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伝説の冒険の旅  作者: ご主人さま
第一章 冒険の始まり
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水の町ロドイ⑨



衛士の群れに俺たちは突っ込んだ!


まさか突っ込んで来ると思わなかったのか兵士は一瞬怯み、その隙を逃さず防壁が薄くなった場所に俺たちは一丸となって突撃する!


よし、仲間はみんな付いて来ているな、ティイもいる。


そして勢いのまま目的地へと向かって走って行く。


後方からラローナのいきり立つ声が聞こえる。

「早く! やつらを追いなさいな!! 殺してはいけなくてよ、生かして捕まえるのですわよ!!」


もう捕まるものか!


「レックス! ボロッゾって悪者のところに向かうのね!?」


俺に並んだティイが聞く。


「うん! これだけいれば、突破くらいは出来るはずだ!」


あとすべき事はボロッゾに証拠を突き付ける事だ。


本来の計画では外の住人も引き込んだりして、もっと穏便に行きたかったところだが、こうなったら強行する方が早い! 

……、まあテンションが上がってる事は否めないけど。

仲間の数も心許ないけど、勢いでカバーしよう!


時折り警備兵が道を塞いだが、押し退け先を進むくらいは訳なかった。

平穏に慣れ切っている町の住人達は突然の騒動に驚き身を竦ませていた。


ティイとユリアは身軽で俺よりも動きが速い、ユリアの連れの2人も鍛えてはいるらしく入り組んだ町並みも苦にせず付いて来た。


少しすると町を調べつくしたエキが先導するようになり、最短でボロッゾの屋敷へと急ぐ。

やがて昨日も来た街路樹の通りに来て、屋敷も目前になった。

でも今日はこのまま、正面から屋敷に乗り込むのだ!


連絡を受けたのか、屋敷の前には何人もの衛兵が待ち構えている姿が見えた。


「ここは拙者に任せて貰おうか!」

と、ヨダと言う男が前に出る。


彼は大きな戦斧を得物にしているようで、道中でも兵士を退けるのに一役買ってくれた。


「うおおおお!! そこを退けええ!!」

彼は走る勢いのまま、兵士と扉へと突っ込んだ。そして斧を振り落とす!


バガアアアン!!

何人かの兵士を巻き込んで、一気に重厚な扉を押し開けた! 


残る周りの兵士を無視して俺たちは屋敷の中に雪崩れ込んだ。


ボロッゾはどこにいる!?


「二階に向かおう! きっとそこにいるはずよ!」

ユリアが言う、俺たちはそれに迷いなく従った。今度はユリアを先頭に階段の場所へと向かう。


だが、その階段の踊り場には一人の男が立っていた。

見た事のある男だった。


「やあ、お歴々。ボロッゾ氏はこちらですぞ……。どうぞお進みなさい。く、くく……」


屋敷で俺たちを捕まえた、ディールドとか言う用心棒の男だ。


男はそう言うと不敵な笑みを浮かべ誘う様に階段を上っていく。

と、俺たちが来た方向から、勢いよく扉の閉まる音がした。


正面扉か!?

俺たちを閉じ込める気か!? でも外にいる兵士たちが屋敷の中に入って来た様子は無かった…。


罠だろうか……、


「行きましょう!」

だが、ユリアは少しも怯む様子を見せず、躊躇無く階段に足を掛けた。

よし、このまま進もう!


ディールドとか言うあの男は、俺たちが全力で駆け上がっているにも関わらず、追いつけることも無く角を曲がる度に先へ先へと進んでいる。


そして男はこちらをちらと見て、昨日扉が開いたままだったあの大広間へと入って行った。


俺たちはその部屋の扉を潜った。


「ひいいい!!」


その瞬間誰かの叫ぶ声が響く、それは部屋の奥のカーテンにしがみ付くボロッゾと言う小男の上げた悲鳴だった。


「は、早く、早くそいつらを始末するのじゃわい! ディールド!!」


ボロッゾは声を裏返らせながらディールドと言う男に命じる。

部屋には兵士たちの姿は無かった。

居るのは3人の人間だけで、ボロッゾとディールド、そしてもう一人、後ろに隠れる様にあの女性が居た。


「!!? レブワー、叔母さん……!?」


ティイが彼女を見てすぐに気付き、小さく呟いた。


「レブワー叔母さん!!」

そして大きな声ですがる様にレブワーと言う女性に声を掛ける。


だがレブワーと言う女性の様子は明らかにおかしかった。

憔悴し切って、立っているのもやっとと言う感じだ。

だが不思議な事に、そんな彼女から何故か近付くのも危険な雰囲気が感じられた。


「おや、レブワー殿のお身内か? これはこれは神の守り里のお方か、くくく」


「……はあ……はあ……、」


レブワーと言う人は粗い息づかいだけを返す。


ティイはなおも彼女に語り掛けた。

「レブワー叔母さん、ペンシアに帰りましょう!!? きっと大叔父上たちだって許してくれるわ? 私たちと一緒に帰りましょう!?」


「はあ、はあ……。ティ…ティイ、さま?」


「そうだよ!? ティイよ!? アルアも来ているのよ!?」


「はあ、はあ………。アルア…、……ティイ、わた、しの……。……ぁぁぁ、ぁぁああああああ!!」


突然彼女は体を痙攣させるように苦しみ、頭を抱え激しくのけ反らせた。

その胸元がまた激しく光っている。


「レブワー叔母さん!!」


ティイは彼女に駆け寄ろうとした。

しかし、それをディールドが殺気で牽制する。

ティイは素早く察知し足を止めた。


「おっとぉ! ここを感動の再会の為に用意した舞台だと勘違いされたのかな?」


奴は危険な気配を発散しつつ、剣を鞘から抜き始めた。


その胸元がレブワーと同じ様に怪しい光を放つ!


「それは困るなあ。ここはね……、神への供物を捧げるために用意した、神聖なる場所なのだよおお……!!」


ディールドは自分に陶酔している様に訳の分からない事を言っている。


「さあ! 我らが神ゲムオドに、闘争と血を捧げよう!!!」


ディールドは俺たちに襲い掛かって来た!


俺たちは標的を絞られないよう素早く左右に拡散した!


ガキン!


エキと言う男が同じく剣で、ディールドの刃を受け止める。そこにヨダが戦斧で襲い掛かる、

「うおおお!!」

しかしその猛撃をするりと交わし、切っ先をヨダめがけて放つ、それをヨダは間一髪で斧の柄で防ぐ。

「くくく!!」

ディールドは楽しみさえ感じるように、変幻自在に刃を滑らし、エキとヨダ両人を攻め立てた。

「ああああ!!」

ユリアが空いているディールドの背中を攻撃しようと踏み込んだ。だがそれもすでに察知していたように男は避け、あわやエキの剣と鉢合わせになりそうになった。

避けたディールドは一旦彼らから間を取る。そこに俺は切り込むがやはりつたない俺の剣は簡単に見切られ、軽く剣先であしらわれる。

「エキ、奴の動きを止めろ! そこに拙者が仕掛ける!」

「はい! ヨダ殿!」

2人は示し合わせ、エキが攻撃に入る。ディールドは俺の剣を絡め手で弾くと、エキの攻撃を受け始めた。

「ユリアーナ様は、上を!」

「え? うん、分かった!」

ヨダはユリアにも何か指示している。俺はこの場でどう動けばいいのだろう!?

エキは戦法を変え猛烈に打ち込む。それにはさすがにディールドでも一時受けに回らざるを得なかった。

「うおおおお!! 秘技、千本刺し!!」

何か叫んでエキはさらに腰を落とし、激しく早く剣を刺し込む! 敵は下がるも避けるも出来ずその場で剣で受けきるしかなかった。そこに、ヨダの必殺の一撃が襲い掛かった!

「覚悟おお!!」

振り下ろされる戦斧。決まったかに見えた。だが、

「ふんぬ!? う、ぐぬうおおおおお!!??」

ヨダの斧を振り下ろす腕は空中で止まっていた! そして、何かに締め付けられるようにその腕ごと彼の体が細く絞られていく!

この魔法は!! 俺は彼女を見た、するとレブワーはもう既に意識が無いようにあらぬ方に首は項垂れているのに、体だけが自らの意思で動いている様に魔法を行使していた、その胸はまた怪しく光っていた。

「く、くく…!」

少し焦りを見せながらもディールドは優勢に笑みを浮かべる。そして隙だらけのヨダに素早く一撃を入れた。

「ぐふう!!」

「ヨダさん!!」

エキが心配して動きを止めてしまう。だが、こちらにはもう一手があった!

「でやああああ!!」

ヨダの陰からユリアが飛び出し、ディールドに渾身の蹴りをぶつけようとした。

「くく! 遅いよ!!」

エキの手が止まりディールドはすでに動きを取り戻していた。ディールドはユリアの動きを素早く見切り彼女の足を両手で掴む4「きゃあ!!」

「ふぅん!!!」

ディールドは力任せにユリアをぶん回し、エキに投げつけた、

「ユリ…、ぐふぅ!!!」

やつは腕力も尋常では無いらしく、ユリアをぶつけられたエキは共に激しくぶっ飛び、ダメージを受けた。俺はユリアが仕留め損ねた時に4番目の矢になろうと思っていたが、ディールドの意識はすでに俺を捉えているのが感じられた。し、仕掛けられない……!!

「く、くくく……、くーはっはは!!! なんだ、フィオルディアの手練れがこれだけ揃って私には手も足も出ないか!!? くははは!! それとも私が強くなり過ぎたのか!!? かーはっはっはああ!!」

ディールドは悦に入り、ダメージを受けて倒れるユリアらを見下ろし高笑いをした。ほとんど一人相手に、こ、ここまで追いつめられるなんて……。俺は自分の不甲斐なさと共に、奴の強さに慄いた。

その時、

「!!?」

何かが突然、ディールドの顔目掛けて襲い掛かった! 完全に不意を突かれ、男はもろにその攻撃を受けた!

「なっ!? ……うぅ、うぎゃあああああ!!??」

ディールドが恐怖にもがく! 彼の頭は激しく燃えていた、俺は振り返ってみる、ティイが炎の魔法をやつに放ったのだ! ティイはなおディールドを見据えながらも激しく肩で息をしていた。

「ティイ!」

俺は心配半分賞賛半分で彼女に声を掛ける。でもすでにティイは気を抜いていなかった。

「リックス! とどめ!!」

俺はその言葉にすぐ気を切り替えた。そして、

「てやああああ!!」

完全に漁夫の利だが、俺はディールドへと斬り込み、やつの隙だらけの胴へと全力の一撃を入れた!!



やったぞ! 倒した!! レブワーもさすがにもう動きそうも無い、すっかり床に倒れ込んでいる。

「ぐ、うぐぐぐぅ……! おまえらあああ……!!!」

やがて頭の火を消し、やつは恨みがましい目で俺たちを見る。その顔はやけどで半分がただれ毛髪も殆ど燃え尽きていた。

あの傷でまだあの殺気を放てるだけでも驚異的だ。だがユリアとエキも復帰しつつあるし、さすがにこれで抵抗出来るわけがない。

「くそ、くっそおお!! この私が、こんな餓鬼どもに傷を負わされるとはあ!!」

ディールドは激しく感情を発露させる。そして、キッと倒れているレブワーを睨む。

「貴様も貴様だ! 少しは役に立つかと連れて来れば、一人を一瞬足止めするだけとはっ!! まったく、私以外に優秀な奴は誰一人おらん!!!」

やつは自分の油断は棚に上げ、レブワーを責めた。

「貴様など、神の印を持つ資格は無い!! 貴様の印は私が貰い受ける!!」

そう言って、ディールドは寝ているレブワーへと剣先を振った。次の瞬間、レブワーの胸元の服が細切れに飛び散り、素肌が露わになった。

「な、何を!!?」

俺は奴がレブワーを人質にする気かと思ってはっとした。だがそうでは無かった。

彼女の胸には、何やらおかしなものが付いていた。それは手のひら程度の大きさの薄い板の様だが、それがまるで肌と一体化している様に、直接融合している様に見えた。

ディールドはレブワーの状態など意に介さず、乱暴にその板へと手を掛け、力任せに引きちぎりにかかった。

「ああああああ!!!」

レブワーは気を失ったままだが、その口からは悲鳴が漏れる。板が引きちぎられていく様子は、まるで神経を無理やり引っこ抜いているような悲痛さだった。

「おばさああん!!!」

ティイが悲し気に叫ぶ。だが彼女も魔法で体力を消耗し、助けにいける感じでは無かった。

板がレブワーから完全に離れ、彼女は床に物の様に倒れ込む。

ディールドは乱暴に自分の胸元の服を引きちぎった。するとそこにはレブワー同様に、同じような板が体と一体化していた。

「更なる、神の加護を……。いや!! 私自身が、神となるのだ!!!」

やつは、レブワーから引きちぎった板を、自身の損傷しただれた頭部へと、引っ付けた。すると、板が部屋を覆うほどの光を発し、それは瞬く間に皮膚と一体化していった!

「く、くくく……!!感じる感じるぞ、完璧なる力、私は今、神になったのだああ!!!!」

奴が叫ぶと、奴の胸と頭部の板が、禍々しい光を放つ! すると次の瞬間、ディールドの体が異様な変容を始めた。筋骨が異様な発達をはじめ、肌の色は暗い黄緑に染まっていく。そして、各部の骨が隆起し肌を突き破って角やとげの様に体を覆った。

身長も普通の人間のゆうに数倍に達していた。その姿はすでに人間の物では無かった。

『『ぐおおおお!!!』』

その化け物は興奮を抑えられないのかいきなり大きく吠えた。その声は俺たちの体の芯まで響くような振動を生む。

これに、立ち向かえる、のか?

俺は戦慄を覚える。こんなの、こっちの世界でもおとぎ話に出るような怪物だ。村一つ壊滅させるような怪物、それに俺たちだけで反抗出来るのか。

『さあ、神の裁きを始めようか。ぐっぐっぐ!!』

低く、くぐもった声でその怪物になったディールドは言った。

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