不法侵入?と談話室 2ページ目
木造の大きな靴箱とダイヤル式の黒電話、何とも懐かしさを漂わせる玄関ではあるが……親父から様子を見て来てくれと、頼まれた俺は正直困惑している。誰もいないと思ってたから尚更だよな。
そして、挨拶をして来たやもりちゃん? は目を輝かせてこちらを見ている。俺が取り出したスマホに興味を示したのか声を掛けて来た。
「ん? その手に持っているのは何なのだ?」
「えっと、携帯電話だけど……」
「おおっ電話とな! また技術が進歩した様だの〜」
んん? 口調に違和感があったが、どうやら「ちゃん」ではなく「さん」の方が良さそうだけど、そうなると話が違ってくる。俺一人でどうこうできる問題じゃねえ。そう結論付け、ロックを外しスマホを操作し始めた。
「なをしておるのだ?」
「ああ、取り敢えず警察に相談しようかと……」
それを聞いたやもりの口から溢れた「え?」と、言う声と共に辺りは静寂に包まれたが、次の瞬間にふわりとやもりの身体が浮いたと思うと、着地と同時に綺麗な土下座を披露された。
「それはご勘弁を! これには止むに止まれぬ事情がありまして、何卒、何卒ーーーー!」
ここまで必死になられたら、話を聞くしかなさそうだ。でも、俺ジャンピング土下座なんて初めて見たよ。
「取り敢えず落ち着いて、事情っての聞かせてもらいますから」
そう告げるとやもりは「本当か! 有難う!」と、顔を上げると俺を招き入れ、談話室へと案内してくれた。
談話室に入ると、そこには畳の上に木製のデーブル、その周りには座布団が置かれおり。家電らしきものは無く、窓から見える風景は一面緑。機械音も無く、自然のBGMと相まって癒されそうな空間だった。
勧められた場所に腰を下ろし、淹れて貰った緑茶を啜ると何と無くほっこりする。
昔の人はこんな感じで過ごしてたんだろうな、タイムスリップした気がしてちょっと嬉しいかもしれん。
「だけど、それはそれ、これはこれで騙されない様に気を引き締めよう」と、自分に言い聞かしたのだった。