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悪魔を家に呼び出した!

導入が下手なもので、長く感じられるかもしれません。


何ぞと……何ぞと一話を……(大懇願)

「二百円……。今考えれば、あんまり安い値段じゃなかったな……」



家に帰ったは菜々は、カバンから一冊の本を取りだした。

用事のついでに立ち寄った古本屋で見つけた、大きくて古い、分厚い本。

その魔導書のような雰囲気に惹かれてしまい、つい買ってしまったわけだ。




「……中身全く読めねぇし。アラビア語か何かか?」



どのページを開いてみても、アルファベットですらないような文字がビッシリ並んでいる。

もともと外側の見た目を好いて買ったものだが、しかしこうなると書いてある内容も気になってしまう。


そこで菜々が一ページ一ページ丁寧に見ていくと──




「なんだこれ……。な、なぞる?」


本の中腹辺りのページの端に、メモ書きのように一言記されていた。


元の所有者が翻訳して、メモを残したのだろうか。

行書体のように書かれてはいるが、確かにそこには日本語で「なぞる」とある。



「このページをなぞればいいのか……?」


試しに、右手の人差し指でなぞってみる。



「これで成功したらいいんだが……」



そして独り呟いた時

その本はまばゆい閃光を放った。




********************



一瞬の閃光。

しかし、その刹那に事は起こった。



「なんだ、これ……」



尻もちをついた菜々の前に一人の少女が立っている。

先程までは居なかった。

まさに、あの古本が眩い光を放つ前までは。



「人間の欲望を感知。このクリミア・べルベッタが召喚されてあげたわ。感謝しなさいな」


「は……」


二本の短いツノを生やした少女は、そう言って自慢げに笑う。


髪は艶のある黒で、肩まで伸びている。

全身をヒラヒラギザギザとした黒い服で覆っており、短いスカートの下はハイソックス。

さらには細長い尻尾まで垂れていた。



「変に手の込んだコスプレかな?」


「違うわ!」


即答だった。



「もっと有難味を持ちなさいよ。私はセントラルデビルなのよ?当たりも当たり、大当たりなんだから」


「せんとらる……でびる?」


「そうよ。人間界での生活と引き換えに、召喚者の願いを一日ひとつ叶えてあげる高位の魔物で──って、え?知らないの?」


「知らない」


即答した。

当然、菜々はそんなことを知るはずがない。



「じゃあまさか、ただの一般人がまぐれで召喚下っていうの……?悪魔を?それもこの私を!?」


「……まぁ、そうなるっぽいな」



勝手に盛り上がられても、その一般人である菜々はワケが分からない。

とりあえずこのクリミアという自称悪魔は自尊心が高いことだけは読み取れた。



「……まぁ、いいわ。ちゃんと居候させてくれるなら、この際そんなことは不問よ。懐の深さが私のいいところなんだから」


「え?居候って……お前を?俺はお前を養わなきゃいけないってのか?」


「そうよ」


「なッ……」



菜々は露骨に顔を顰めた。

なぜならこの男、街でも名のある『金好き人間』だからである。

おかげで、居候させるというワードに反応してしまった。

しかし菜々は決して、ケチな訳では無い。

必要ない物を買うこともあるし、友達には誕生日プレゼントを欠かさない。


ただ単に、お金が好きなのだ。

ある程度のお金を持っていないと落ち着かない。



「人ひとり住まわせるとなれば、一体いくらになるんだ……。俺の貯金十二万……必要な道具であらかた飛ぶ……!」


「ちなみに私、布団も枕も国産地鶏の羽毛製じゃなきゃ嫌よ」


「国産地鶏の羽毛製ってなんだよ!絶対高いだろ!」


「一式八万弱」


「高ぇ!」



こんな高級至高な女、普通であれば浅神菜々は追い返す。

天使だろうと空に投げ返し、悪魔だろうと地面に強制送還させたところだろう。

現に、この時点で菜々は居候を断ることを決めていた。



しかし、次の言葉が運命を変えることになる。




「良いじゃない。私に出来るくらいの願い事なら毎日叶えてあげるのよ?安いものよ、国産地鶏なんて」



「……え?毎日?」


クリミアは召喚された際に説明していたのだが、この男、聞いていない。

クリミアの居候に露骨な嫌悪を醸し出していた菜々は、ここで突然冷静になる。



「そのお願いって……、金を出せ、とかはいけるのか?」


「いいえ、物を新しく生み出すことは出来ないわ」


「けッ」



あてが外れた途端に不機嫌が再来する。

しかしその言葉には続きがあった。


「でも材料があれば別よ。アルミがあれば一円玉を作れるし、銅があれば十円玉を作れるわ」


「え?も、もし純金があれば!?」


「完全純金製のロンドン五輪水泳四百メートル自由形の金メダルをつくってあげるわ」


「……まじか」



なぜ純金からそのチョイスなのかはわからないが、菜々の機嫌がもどり始める。

クリミアの持つ能力に金銭的価値を見出しているのだ。

ここを好機と見たクリミアが、さらに自分を推し売った。



「私は片手で2トンを持ち上げられるし、足の速さは乗用車レベル。歌えば紅白、泳げば五輪。五分あれば国家機密を盗み出せるハッキング技術!」


「歌えば紅白、泳げば五輪……」


「そんな万能の悪魔クリミアちゃんが、今なら(いつでも)快適な暮らしを提供してあげるだけで貰えるのよ!この期を逃していいの!?」


「いいわけねぇえ!!!」



いいようにまくしたてられた菜々が声を上げる。

そしてクリミアに手を差し出した。

変わり身が早い。



「富豪の旦那のペット犬ですら羨むほどの快適な暮らしを提供しよう!」


「英断よ、人間!」


「そのかわり、その万能の力を駆使して大金を稼ぐんだ!それでギブアンドテイクだ」


「よろしい、それでいいわ」



クリミアが差し出された手を取る。

お互いに、これからの未来を見据えた強い握手であった。


「これで契約成立よ。末永くよろしくね」


「ああ」






一見すると、お互いに嬉しい、良い契約だ。

しかし、この時点で浅神菜々は詐欺にあっていた。





実はセントラルデビル、

万能に見えるその力ひとつひとつに欠点が存在したのだ......。

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