〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(35)〜『ストローク技術の進化に対応せよ』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(35)〜
『ストローク技術の進化に対応せよ』
1. まえがき;
2020年11月のATPファイナルズ・ロンドン大会をTVで見た。
ダニール・メドベーデフ選手が優勝した。
ラウンドロビンでは、ズべレフ選手を6−3、6−4、ジョコビッチ選手を6−3、6−3.シュワルツマン戦手を6−3、6−3で破り、
決勝トーナメントでは準決勝でナダル選手を3−6、7−6、6−3で破り、
決勝戦ではティーム戦手を4−6、7−6、6−4で破り完全優勝であった。
メドベーデフ選手が優勝した理由は、相手選手の頭脳がアンティシぺ―ション(予測)を感じ始め、打球地点に到達するまでの時間を遅らせるストローク技術を身に着けていたからである。その効果がはっきり出たのがジョコビッチ選手との対戦であった。
ジョコビッチ選手は現在のプロテニス選手の中で予測能力が一番すぐれている選手である。『予測能力に優れている』とは、相手選手が打ったボールの落下位置(自分の打球位置)に向かって走り始めるタイミングが早いと云うことである。
今回はその進化したストローク技術を分析する。
2. 贈る言葉;
『進化したストローク技術』とは何かを簡単に表現すると『ラケットを振るスピードが速い』と云うことである。
打球する時、まずプレースメント位置(ボールの落下地点)を決めると同時にラケットのテークバック位置からインパクトポイントに向けてラケットを振り始める。この瞬間に、打球選手の頭脳から『気の玉』が落下地点に向けて飛んで行く。その『気の玉』を相手選手は感じ取り予測を始める。そして、返球するための打点位置(ボールの落下地点)に向かうための命令信号が頭脳から筋肉に向けて発信される。この命令信号が発せられるまでの時間の速さと、命令信号が筋肉に到達し筋肉が動作をし始めるまでの時間の速さがアンティシぺ―ション(予測)能力である。
従って、インパクト点に向けてラケットを振り始めてから打球する瞬間までの時間が短いほど相手選手はボールに追いつくことが困難になるということである。
ボールが飛んでくる方向を目で見てから打球地点に選手は走ると思っている人がいるが、それは違う。テニスのトッププレーヤーの場合は、打球する相手選手の『気の球』を感じて走り始めるのである。だから、ボールを打ち合う距離が短い卓球選手などは予測能力がなければトッププレーヤーには絶対になれない。
ラケットのテークバックの仕方には2種類ある。
円弧を描いてラケットを連続的に動かしながらインパクト点に向けてラケットを振る方法。もう一つは、地面に水平にラケットを引き、そのまま反転させてインパクト点に向けてラケットを振る方法である。
どちらが有利であるかは判断に迷うところであるが、メドべーデフ選手のフォアハンドストロークでは前者の円弧型テークバック方法を採用していた。
進化したストローク技術をアプローチショット(ネットダッシュする時の出球)にも使ってネットプレーを多数成功させていたのもメドべーデフ選手の勝因のひとつであった。
また、サーブでのラケットスピード(振り出しからインパクトまでの時間)を早くして、サーブアンドボレーを成功させていたのも目についた。
あとがき;
最近のティーム選手はテークバックを小さくし、フォロースルーもコンパクトになって、相手の予測(アンティシぺ―ション)を遅らせ、待機位置への戻りが速くなり、ATPツアーでの優勝も増えていた。「ああ、かつての欠点が無くなったな」、と思っていたが、メドべーデフ選手の方が少し勝っていたようである。
また、
贈る言葉(23)〜『ストロークはスクエアスタンスで打つことを心掛けよ』
のあとがきでカレーニュ・ブスタ選手のバックハンドストロークについて簡単に述べている部分も参照されたい。
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2020年12月4日
参考文献;
合気道開祖 植芝盛平伝 植芝吉祥丸著 出版芸術社 平成11年4月 第一刷発行