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伝説の冒険の旅  作者: ご主人さま
第一章 冒険の始まり
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山腹の村ノンビ①


リオナの一家と別れた夕方、馬車はノンビ村の近隣まで来ていた。


「この丘を越えればノンビだよ」


ここが目的地らしいティイ達に、俺は教えた。


ノンビは小高い山の山腹にあり、以前から山から木を伐りだしていたのだが、今や伐るだけ伐って木を育てていないからか周辺にはそのままの切り株が転がり、一部荒れ野の様になっていた。


「そう。遂に来たのね……」

ティイはいつものふざけた感じが消え、シリアスに言う。


「リックスさんはもう馬車をお降りになられますか? 揉め事に巻き込まれても面倒でしょうし、少し遠回りして通り過ぎた方が無難でしょう?」

アルアはやや突き放す様に言う。


「…………」


「リックス、短い間だったけど楽しかったわ。あなたの旅の成功を祈ってる」

俺のことを気遣い、ティイは言った。


俺は道すがらノンビの事を教えていた。

ノンビはかつては材木などで収益を得ていた普通の農村だったが、近年山賊崩れのチンピラが村を牛耳るようになり、まともな人間は誰も寄り付かなくなったと聞いている。

俺が子供の頃遊びに行った親戚も、別の村に引っ越してしまった。


「本当にティイとアルアはあの村に行くの?」

俺は心配して二人に確認する。


「はい」

姉妹の覚悟は揺るがないらしく、アルアがきっぱりと返答した。


…………。しょうがない。


「………、じゃあ俺も力を貸すよ。護衛は無理でも頭数くらいにはなるだろ?」


俺は彼女らだけを危険な場所に行かせるわけにもいかないので、そう申し出た。

2人は驚いた顔を見せた。

ティイの表情はみるみる嬉しそうな顔になり、


「‼‼ わああん、リックス~~!! 嬉しい!!」


ティイは俺に抱き着いて来る。

俺はまだそんなスキンシップに慣れないので慌てた。


「そんな! いけませんリックスさん! 私たちの目的に巻き込まれる必要はありません!」

だが、ティイとは逆にアルアは、厳しい口調で俺を正そうとする。

そんなアルアにティイは、


「大丈夫よアルア! リックスは私たちで守りましょう!? 一緒にいてくれるだけで助かるもの!」

「姉さん、何を……!??」

「それに何か感じるの。これは運命だって。アルアは感じない??」

「………ティイ姉さん」


何の話か知らないが二人は何か共通する認識があるらしい。彼女らの文化は運命を信じているのだろうか。


「………、リックスさん」


アルアがいつも以上にまじめな顔で見てくる。

「私はまだあなたを私たちの運命に巻き込むつもりはありません」


「う、うん」


「ですが。……力を貸していただけますか?」


「ああ、もちろん! ここまで馬車に乗せてもらったしね!」


俺の返事にアルアは笑顔を浮かべる。何だか初めてこの子の笑顔を見た気がするな。


―――――――――


村の周りは雑な柵で覆われている。前はこんなの無かったのにな。

俺たちはすでに馬車を降りて村に近付いていた。


「馬車は宿に停めましょう」

「うん。でも盗まれないように用心しないと」

アルアの提案に俺は慎重な返事をする。


しかしアルアはそんな心配はしていないようで、

「メヒウスはそんなおまぬけさんではありませんよ。危なくなったら自分で逃げられます」

そう言ってアルアは自分の馬を撫でる。


「そうよねー、メヒウス!」

ティイも彼女らの愛馬に声を掛ける。

ティイはさっきまでの緊張が抜けて、いつもの感じに戻っていた。


彼女らは俺なんかよりずっと長く旅をしているんだ。危険な場面だってあっただろう。

多分俺の方が緊張してるんだろうな。


俺たちは村門を潜った。

村はすっかり荒れていた、表通りの民家は飲み屋や怪しげな商店に変わり、歩いている人々も真っ当な道を歩いていないようなのばかりだった。


そんな人々の好奇の目が俺たちに注がれる。


「やな感じ! じろじろ見ないで欲しいわ!」

ティイが悪態を吐く。


「宿はどこでしょう。せめて馬車を納めないと」


俺たちは宿屋を探した。何軒かありそうだが、宿賃が高めでも少しでもまともなところの方がいいだろう。条件にピッタリとはいかないが適当な宿を見付けて厩の横に馬車を停めた。

馬から荷台を外し、水と飼葉を与えて軽く紐でつないでおく。


「さて、どうする?」

俺は姉妹に聞く。


「私たちは人探しをします」


「そうね! 人探しと言えば……やっぱり酒場よね!!」

そうティイの提案で、俺たちは数多い酒場へと向かった。


――――――――


「レブワー?? 知らないねえそんな奴!!」

「……そうですか。お邪魔いたしました」


3件目の店でも門前払い同然に取り付く島も無かった。


「もう! ちょっとは話を聞いてくれてもいいのに! それから一杯引っかけたい!」

ティイは本音と建て前がよく分からない文句を言う。


2人はレブワーと言う20代後半の女性を探しているらしい。

彼女らの叔母なのだと店の人に話していた。


「俺が聞こうか?」

「いえ、大丈夫ですよ。知っているのに嘘をついていたら、なんとなく分かりますから」

「へえ、すごいな……!」

「アルアはその辺の勘がめちゃくちゃ鋭いのよね! 昔から」

「さあ、次のお店に向かいましょう」


俺たちは次の酒場を探す。


通りから少し離れたところに、大きめの店があったので中に入った。店の中は大勢のならず者でごったがえしている。


まずは店主に聞きに、カウンターへと向かう。


「おい小僧! 女2人連れとは豪勢だねえ! 俺にも一人分けてくれよ!!」


酔っ払いが俺に話しかけてくる。俺は軽くあしらう。


「すみません、お聞きしたいのですが、レブワーと言う女性をご存じないですか? 私たちの叔母で、歳は30歳手前なのですが」


アルアはススっとカウンターまで行き、接客の合間をついて年配の男に話し掛けている。

俺は彼女に遅れない様について行くが、ティイは客のテーブルに並ぶ料理や酒を興味津々に見ている。

「知らないねえ。それより何か飲まないのか? ここは酒場だよ」

「すみません、先を急ぎますので。どうもお邪魔しました」


ここもハズレらしい。俺達は出入り口に戻ろうとした………、


「ちょっと!! 放しなさいよ!! 放さないと、痛い目に合わすわよ!!」


聞きなれた怒り声が聞こえる。ティイが、酔っ払いの一人に絡まれ、腕を掴まれている。


「げっへっへ! 合わせてほしいねえ! 俺の部屋でよお!」

「! 良い覚悟ねえ!!」

ティイは腰に携えた鞭に手を掛ける。


ああ、ここまで問題を起こさず来れたのに。取り合えず仲裁に行くか。

と、その時、


「ぐえええ!!」

ティイを掴んでいた酔っ払いが、そう叫んで吹っ飛んだ。


突如その酔っ払いを襲った相手は、柄に入れたままの剣でティイを掴んだ手を打ってからそいつを殴り飛ばしたらしい。

それは、軽装の鎧を着込んだ、一人の女の戦士だった。


「まったく……。見るに堪えんな、ここの連中は」

その女戦士はそう吐き捨てた。


「て、てめえ!!」

酔っ払いの仲間がその女を威嚇する。

「ゴイルナ様のお抱えだからって調子に乗るなよ! 流れの傭兵風情があ!!」


「知らんな。無法者なら自分の身くらい自分で守れるようになってから吠えろ」


よく分からないがこの女戦士は助けてくれたのか、単に自分がイラついたのか。


酔っ払いから解放されたティイがその女性に近寄って軽い調子で言う。

「あんた。私一人でも大丈夫だったからね! でも一応お礼は言っておくわ、ありがと!」


「ふっ」

女戦士は強がるなとばかりに軽く笑った。


「お前らあ! しつけが必要なようだなあ!!」


チンピラや女のおこぼれを貰おうという輩が群れを成して俺たちを囲みだした。

その手には凶器も握られている。


もう言葉ではどうにもなりそうにないな。


俺はティイらの側に回って棍棒を構えた。


「ぷっ!」

と、女戦士が俺を見て笑う。

「お前、それで戦うのか?」


「え? おかしいか?」


「いや、そうじゃないが、お前の体格だと余り合っていると言えないな。……、よし、これを貸してやる。そいつは私によこせ」


「え?」


彼女は俺に自身の剣を渡した。

そして代わりに俺の棍棒を無理やり取る。


「剣を振るのに力はいらん。刃の重さを攻撃に変えろ」

女はそう言う。


い、いや、俺こんなもの使ったことないのに、いきなりそんな事出来るわけない!


「ガキは殺せええー!!」


だが悩む間もなく、早速俺は標的にされているようだ! 


こ、こうなりゃ仕方ない! やってやる!!




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