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伝説の冒険の旅  作者: ご主人さま
第一章 冒険の始まり
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水の町ロドイ⑧



「やっぱり、リックス!?」


「ティイ! どうしてこんなとこにいるの!?」


俺たちはお互いに驚きながら声を掛ける。


「それはこっちのセリフだよ! あはは! でも見つかって良かった!!」


ティイは驚いたのと嬉しい思いとで、可笑しくなったのか笑いながら言った。

そしてティイの後からもう一人姿を見せる、ユリアの連れの男の一人だ。


「ユリアーナさま!」


「ヨダ!」

ユリアと男も再会を喜ぶ。


「おお、クイント神よ感謝いたします! どうぞご無事で!!」


男はこの世界で広く信仰されている神にユリアが無事だったことを感謝した。

本当に心配していたんだろうな。


しかしこんな場所で騒いでは、誰かに見られて不審がられても困る。

ティイは俺たちを別の場所に誘導し、すぐに移動を始めた。



――――――――――



ティイらに案内されたのは、この辺の民家の一つだった。

比較的丘に建つ見晴らしの良い家だ。


「今ここを隠れ家にさせて貰ってるの! と言っても勝手に使わせて貰っているだけなんだけどね」

ティイが俺たちに教える。


隠れ家?

彼女たちは昨日ロドイに潜入した後、俺たちを見付けられなくてここに隠れたのかな。


家の中は外観同様にそんなにボロくも無く、多少埃がたまっているぐらいで今からでも住めそうな状態だった。


後で聞いたがここら辺の住宅の本来の住人は、市民章を買う金が用意出来ず町を追い出された人々、つまり外壁の集落の人たちらしい。

俺たちが地下水路から出て来た出入り口も、元住人が地下水路を使う水場として活用している物の一つだという。

もっと便利に階段で水路に降りられる場所もあるそうだ。


そして俺たちが家の中に進むと、食堂らしい場所でエキと言う男も待っていた。


「おお! ユリアーナさまを見付けたのですね!!」


彼もユリアを見て嬉しそうに言う。


詳しく経緯を聞くと、彼らはロープで壁の上に登ったものの俺たちと連絡を取ることが出来ず、暫く市中に身を潜めていたと言う。

だが、領主の家に侵入した賊、つまり俺たちが捕まったと言う噂を聞いた。

すぐに救出に行こうとするが、捕まったのは1人だけで残りはまだ逃亡中だと言う。

噂の感じで、掴まったのはリディみたいだと分かったそうだが確信は持てず、彼女らは人気が少ない場所を探してこの場所に来て、隠れ家を確保し、逃亡した俺たちを探すことにしたらしい。


「みんなを探しに中心街に行って、収穫が無くて一度ここに戻ろうとしてたら、女の子の叫ぶ声が聞こえて、こっそり近付いて聞き耳を立てたら聞き覚えのある声がしてびっくりしたわ! あはは! ほんとにおかしかった!」

ティイがまだ思い出して笑っている。


「アルアとケットは? まだ俺たちを探しているのか?」


彼女らの姿が見えないので、俺は聞いた。

それにティイは笑いを止めて困ったように答えた。


「ううん……。ケットは掴まった仲間を救出するって聞かなくて、昨日の夜から罪人の収監所を探りに行ってるの。アルアは無茶しないようにいざとなったら自分が止めるって言って一緒に行ったわ。それからまだ一度も戻ってなくて…何もないといいんだけど……」


そうなのか。心配を掛けてるな。


「ちょっと!?」


部屋の隅で手足を縛って座らせているラローナが俺たちを呼ぶ。


「あなた達の話はどうでも良いのですけど、わたくし着換えくらいさせて頂けないのかしら!?? それに、お湯で体を拭くくらいしたいのですけれど!」


嫌味たらしく彼女は言う。


「そうだね、女の子だもんね。じゃあ私、あの子の着換えさせてくるね!」


ティイが世話を申し出てくれる。そして娘を連れて彼女は別室に行った。


そして我慢し切れなくなったのかユリアがみんなに言う。

「私たちもリディを救出に行きましょう!」


俺も同じ気持ちだ。

早く助けてあげたい!


だが、それにヨダと言う男が反論する。


「それでは今回の作戦を立てた意味がありま……なかろう。それよりもボロッゾの責を問い、こちらに義がある事を示して出獄させる方が幾分も早いのではないか?」


「……そ、そうね。それが近道かもね」

ユリアは焦る気持ちを飲み込んで同意する。


「証拠の品は手に入ったのか?」


エキと言う男が俺に聞く。

証拠、市庁舎とボロッゾの館で手に入れた書類か……。


「証拠は、一応見付けはしたんだけど、……リディが持ってるんだ……」


「なんと!? うむむ……、ではリディ殿を助けるのが先か。いや、収監された以上すでに敵の手に戻っているであろう……」

「困りましたね……」


結局元の木阿弥か。むしろリディが捕まってる分だけマイナスだな。はあ俺がもっとしっかりしていれば……。


俺たちは頭を抱えた。


そこに、ティイが怒りながら戻って来た。

「もう! あの子一言多くない!?」


彼女もラローナの言動に辟易したようだ。わかるわかる。


「彼女は?」

俺が聞く。


「着替えさせてお湯が沸くまで待たせてるわ。それでこれ、リックスの服でしょ? 洗いたいけど、他に替えも無いし……どうする?」


彼女は俺の服を手に持っていた。


「昨日水場でちょっと濯いだから着るよ。ありがと」


俺は受け取って袖を通す。

ティイは複雑そうな顔をして、またラローナの面倒を見に戻って行った。


その間にもユリア達は今後の行動を話し合っている。


「ふむう、どうしたものか……」


「こうなれば、正面突破よ!!」


「そ、それはいけま……いけないぞ、、ユリア!」


なかなかいい案は出そうに無かった。どうすりゃいいのか……。


ん??


俺はふと自分の服に違和感を感じた。あれ? こんなところに何か入っている。入れた覚え無いけどな……。


上着のポケットに何か身に覚えの無い物が入っているみたいだ。おれは手を入れてそれを取り出した。


「………。」


俺はそれを見て一瞬思考を停止させる。


それは……リディの小物入れだった。


え? なんでこれがここに? い、いつの間に? 

俺は昨日のことを思い出した。

ボロッゾの家で証拠を手に入れて、屋敷から逃げようとした時にレブワーに見つかって、それで……、


あ! あのリディが俺を抱き締めた時か!? 初めからいざと言う時は自分が囮になる気だったんだな……、 

リディ、あの人は……!!


俺は急いで小物入れの口を開けて中を見た。

すると、殆ど被害の少ない状態で、あの証拠の書類が残っていた!! この小物入れ、防水になってるのか!!?


「みんな!! ある! ここに証拠あるよ!!」


俺は思わず叫んだ。


「え!!?」


「なんと!?」


やった!! これで、町を、リディを救えるぞ!! 俺は興奮を覚えた。リディ、こんな事態を想定して俺にも黙って小物入れを俺の上着に忍び込ませて逃がしたってのか!? なんて人だ!!


俺もあの時は上着の違和感どころじゃなかった。

緊急的に上着を貸して貰ったラローナも、まさか自分が親の悪事の証拠をずっと握ってるとは思いもしなかったのだろう。


だがまだ問題は続いた。


「リックス! みんな! ご、ごめん!!」


ラローナの世話に戻っていたティイが、慌てて部屋に飛び込んで来る。


「あ、あの子、目を離した隙に逃げちゃった!!」


「え!!?」


「なんと!?」


みんな一斉にティイを見る。


逃げた? どこまで行っただろう。土地勘で言えば彼女の方があるだろうが……。


「まず衛兵の耳に届くのも時間の問題だろう……!」

ヨダが神妙に言う。

「ここを出よう!」


「そうね! でも、もうやることは一つしか無いでしょう!?」


ユリアが一同の顔を見る。そうだ、後やることは一つだ!


「え? な、何? みんな、どうするの!?」


世話を任せて話の流れを知らないティイは訳が分からずみんなを見る。


だが今はのんびりしてられない! 

素早く用意をまとめ、俺たちはこの家を出る準備をする。


俺は窓辺に寄って外を見る。

そこには、すでに無人街の向こうからやって来る衛士の群れが見えた。


もうここからじゃ逃げようは無いな……。

同じ様に様子を知った一同の顔を窺う。みんな覚悟を決めたようだ。


そしてあっという間に数十人の兵士たちがこの家の周りを囲んでいった。


俺たちは家の玄関から堂々と外に出る。


衛士達のあいだから、ラローナの姿が見えた。

何か毛布かマントみたいなものを羽織っているが、下はまた裸みたいだ。きっと体を洗っている時に逃げたのだろう。

裸で人前に出るのが癖になってるのか?


ラローナは自分の身の安全を確信したのか衛士たちの前に出て、俺たちに言う。

「おーほっほっほ!! 観念なさい、悪党ども!」


ラローナは自信を取り戻し、高笑いをした。


「まあ、わたくしもあの洞窟の中じゃあ、たっしょ~~~はあなた達のお世話になったから? そうね、私の下僕になると約束すれば極刑は許してあげなくはなくてよ!? おっほっほ、なんて優しいの、わたくし様ってば!!」


「うっわあ、ほんとに性格最悪だな、あいつ」

「あはは!」


俺は改めてラローナの本性を見てドン引きし、ユリアは笑った。


「ごめんね、私のせいで……」

ティイが改めて謝る。


そんなティイをユリアが励ます様に茶化して言う。


「あなたのせいじゃないわ! 悪いのはあの子、後でお仕置きしないとね!」


「うん、ありがとう」

ティイは笑顔で礼を言う。

「……でもこの状況、どうする? 絶体絶命って感じなんだけど」


衛士たちは俺たちの反応を見てジリジリ距離を詰めて来る。

突撃のタイミングはすぐ来そうだ。


しかし、もう俺たちのやることは決まっている!


「ティイ、俺たちの取る手段は……」


俺はユリアを見る。

彼女は楽しそうに笑った。


「あれ? あなた達……?」


俺は叫んだ。


「正面突破だーー!!」



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