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伝説の冒険の旅  作者: ご主人さま
第一章 冒険の始まり
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水の町ロドイ③


そしてあっという間に翌日。


「………、本当にお前がエキ=ロイローダーか?」


「あ、ああ。もちろんだ」


答えながら俺は心臓をバクバクさせていた。


朝早く門が開いてすぐ、俺はロドイの門兵にエキって人が使っていたらしい臨時市民章を見せていた。

一応変装はしているが、こんなのでばれないのか……?


「ふむ……」


門兵は怪しげに市民章と俺を何度も見る。


ぜ、絶対無理だ。


「……まあいい。よし、通れ」


「どうも…」

何とかなった。


そして俺はロドイに入った!


さすがに男の名前の身分証を女性が使う訳にもいかないので、俺はエキの作った市民章でロドイに入り、リディとユリアって子は後から新しく臨時市民章を作って町に入ることになっていた。


俺は怪しまれないように立ち止まらずに町へと進み入る。


まだ午前5時過ぎ、道行く人はまばらだが、犬の散歩などもしていて皆優雅だ。


煉瓦作りを基調にした町は清掃も行き届き、忙しく朝の用意をする商店などは見えない。

一体この町の人々がどんな風に生活しているのか見当が付かない。


やがて広場らしき場所に出た。

町の中心なのか円形に道が作られ、その真ん中には、なんと噴水があった。


ここで生きてきてこんな物を見たのは初めてだ。

水瓶を型取った噴水口からはこんこんと水が潤沢に溢れ出ている、きっと近くの湖から水を引いているんだな。


悪者が町を仕切らなければとてもいい町なのだろう。


「リックスくん!」


噴水を眺めていた俺を後ろから誰かが呼ぶ。

振り向くとリディとユリアという子がこちらに向かって来ていた。


彼女らも少し変装して、上品なドレスに身を包んでいる。


「お待たせ! ……まったく、あの連中、女だけだからって変な目で見て、すっごく不快だったわ!」

リディは怒っている。


「でもあなたが少し色かを使うと彼らはイチコロだったわね! 私も是非その技を覚えたいわ!」

ユリアって子は言ってる意味が分かってるのかどうなのか、そうリディを褒める。

「そ、それはあなたは覚えない方が良いと思いますよ。ほほ」


とにかく、作戦を開始だ。まずは……。


俺たちは昨夜、男の一人を外に見張りに立たせ、宿で遅くまで作戦を練った。

とは言ってもケットなどは早々に寝てしまい、心配性と言うか頭脳労働が得意な人間で考える。

ユリアと言う子もそんなに深く考える性格ではないらしく、大まかに決まると後はその場でなんとかなると言って眠ってしまっていた。


彼女の連れの男は今日の事を心配し頭を抱え、リディとアルアが安心させるために作戦の精度を上げるのに付き合ってたな。

俺も不安でなかなか眠れなかったので一緒に起きてたけど。

おかげで疲れは抜けてないが愚痴を言っても仕方ない。


「それじゃあ市庁舎に向かいましょう、この時間ならまだ人はいないでしょう」

俺たちは市庁舎に向かった。


彼女たちの立てた作戦では、まず証拠集めをする事になっていた。

その為に行政を取り仕切る市庁舎と、そしてボラッゾという男の屋敷に忍び込むことになっている。

別に現状を見れば誰が悪いかは明らかだと思うのだけど、言い逃れさせないためには必要らしい。


それから証人を見付け、外の連中と合流してボラッゾに罪を突き付ける手筈となっている。

ボラッゾはもちろん身辺を警護しているだろうからさすがに今の3人だけではどうにもならないだろうから。

噂では強い用心棒が居るとかと言っていたし……。


あらかじめ潜入したエキという人が、ロドイの詳細な地図を作ってくれていた。

まさか自分が実行時に加わっていないとは思っていなかったみたいだけど。


少しずつにぎわい始める町を抜けて、俺たちは市庁舎へと向かった。


地図には、市庁舎内部への最適であろう侵入口も書いてあった。

もちろん不正な経路である。


実際に3階建ての市庁舎に着いてその場所を確かめる。

町の入り口の警備に比べ、市庁舎の周りには1人2人衛兵がいる程度だった。


人目が切れるのを窺って建物の敷地の横手に周る、侵入はそこの2階の窓から行えると地図には書いているらしい。

確かに、植木で陰になっているし人が来なさそうな場所だ。


あ、あれがその窓かな?

空気を入れる為か、窓は開け放たれていた。窓の向こうに人は見えないが、中に入っても見つからないのだろうか。


「よし……! それじゃあ、行ってくるね!」

ユリアという子が、張り切って言う。

と、リディが慌てて止める。


「い、いえいえ!? わたしが行くわ!? あなたはここで見張っていて!?」


「えええー? わたしこう見えてとっても身軽なのよ? あなたにも見劣りしないわ!」


「そ、そういう問題じゃない! いいから、ここは任せて!」


「むぅー、しょうがないわね…。次は絶対私が行きますからね!?」


ユリアはふくれている。

そして、リディは俺の肩も使って、軽々と2階の窓に入っていった。


俺と少女はしばらくその場で見張りがてら待つ。

俺たちが怪しまれても何なので、自然にしなくちゃいけないな。立ち話でもしようか。

まだふくれてないかな。


「君、何歳?」

俺は聞く。


「わたし? 私は15歳よ!?」

彼女は明るく答える。良かった、引きずってないようだ。


「そうか。俺も15歳だよ。同じだ」

「そうなんだ! ふふ、奇遇ね!」


彼女は愛想良く教えてくれる。

そして彼女からも質問してくる。


「あなたはずっとあの方たちと旅をしているの?」


「ううん。俺はこの前生まれ育った村から旅立ったばっかりだ。なんでもそうする掟らしくて」


「そうなの、いいわね、面白そう!」


彼女は興味を惹かれたらしく目を輝かせる。


「君も旅してるじゃないの?」


「う~ん、そうかな。でも出来ればこの国の外にも行ってみたいんだけど、それは無理みたい……」


彼女は少しトーンダウンして言う。


何か事情があるのかな。まあ事情がない人の方が少ないよな。


そしてまたすぐに気分を取り直して、彼女は明るい口調で俺に言って来た。


「ねえ、同い年だし、友達になってくれないかしら? 私同い年の知り合い、少ないの」


「ああ、もちろんいいよ。よろしく、えっと……ユリア」


「ええ、よろしくね! ………名前なんだっけ?」


「リ、リックスだよ」


「ああ、ごめんなさい! よろしくね! リックス! ふふ、もう覚えたわ!」


彼女はそう言って笑顔を見せた。


人当たりも良いし、この子なら簡単に友達作れるよな。

きっと本人が言うほど友達が居ないわけじゃないだろう。


それから少し打ち解けて、俺たちは周りを警戒しつつも他愛無い会話をしていた。

そして、10分も経たずに、音も無くリディが戻って来た。

2階から飛び降りるくらいなんでもないらしい。


「これなら証拠になるはずよ」


リディが小物バッグに入れた書類を少し見せてくれる。


「さ、次に移りましょう! あ、その前に、用意しておかないと、」

あ、そういう手筈だったな。


俺たちはまた移動を開始した。


向かったのは壁の外に集落が密着している、その壁面だった。


リディとユリアはドレスのすそを捲り、中に縫い留めておいたロープを取り出した。

あまり太くないがしっかりした縄だ。


このロープを繋いで、壁の上から壁外に垂らし、残りの味方を中に入れる計画だ。


ロープを垂らす場所は、あのボラッゾの娘達が度の過ぎたいたずらをしていた場所にした。

あそこなら子供でも登れる場所みたいだし案外衛士も油断してるかも知れない。


城壁の上に登る階段は見つかり、案の定警備はおらず、簡単な門がある程度だった。


「行ってくるわね」

リディが門を乗り越え、一人でロープを垂らしに行く。

うん、俺は居なくても全く問題無いな。


数分後、すぐにリディは帰って来る。

「ケットらと合図は出来たわ。そんなにすぐには登れそうに無いから、私たちは先にボロッゾの屋敷に向かいましょう!」


リディが言う。


でも、ケットと男2人は問題無く登れそうだが、アルアやティイは登れるかなあ。

登れる人が先に登って手伝えば行けるか……。


おっと、いけない。俺は自分の役割に集中しよう。


そして俺たちは不審に思われないようにまた町に紛れ、しかし急いでボロッゾの屋敷に向かった。


地図によれば高台に一際大きく広い家があるそうだ。



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