向かって歩き出すガタイのいい魔族と女子中学生。完全に事案である。
「ここは…」
突如として現れるネオンライトの光は路地裏というにはあまりにも明るすぎた。そして科学的だった。
「お客様ご案内でーす!」
「ロットちゃんいつもありがとうね!
いらっしゃいませ。お客様この店は初めてですか?当店ではメンバーズカードそして現金からチップの購入が必要です。このチップは遊戯に必要ですので必ず購入してください。現金の賭けは不可能です。」
場所代と遊びの提供に中抜きは必須って訳か。しかしこの感じ…この店だけは地球からカジノごと引っ張って来たかのようなデザインだ。俺からすると珍しさのめの字もない。探ってみるか。
「人間の店と聞いたが他で見た所…ほかの店とは全く違う見た目をしているな。オーナーは誰だ?」
「お客様、そういった質問はVIPの方にしか答えておりませんので。ある程度の貯チップまたは寄付額に基づいて決められる特別待遇です。申し訳ございません。」
それを聞いて俺はニヤリとする。
「なるほど、勝てばいいわけだ。」
「左様にございます。」
華麗なニヤケ返しだ。美しい。やはりギャンブルに携わるものはこうでなくてはならないだろう。
「ルールを説明してくれ。」
「当店一般のお客様に提供している娯楽はブラックジャックと呼ばれるカード遊びでございます。掛け額は最低額がありチップ1枚から。最高額はありません。」
まさかの青天井である。これは裏があるぞ。しかしそれを察している雰囲気を見せるのは素人だろう。あえて乗るのだ。
とはいえ予算は金貨21枚と銀貨だの銅貨だのが少々。
「チップのレートは?」
「小さなチップは1枚で銀貨1枚。大きなチップは金貨1枚です。現金との交換の際に1パーセントの場所代を頂くシステムになっております。」
いわゆる非等価交換というやつだな。これで店側が仲介料を取る仕組みだ。
とりあえず最初は小さく、と行きたいところだが張れる所まで張って見せよう。
「ここに金貨20枚ある。全てチップにしろ。」
「っ!?かしこまりました。」
飯代が銅貨数枚だ。恐らく200万円程度のチップだろう。使っちゃいけない金でギャンブルする時が一番ハラハラする。しかしここで引いてはいけない。駆け引きだ。
「それではご案内致します。こちら大チップ18枚と小チップ20枚になります。ご確認を。」
テーブルを確認する。ディーラーは綺麗所を揃えているらしく、下品な顔でディーラーを見るおっさんやタコ負けしている魔族の様子が見られる。
あ、魔族が暴れそうだ。と思った矢先後ろから怖い兄ちゃん達が出てきて制圧。そのまま裏に連れていかれてしまった。ヤーさんの気配ってやつか。
ブラックジャックはディーラーとプレイヤーの勝負だ。一見P有利と思われがちだが、実際はDの方が有利なゲームである…詳しくはwikiでも見てくれ。
そこで問題になるのはDの行動である。シャッフルが行われた直後のみPとDの差が極めて小さくなるのだが…シャッフルのイカサマなど、散々やり尽くされていることはご存知の通りだろう。手品だって一種のイカサマの様なものだ。(諸説あり)
その点で言うと…あそこだな。ロットとか言ったか。ディーラー兼客引きのようだが覚束無いシャッフルをしている。使っているデッキも一つ。プレイ中に客と話す気配もないしここが稼ぎ所と見た。
「ロットちゃんだったか…?さっきはどうも。よろしくお願いするよ。」
「魔族のお兄さん!ここでは私と勝って負けての大勝負だよ!どんどん張ってね!」
「よろしくなあんちゃん。俺とこいつはロットちゃんのファンなんだ。最近は負けが込んでるが最初はかなり盛ったんだぜ〜?」
「よろしくな!」
「よろしくお願いします。」
冴えないおっさん二人が挨拶してくるがお前らに興味は無い。俺が見るのはロットの手元とカードのありかそれだけだ。
「それじゃあ始めます!さぁ!かけてかけて!」
一回の勝負で全額掛ける訳にはいかない。万が一負ける可能性もある。ここは…
「大チップ10枚だ。」
「あんちゃん掛けるねぇ〜!金持ちのボンボンか?」
余計なお世話だ。ギャンブル中の俺に話しかけるな雑魚が。
「…配りますね。」
子気味いいカードの摩擦音が鳴り響く。
調子の良さそうにカードを配るロットだが、俺はずっとこのテーブルを見ていた。シャッフルを観察していたため、次どのカードが出るのかはわかっている。
一番最初にカードが配られる右端に座った、そんな俺の手札にエースが来る確率は…100パーセントだ。
「エースか、運がいいねぇ。やっぱり金持ってるやつは引きが違うのかねぇ?前に居た若いやつ…たしか異世界召喚がどーたらと言っていたな。あいつもすーぐVIPに行っちまったもんなぁ。
世の中不平等だよ。不平等。」
平等などこの世に存在しない。知っているやつが勝ち、知らない奴が負ける世界だ。賭場においては不利をいかに消せるかが勝負と言っていい。
だからそんなんなんだおっさんや。
「ブラックジャックだな。ロットちゃんのお陰だよ。ありがとう。」
「ぐぬぬ…」
おっさん二人は負け。ロットちゃんは21で俺だけがブラックジャック。配当金は大チップ25枚だ。退こう。
「ロットちゃんまた来るね!今日はありがとう!」
「次も絶対来てくださいね!次はもっと長く遊んで欲しいな〜。」
「分かったよ。それじゃまたね。」
そういい俺はロビーに向かった。
「ありがとうございました。お客様、こちらのチップは貯めていきますか?それとも交換で?」
「交換でよろしくお願いします。」
「それではこちら金貨44枚と銀貨55枚です。ありがとうございました。」
儲け儲け。本の値段分も回収出来たし万々歳だな。これを持って明日もここに来よう。
―――
使用金額 金貨8枚と20枚=28枚と銅貨すこし。
回収 金貨44枚と銀貨55枚。
全財産 金貨45枚と銀貨55枚と銅貨いっぱい。
お読みいただきありがとうございました。よろしければ感想、評価、お願い致します。
本来はカジノ経営などに振り切りバクチ自体に賭博させるつもりは無かったのですが、バクチくんは賭博のプロなので自分から進んでカジノに行ってしまいました。
このままでは作者の思った通りに舵取り出来ないかもしれないと恐れ戦いています。生みの辛さってこれでしょうか。ヒーン。




