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1度目はリア充達を見る人生  作者: セセラギ
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第三話 椿谷華乃(2)

 女子と二人きりで下校とか一度目の人生にはなかったイベントだ。転生してわずか一日でこんなに人生が変わるとはただ驚かされるばかりである。超美少女と普通以下の男が二人きりで歩いてるせいか、すれ違う人達からの視線を強く感じる気がする。


 「着いた着いた。ここだよ!」


 立ち止まったところは高層マンションであった。やはり予想通りというか、上品な雰囲気の通りに金持ちのお嬢様だったか。


 「家賃の高そうなマンションだなぁ」


 「どうなんだろう? 入って入って」


 「ご両親とかご兄弟とかは今は家にいないの?」


 「いないよ。ここは私の一人暮らしの家だからね」


 「……はっ? マジで?」


 「マジマジ。少し訳ありで私だけ高校に通うために引っ越してきて一人暮らししてるんだよね」


 「な、なるほど……」


 美少女の闇は少し深いのかもしれない。と思うのと同時に、女の子の一人暮らしの家に行くのかというドキドキ感が襲ってきた。それはまずい。さすがにまだ心の準備ができてないって。

 オートロックの玄関ホールを抜け、エレベーターに乗り促されるままに付いていく。


 「引っ越してきたばかりで散らかってるかもしれないけどどうぞー」


 「お邪魔します」


 「なんでそんなにオドオドした感じなの」


  自然と強張ってしまっていた様子を見て椿谷さんは爆笑した。初めて一人暮らしの女の子の家に入るから仕方ないだろ、ちくしょう!

 とりあえず玄関は少しも散らかっている様子はない。リビングに入っても同じく散らかっている様子はまったくない、というか物自体があまりなく生活感も感じられない程である。部屋の隅の方で洗濯物が干してある部分が唯一生活感を感じられるところであるが、それよりもピンク色の下着がかかっているのに目がいってしまう。

 視線の先を見て察したのか椿谷さんは恥ずかしそうにしながら小走りで干していた下着を手に取り隠した。


 「風見原君のエッチ! 着替えるからそこにいて!」


 そう言うと隣の部屋に行きドアを閉めた。隣が寝室なのだろう。それにしてもまさかいきなり下着が見れるとはラッキーだった。今どきの高校生はあんなセクシーな下着なのか。ふう。

 言いつけ通りに動かくことなくその場で待っているとゆっくりと閉めていたドアが開いた。隙間からちょこっと顔を覗かせてこちらの様子を伺っている。


 「言われた通りに動かずに待ってたけど」


 「女の子の家を漁らないなんて偉いじゃん」


 「いやいや! 男にどんな印象もってるのさ」


 突拍子もないことを言いながら隣の部屋から出てきた。私服に着替えており一気に大人っぽさが増している。女子大生と言っても絶対騙せれると思う。そして制服よりも短いスカート?キュロット?太ももが強調され、さらに世の男性を魅了してしまうだろう恰好であった。


 「準備できたなら外に行くかい」


 「そんな慌てなくていいよ。ちょっと休憩しよっ」

 

 そう言うと居間にある二人掛け程度の大きさのソファーに座った。ここで過ごし続けるのは精神的にどうにかなりそうだったので外に行きたかったがやんわりと却下されてしまった。


 「ねえねえ、いつまでも立ってないで隣に来て座りなよ」


 空いているソファーの隣をポンポンと叩いている。

 二人きりでそんな至近距離は本当にやばい。理性が保てる気がしないぜ。


 「早く早く」


 ここまで言われたら行くしかない。

 ソファーの隣へ座ると予想通りほとんど密着状態になってしまった。シャンプーなのか、フェロモンというやつなのか物凄く良い匂いがする。冷静さを保てるスキルでも身に着けておけばよかった。


 「あ、そうだ、ちょっと待ってて。そう言えば見せたいものがあるんだっ!」


 いきなり立ち上がるとまた隣の部屋へ入っていった。見せたいものとはなんであろうか、まったく見当もつかない。


 するとすぐに戻ってきた。何か手に持っている、どうやら本のようであるが、アルバムとかだろうか。しかし見覚えがあるような……。


 自分の過去からの記憶を探ろうとしたがそんなに過去に戻らずともすぐに思い出した。思い出すと同時にあまりの衝撃に言葉が出なかった。それは昨日から自分も所持しているあのスキル書だった。


 「その反応を見ると、やはりそうだったんだね。あなたも過去に戻されたんだ」


 自分一人だけが特別な過去の世界だと思い込んでいただけに、まったく予想だにしない展開だった。

 彼女は本を持ったまま、先ほどと同じくにこやかな表情をしている。 


 「風見原君の自己紹介、前の人生の時はなんて言ってたか覚えてないんだけど、あんなユーモアのあることは間違いなく言ってなかったのはわかったからもしかしてと思ったんだ」


 こちらは自分と同じ境遇のものがいるなんて一ミリも考えなかったが。


 「ねえ、私になにかスキルかけたでしょ? 魅了の理ってやつ?」


 「はい、その通りです……」


 「自己紹介してたらいきなり変な感情が沸いてきて、物凄く風見原君が気になってきたんだよね! そうかーびっくりしたなぁ」


 別に怒っている様子とかではなかった。スキル書を持ちながらソファーの隣へまた座った。


 「ねえねえ、二人で協力して今後の人生良くしていかない?」 


 今までのにこやかな表情から一変、本気で言っているだろうということがその真面目な表情から伺える。


 「二人で協力してスキルを取得、使用していけば本当に無敵だと思うんだよね。デメリットはないと思うけどどうかな?」


 たしかにデメリットは多分ないはずだ。しいてあるとすれば欲望に満ちたエロいことにスキルを使用できないことぐらいか。しかし突然の展開に頭の処理が追い付いていない気もする。


 「……ちょっと一日考えさせてくれない? 全然考えがまとまらない」


 「全然大丈夫だよ! あともう一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」


 「どうぞどうぞ」


 「死ぬ直前の記憶ってある? 過去の記憶っていつくらいまである?」


 今まで特に気にしてなかったがいざ言われて思い出してみると、特に何事もない日常で毎日普通に働いている記憶しかない。


 「私は25歳の5月までしか記憶がないんだけどどう?もしかして同じだったりしない?」


 「……そうだね、25歳の5月だ」


 驚いた。なんでわかったんだ。記憶にあるのは社会人として働き出してから三年目、25歳のゴールデンウィークの記憶だから間違いなく5月だ。


 「6月以降、死ぬまでの間にきっと何か共通してることがあるってことだよね。だから記憶もないし不思議なスキル書もある」


 椿谷さんは見た目よりもずっと思慮深くなかなかに洞察力が鋭いタイプのようだ。


 「そう言えば、私のスキル書少し見てもらえる?」


 「別に同じだと思うけど何かあった?」


 「本当に同じなのかなと思って」


 なるほど、たしかにそうだ。本当によくそこまで頭が回るものだ。

 スキル書を受け取り何ページかめくる。


 「えーと、特に同じような……いや、待てよ」


 同じスキルしか書いてないと思いきや、その同じスキルでも取得条件が違うことに気付いた。そしてその後も読み進めるが、スキル自体も見たことないようなものが多々あった。


 「共通してるスキルがほとんどだけど、違うスキルもそれなりにあるね。例えばこの料理の礎(りょうりのいしずえ)とか、水中呼吸(すいちゅうこきゅう)とか俺のスキル書にはなかった」


 「やはりそっかー。私の趣味料理だし、前に水泳習ってたし、きっとその人の生い立ちでその人専用のスキル書になるんだね!」


 言い終わると突然表情が曇った。


 「同じ現象で過去に戻ったのって私達だけなのかな? スキル書も人によって違うみたいだし、他にも同じ境遇の人がいるような気がしない?」


 本当にその通りな気がしてきた。もしそうだとしたら人それぞれで都合良くスキルを使うだろう。そうなると考えたくはないが、スキル使用者同士で争うことになってもおかしくはない。やはり今後は協力していった方がいいのか。


 「とりあえず、明日俺もスキル書持ってくるわ。ちょっと今日は一人でゆっくり考えてみる」


 「はーい。じゃあ、真面目な話はこのへんでやめよう!」


 スキル書を自分の部屋に戻しに行き、すぐに戻ってくるとやけにニヤニヤとしている。


 「ねえねえ、高校生の体ってなんか軽くて心の内から元気がみなぎってくる感じしない?」


 「まあ……10年くらい前だからそんなに変わらないと言えば変わらないけど、軽いと言われればそんな気もしてくるかな」


 「若い体っていいよねー! ……してみる?」


 「は!? するって……えっ」


 「心は前の記憶があるから処女じゃないけど、体はこの時はまだ処女だよ」


 もじもじしながら恥じらいの表情をうかべている。


 「じょ、冗談だよね……?」


 「んー、冗談ではないかな」


 「そ、それも明日! 心の準備が!」


 「もしかして、体も……心も童貞?」


 「そ、そうだけど……」


 「それなら仕方ないなぁ。明日相手になってもらおう」


 そういう彼女の表情からは本当に残念っぽさが伺えた。まじだったのか。


 「これも俺のスキルの効果?」


 「どうだろう? 少しくらい関係あるのかもしれないけど、でもわからないや! 多分スキルはそんなに関係ないと思うよ!」


 スキルのおかげか、同じ境遇による仲間意識のおかげか、真相はわからないが男として相当惜しいことをしたのは間違いない。俺の臆病者め!


 「じゃあまた明日ねっ!」


 「おう、また明日」


 にこやかな表情で椿谷さんは手を振ってくれている。まあ明日なんてすぐに来るしな。



 今日あったことを思い返しながら家に帰り、自分の部屋へ入ると机が光っていることに気付いた。いや、机ではなく机の上に置いてあるスキル書だ。

 手に取ると間にある1ページだけが眩しいくらいに光り輝いてるいるのがわかった。恐る恐るその1ページを開いてみると昨日一通り見たときになかった『禁術』の項目が増えており初めて見るスキルが加えられていた。


 スキル名:栄枯のスティール(えいこのすてぃーる)

 効果:対象の相手の能力、才能を奪い自分のものにする

 使用リスク:良心の呵責(しっせき)

 達成条件:20代までの一人暮らし女性宅にて二人きりで過ごす


 他のスキルと違いレベル表記がない。そして効果がすさまじい。禁術というからにはレアスキルみたいなもんだろう。本来は禁術は使用リスクがあるみたいだが、このスキルに限っては相手の才能を奪う、言い換えれば人生そのものを奪うという意味にもなるということでそれ自体がリスクとして設定されているようだ。特定の隠し条件をクリアすれば自然とスキル書に現れる仕組みなんだろう。

 

 なんかいきなりチートみたいなスキルを手に入れてしまったな……。早速明日椿谷さんに報告してみるか。


やっと1万文字突破しました。

本当は毎日更新したいんですが普通に仕事してる身なので遅いときは4、5日かかってしまいます。


何か気になった点、改善点などありましたら教えてください!

感想、評価などがあれば物凄く喜びます!

今後もよろしくお願いします!

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